З08:過去形の不規則
過去形には、不規則はほとんどない。
本来、過去形と、現在形・命令形の I 式、II 式という区別は無関係である。
ただし、ここで説明する過去形の不規則は、すべて現在形・命令形で I 式の変化をする動詞にのみ見られる。現在形・命令形で II 式の変化をする動詞は、過去形で不規則変化をしない。
形態上の不規則
改めて確認しておくと、過去形は
過去形 = 不定形 ―(引く) -ть +(足す) 変化語尾
つまり、不定形から末尾の -ть を取り、代わりに変化語尾 -л、-ла、-ло、-ли をつけてやる。
これ以外の過去形のつくり方をする動詞は、
- умереть
- ошибиться
- -нуть の一部
- 子音+-ть、-ти、-чь
だけである。
しかも不規則の変化語尾は、男性のみ。
規則 | 不規則 | |
---|---|---|
単数男性 | -л | - |
単数女性 | -ла | |
単数中性 | -ло | |
複数 | -ли |
アクセントの不規則
アクセントの不規則、つまりアクセントがあっちこちに移動する、という動詞は少なくない。大雑把に、次の3パターンに分けられる。
1 | 2 | 3 | |
---|---|---|---|
単数男性 | ─́л | ─́л | ─́л |
単数女性 | ─́ла | ─ла́ | ─ла́ |
単数中性 | ─́ло | ─́ло | ─ло́ |
複数 | ─́ли | ─́ли | ─ли́ |
- すべて語幹
- 不定形と同じ場所
- ほとんどの動詞
- 下記の不規則動詞のうち、接頭辞 вы́- のついた完了体動詞
- 不定形と違う場所 : ошиби́ться (形からして不規則) ⇒ 前に移動
- 不定形と同じ場所
- 女性のみ変化語尾
- 女性以外は不定形と同じ場所
- пи́ть、жда́ть、бра́ть、взя́ть、зва́ть、спа́ть、その他多数
- бы́ть、жи́ть、да́ть (肯定の場合のみ)
- 女性以外は不定形と違う場所
- умере́ть (形からして不規則)、нача́ть、その他若干 ⇒ 前に移動
- 接頭辞+-ня́ть ⇒ 接頭辞に移動
- бы́ть、жи́ть、да́ть それぞれの
- 否定の場合 ⇒ не に移動
- 接頭辞のついた派生語(забы́ть は例外) ⇒ 接頭辞に移動
- 女性以外は不定形と同じ場所
- 男性以外は変化語尾
- 男性は語幹 : -ти́、-чь
- 男性は -ся : нача́ться、роди́ться(完)、接頭辞+-ня́ться
なお、厄介なことに、アクセントの位置は複数あり得る(ものがある)。たとえば собраться という動詞の場合、
собра́лся́ |
собрала́сь |
собра́ло́сь |
собра́ли́сь |
このような場合、文体によって、世代によって、地域によって、職業によって、等々、様々な要素に基づいて使い分けられている。場合によっては、古い位置と今日的な位置とに分けられる。これは単語ごとに違うので、いちいち辞書で確認するしかない。
当サイトは、基本的にこの問題に関してはスルーする。辞書で確認していただきたい。