ロシア語講座:初級

Ж13:時間の表現

順序数詞も学んだところで、時間に関する様々な表現を確認しておこう。
 どの言語でもそうだろうが、ロシア語でも時間に関する表現は非常に複雑怪奇であり、ここでは話を単純化して、最低限のことのみ説明する。

時間を表す単語

 以上、すべて普通名詞であるから、個数詞を用いて数えることが(理屈上は)可能だ。その場合、普通に個数詞+名詞の結合の法則に従う。

見ての通り、意味的にかなり無理があり、現実的には絶対に使われない表現もあるが、理屈上はかくのごとしである。

 この際、以下の2点に注意。

  1. го́д の複数生格は годо́в ではなく ле́т。
  2. ча́с の単数生格は ча́са ではなく часа́。
(оди́н) го́д(оди́н) ча́с
два́ го́дадва́ часа́
три́ го́датри́ часа́
четы́ре го́дачеты́ре часа́
пя́ть ле́тпя́ть часо́в
ше́сть ле́тше́сть часо́в
се́мь ле́тсе́мь часо́в
во́семь ле́тво́семь часо́в
де́вять ле́тде́вять часо́в
де́сять ле́тде́сять часо́в

 また、いくつかの個数詞+名詞には特殊な単語や言い回しがあったりする。とりあえずいまの段階で覚えておいた方がいいのは次ぐらい。

年・世紀

 平成〜年というのは、平成元年を1として、そこから2年目、3年目と数えるものである。西暦はイエス・キリストの誕生を元年とし、そこから2年目、3年目と数える。ゆえに「西暦2015年」というのは、「イエス・キリストの誕生から数えて2015番目の年」ということになる。これを語学的に言うと、順序数詞を使う、ということになる。
 世紀というのは100年を1世紀とするものだから、年と同じく順序数詞を用いる。

 副詞的に用いる場合(「〜年に」、「〜世紀に」)、в+前置格とする。

 文字で書く場合は、年はアラビア数字、世紀はローマ数字を使う。書き方にはいくつかのパターンがあるが、ここでは詳述しない。

日本語ロシア語
書き方読み方
2015年2015 год
в 2015 году
две́ ты́сячи пятна́дцатый го́д
в две́ ты́сячи пятна́дцатом году́
1991年1991 год
в 1911 году
ты́сяча девятьсо́т девяно́сто пе́рвый го́д
в ты́сяча девятьсо́т девяно́сто пе́рвом году́
1917年1917 год
в 1917 году
ты́сяча девятьсо́т семна́дцатый го́д
в ты́сяча девятьсо́т семна́дцатом году́
1700年1700 год
в 1700 году
ты́сяча семисо́тый го́д
в ты́сяча семисо́том году́
1547年1547 год
в 1547 году
ты́сяча пятьсо́т со́рок седьмо́й го́д
в ты́сяча пятьсо́т со́рок седьмо́м году́
988年988 год
в 988 году
девятьсо́т во́семьдесят восьмо́й го́д
в девятьсо́т во́семьдесят восьмо́м году́
862年862 год
в 862 году
восемьсо́т шестьдеся́т второ́й го́д
в восемьсо́т шестьдеся́т второ́м году́
21世紀XXI век
в XXI веке
два́дцать пе́рвый ве́к
в два́дцать пе́рвом ве́ке
20世紀XX век
в XX веке
двадца́тый ве́к
в двадца́том ве́ке
19世紀XIX век
в XIX веке
девятна́дцатый ве́к
в девятна́дцатом ве́ке
9世紀IX век
в IX веке
девя́тый ве́к
в девя́том ве́ке

#157 時間の表現では、「いついつ」と「いついつに」の区別に注意。

季節・月・週・曜日

 季節・月・週・曜日を表す言葉は、ロシア語では普通名詞でそれぞれ存在しており、数詞とは無関係。

 問題は「〜に」の言い方である。以下、端的に示す。

日付

 ロシア語で「日付」を意味するのは да́та だが、実際に日付を言う場合に用いられるのは число́「数」である。

 たとえば「11月7日」とは、「11月という月の7番目の日」ということだ。ゆえに英語でも、特にイギリス英語では、かつては the seventh day of November という言い方をした。ロシア語では、現在でもこの通りの言い方をする。

日付「日付」
英語the seventhdayof November
ロシア語седьмоечислоноября

 もっとも、日常会話では число は省略される。よって、日付の言い方は

日付(順序数詞の単数中性) + 月名(生格)

