З11:I 式 13
би́ть(不完) ⇔ поби́ть(完)
- 対格を打つ・殴る・ぶつ
現在形・命令形は、文字からすると -и- ⇔ -ь- の «交替型»。ただし音からすると «削除型»。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | бью́ | би́л | |
女 | би́ла | |||
ты | 男 | бьёшь | би́л | бе́й |
女 | би́ла | |||
он | 男性名詞 | бьёт | би́л | ||
она | 女性名詞 | би́ла | |||
оно | 中性名詞 | би́ло | |||
мы | бьём | би́ли | ||
вы | бьёте | бе́йте | ||
они | 名詞の複数形 | бью́т |
мя́ч(男性名詞)ボール
алта́рь(男性名詞)祭壇、(キリスト教)至聖所
- Са́ша поби́л Лёшу. 「サーシャはリョーシャを叩いた・殴った・ぶった」
- Са́ша поби́л Лёшу по голове́. 「サーシャはリョーシャの頭を叩いた」
- Са́ша поби́л Лёшу в лицо́. 「サーシャはリョーシャの顔を殴った」
- Са́ша поби́л по мячу́. 「サーシャはボールを蹴った」
- Са́ша поби́л в две́рь кулако́м. 「サーシャはドアを拳骨で叩いた」
- 以上のように、бить|побить の目的語は、様々な形態で示される。その詳細は、辞書を参照のこと。
- Дурако́в и в алтаре́ бью́т. 「愚か者を祭壇でも殴る」=「愚か者は祭壇でも殴られる」
- и は「AとB」という時の「〜と」に相当する接続詞。英語の and である。
ではあるのだが、それと同程度の頻度で使われるのが、「〜も」という意味の小詞として。「ぼくにもわかりません」、「日本でも有名だ」、「彼女も大学生です」、「考えることもできない」、「あいつはこんなことも知らない」等々の「〜も」。用法としては、и A で「Aも」。 - 有利な状況にあっても不利・不幸・災難を被る者を揶揄することわざ。
- и は「AとB」という時の「〜と」に相当する接続詞。英語の and である。
разби́ть(完) ⇔ разбива́ть(不完) ※不完は I 式規則変化
- 対格を粉々に割る・打ち砕く
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | разобью́ | разби́л | |
女 | разби́ла | |||
ты | 男 | разобьёшь | разби́л | разбе́й |
女 | разби́ла | |||
он | 男性名詞 | разобьёт | разби́л | ||
она | 女性名詞 | разби́ла | |||
оно | 中性名詞 | разби́ло | |||
мы | разобьём | разби́ли | ||
вы | разобьёте | разбе́йте | ||
они | 名詞の複数形 | разобью́т |
- Ма́льчики разби́ли о́кна. 「男の子たちは窓を割った」
- Не разбе́й ча́шку. 「(うっかり)カップを割るなよ」
раз- という接頭辞は、語形変化によっては разо- になる。やはり子音がいくつも続くのは、ロシア人にとっても発音しづらいのだろう。
- разжечь ⇒ разожгу, разожжёшь, ...
- разлить ⇒ разолью, разольёшь, ...
- разобрать ⇒ разберу, разберёшь, ...
- разогнать ⇒ разгоню, разгонишь, ...
- разорвать ⇒ разорву, разорвёшь, ...
уби́ть(完) ⇔ убива́ть(不完) ※不完は I 式規則変化
- 対格を殺す
заря́нка(女性名詞)コマドリ
мали́новка(女性名詞)コマドリ
- Кто́ уби́л заря́нку | мали́новку? 「誰がコマドリ殺したの?」
- ロシア語には定訳はないようだ。зарянка と малиновка との違いは、わたしにはわからない。
- Алекса́ндра II уби́л наро́дник Игна́тий Гриневи́цкий. 「アレクサンドル2世を、ナロードニキのイグナーティイ・グリネヴィツキイが殺した」=「アレクサンドル2世を殺したのは、ナロードニキのイグナーティイ・グリネヴィツキイである」
- II は順序数詞。「アレクサンドルという名前の2人目の皇帝」だから。この場合、アレクサンドル2世は男だから男性形で второй。さらにそれが対格=生格になっているから、второго。ということで、声に出す時は Александра второго。
- Де́душку уби́ли во Второ́й мирово́й войне́. 「祖父を第二次世界大戦で殺した」=「祖父は第二次世界大戦で戦死した」
- Но́вость убива́ет его́. 「(その)ニュースがかれを殺している」=「(その)ニュースにかれは打ちのめされている」
