ロシア語講座:初級

И04:長語尾と短語尾の使い分け

長語尾と短語尾を使い分ける形容詞は、どのような基準で使い分けるか、によって次のように分類できるだろう。

  1. 意味に応じて使い分けるもの
  2. 文脈に応じて使い分けるもの

1. 意味に応じて使い分けるもの

 これらの形容詞は、意味さえ覚えておけばいい。

 日常会話的には、よく使われるものの、言い回しのバリエーションはさほど多くはないだろう。

  1. Я́ жи́в и здоро́в. 「ぼくは元気です・息災です・ぴんぴんしています」(手紙などの定型句)
  2. Бу́дь здоро́в. 「お大事に」(くしゃみをした人には必ず言おう)
  3. Бори́с, ты́ не пра́в. 「ボリース、きみは間違ってる」(ソ連共産党政治局員・書記エゴール・リガチョーフ)
    • 本来、«Ты не прав.» だけで「きみは間違っている」という、何の変哲もない文である。ところが1988年にリガチョーフがエリツィンに放ったこのセリフがなぜか独り歩きし、多くの人がとりあえず文頭に «Борис» を加えてこの文を発するようになった。相手がミハイールだろうがイヴァンだろうが、果ては女性だろうが関係なく、«Борис, ты не прав.» と言う。もっとも、さすがにいまでは日常会話での使用は廃れてきた。
  4. Э́то ме́сто свобо́дно? 「この場所・席は空いてますか?」
  5. Ты́ свобо́дна сего́дня ве́чером? 「今夜時間ある?」

#186 長語尾と短語尾で意味の違う形容詞がある。通常は辞書でも区別されている。

2. 文脈に応じて使い分けるもの

 «意味に応じて使い分ける形容詞» に比べて、«文脈に応じて使い分ける形容詞» はいささか使い分けが難しい。
 とりあえず乱暴に一言で言うと、

「誰々にとっては〜すぎる」という意味であれば短語尾

と理解しておこう。

 この場合、「誰々にとっては」は与格で示す。

боти́нок(男性名詞)編上げ靴 ※単数形だと片方。
   ※日本人が普通「シューズ」とか「革靴」でイメージするもの。
кольцо́(中性名詞)輪、指輪
сапо́г(男性名詞)長靴・ブーツ ※単数形だと片方。
гру́дь(女性名詞)胸(内臓的な意味でも外見的な意味でも)・乳房
брю́ки(複数名詞)ズボン

このように、買い物の時には短語尾が大活躍する。
 これで、

  1. Э́тот костю́м ма́лый.
  2. Э́тот костю́м ма́л.

の違いがおわかりだろう。
 単純に言えば、1. では長語尾が使われているから、「誰々にとって小さすぎる」というニュアンスがない。だから、このスーツは「そもそも小さい」、「絶対的に小さい」、「物理的に小さい」という意味である。
 これに対して短語尾を使った 2. は、文上では明言されていないが、あくまでも「誰かにとって小さすぎる」という意味である。

#187 短語尾では「誰々にとって〜すぎる」というニュアンスが生じる形容詞がある。

 15歳のアレクサンドル大公と14歳のエリザヴェータ・アレクセーエヴナ(のちの皇帝アレクサンドル1世と皇妃)を見た廷臣ロストプチーン伯は、こう書き残している。

Ка́к бы э́тот бра́к не принёс несча́стья вели́кому кня́зю. О́н та́к мо́лод. А жена́ его́ та́к прекра́сна...
「この結婚は大公(アレクサンドル1世)に不幸をもたらしはしまいか。大公はあんなにも若く、その妻(エリザヴェータ)はあんなにも美しい……」

単純に言ってしまうと、「あんなに美しい妻にとって(その夫となるには)大公は若すぎる」、「あんなに若い大公にとって(その妻になるには)彼女は美しすぎる」というニュアンスが、この短語尾で示されている、ということだ。

 現実には、以上挙げた形容詞以外にも、日常会話レベルで短語尾が使われる形容詞は少なくない。しかしここですべてを挙げるのは不可能なので、ひとつひとつ辞書で確認するようにしよう。

▲ページのトップにもどる▲

最終更新日 07 11 2017

Copyright © Подгорный (Podgornyy). Все права защищены с 7 11 2008 г.

ロシア学事始
ロシア語講座
初級
inserted by FC2 system