пи́ть(不完) ⇔ вы́пить(完)
- 対格を飲む
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | пью́ | пи́л | |
女 | пила́ | |||
ты | 男 | пьёшь | пи́л | пе́й |
女 | пила́ | |||
он | 男性名詞 | пьёт | пи́л | ||
она | 女性名詞 | пила́ | |||
оно | 中性名詞 | пи́ло | |||
мы | пьём | пи́ли | ||
вы | пьёте | пе́йте | ||
они | 名詞の複数形 | пью́т |
- Я́ пила́ во́ду. 「わたしは水を飲んでいた/飲んだ」
- воду は対格だから、量は示唆していない。「水というもの」。
- Я́ вы́пила воды́. 「わたしは(コップ一杯の)水を飲んだ」
- воды は生格だから、「ある一定量の水」を示している。もっとも、それが「コップ一杯」かどうかは不明。
- выпить は、単なる пить に対応する完了体動詞というわけではない。われわれ日本人的には、むしろ別の動詞と理解した方がいいかもしれない。と言うのも、基本的に「目の前にある一定量のものを飲み尽くす」というニュアンスで用いられるからである。
ゆえに、目的語は基本的に対格ではなく生格になる(と覚えておこう)。
- Пра́вда, ру́сские пью́т. 「確かに、ロシア人てのは飲兵衛だ」
- 日本語でも「飲む」だけで「酒を飲む」という意味で使われるが、ロシア語の пить も同様である。
- Вы́ пьёте? 「いける口ですか?」
- Уже́ ты́ вы́пил буты́лку? 「もう1本飲んだの?」
- бутылку は生格ではなく対格である。これは、そもそも厳密に言えば выпил の対象ではないからだ。「飲んだ」のは、酒かジュースか何かであろう。ビンではない。ビンは飲めない。
- Вы́пей лека́рство. 「薬飲んじゃえよ」
жда́ть(不完) ⇔ ―(完)
- 対格・生格・従属文を待つ
- 生格・動詞不定形・従属文を予期する・当てにする
現在形・命令形の変化形式は «削除型»。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | жду́ | жда́л | |
女 | ждала́ | |||
ты | 男 | ждёшь | жда́л | жди́ |
女 | ждала́ | |||
он | 男性名詞 | ждёт | жда́л | ||
она | 女性名詞 | ждала́ | |||
оно | 中性名詞 | жда́ло | |||
мы | ждём | жда́ли | ||
вы | ждёте | жди́те | ||
они | 名詞の複数形 | жду́т |
подожда́ть(完) ⇔ ―(不完)
- 対格・生格・従属文を待つ
ожида́ть(不完) ⇔ ―(完)
- 生格・従属文を待つ
- 生格・動詞不定形・従属文を予期する・当てにする
ここで ждать、подождать、ожидать の使い分けを確認しておく。
「待つ」という行為の完結(目的の達成)は、「入手する」とか「待ち人がやって来る」である。つまり、「待つ」という動詞には本来的に完了体が存在しない。そのため、ждать という不完了体動詞は、事実確認「待つという行為をする」、継続「待っている」を表す。
ところが「待つ」という行為には、「ある一定時間」、「ある限界まで」という場合もある。「5分だけ」とか「きみが来るまで」とかだ。そのような場合に用いるための完了体動詞が подождать である。なのでこれは完了体動詞とはいえ、目的の達成という意味を持たない。ただ単に「一定時間継続した行為が終了する」。
ожидать は подождать よりも文体的に文章言葉的。それだけに、待つ対象が抽象的な場合は、使用頻度が高い。いまの段階では、存在だけ知っておけば十分である。
- Я́ до́лго жда́л его́ письмо́. 「わたしはずっとかれの手紙を待っていた」
- Мы́ жда́ли его́ почти́ ча́с. 「われわれはかれを1時間ほど待っていた」
- Вре́мя не ждёт. 「時は待ってくれない」=「ぐずぐずするな」
- Я́ ва́с жду́ до́ма. 「家でお待ちしています」
- 不完了体現在時制 ⇒ 「いま現に自宅であなたが来るのを待っている」。開始は過去。終了は未来だが、念頭にはない。
- Я́ бу́ду жда́ть ва́с в о́фисе. 「オフィスでお待ちしています」
- 不完了体未来時制 ⇒ 「いまは待っていない。たとえば «明日の約束の時間に» 待っているだろう」。開始も終了も未来だが、これまた終了は念頭にない。
- Я́ ва́с подожду́ зде́сь. 「ここでお待ちしています」
- 完了体未来時制 ⇒ 「いまからあなたが来るまでの間だけ待つ」。開始はいま。終了は未来で、こちらはちゃんと念頭に置かれている。
- Подожди́ немно́го; я́ сейча́с одева́юсь. 「ちょっと待ってて。いま着替えてるから」
- Жди́ меня́, и я́ верну́сь. 「待っていておくれ、ぼくは帰ってくるから」(シーモノフ)