となる。

 副詞的に用いる場合(「〜月〜日に」)、日付(順序数詞)を生格にする。

 文字で書く場合は、日付はアラビア数字、月名はロシア語そのまま(省略されることが多く、またごくまれにローマ数字・アラビア数字が使われることがある)。

日本語ロシア語
書き方読み方
1/11 янв.пе́рвое января́
пе́рвого января́
3/33 мар.тре́тье ма́рта
тре́тьего ма́рта
5/55 маяпя́тое ма́я
пя́того ма́я
6/1010 июнядеся́тое ию́ня
деся́того ию́ня
7/1414 июлячеты́рнадцатое ию́ля
четы́рнадцатого ию́ля
9/2323 сен.два́дцать тре́тье сентября́
два́дцать тре́тьего сентября́
11/77 нояб.седьмо́е ноября́
седьмо́го ноября́
12/2525 дек.два́дцать пя́тое декабря́
два́дцать пя́того декабря́

 これに年がつくと、後ろから生格で修飾する形になる。

 せめて自分の誕生日ぐらいは言えるようになっておこう。

 日本語の「日」という単語も多義的だが、ロシア語でも день は様々な意味を持つ。

  1. 月・週を構成し、24時間から成る時間の単位
  2. 1) を二分割した場合、太陽の出ている時間帯
  3. 1) を四分割した場合、正午から日没までの時間帯

 日本では、一日を二分割した場合、

のふたつがあり得るが、ロシアには午前・午後という概念は存在しない。
 ロシアで一日を二分割するとなれば、день и ночь である。もっとも、дни и ночи や днём и ночью などの慣用句で用いられる程度で、日常生活では二分割すること自体あまり一般的ではない。ロシア人が一日を分割するとすれば、二分割ではなく四分割である。

 日本では、朝・昼・晩・夜という四分割はさほど一般的ではないように思われる。
 ロシアでは、一日の四分割は厳格である。一年が四季に分けられるように、一日は утро、день、вечер、ночь の4つに分けるのが常識となっている。ただし、その境界線はいささか曖昧だ。
 утро の開始は日の出。とはいえロシアでは日の出の時間は季節によって、緯度・経度によって大きく異なる。多分に感覚的なものだが、おおよそ 03:00 から 04:00 あたりが утро の開始時間と考えていい。
 утро と день の境界線は 12:00 である。これは唯一絶対の境界だ。ゆえに、утро は多くの場合、日本語でいう「午前」に相当する。他方で день は「午後」だが、それもあくまでも日没まで。
 день と вечер の境界線は日没である。しかし日の出と同じく日没も、季節、緯度・経度によって大きく異なる。場合によっては 15:00 頃からすでに辺りは暗くなってくるし、場合によっては 23:00 になってもまだ明るい。день と вечер の境界線として、おそらく 16:00 から 17:00 あたりを目安と考えていいだろう。
 人が寝静まった時間が ночь である。しかし電気が普及し、夜型人間が増え、大都市が不夜城と化している現代にあって、そのような理屈は通らなくなっている。それでもおおまかに、22:00、23:00 前後が вечер と ночь の境界線と見なされているようだ。

 день という単語がこのように多義的である以上、厳密に「一日」と言いたい場合に使われるのが су́тки である。であるから、су́тки には「1日24時間」以外の意味はない。問題は、この名詞が複数名詞である、という点にある。複数名詞には、単数形が存在しない。ゆえに、「1」〜「4」を数えることができない。

 「これこれこういう日に」という表現は、原則として в+対格。

 朝昼晩夜は造格。

時間

 ロシアには、時間の表現は2通りある。公的な表現と、日常生活における表現と、である。

公的表現

 個数詞+名詞。これ以上解説すべきことはない。

日常的表現

 めちゃくちゃ厄介。
 基本となるのは、00:01〜01:00 が第一の1時間 первый час、01:01〜02:00 が第二の1時間 второй час、02:01〜03:00 が第三の1時間 третий час、等々という理解。
 01分〜30分は、「第Xの1時間のY分」という表現。 ⇒ Y минута X-ого часа
 31分〜59分は、「Y分足りないX時」という表現。「足りない」は без+生格を用い、語順は逆転する。 ⇒ без Y-а минут X час
 さらに次の名詞が多用される。

 公的表現にも日常的表現にも、以下の点が共通する。

 以下に具体例を挙げてみる。

公的表現日常的表現順序数詞+час
00:25но́ль часо́в два́дцать пя́ть мину́тдва́дцать пя́ть пе́рвогопе́рвый ча́с но́чи
01:05ча́с пя́ть мину́тпя́ть второ́говторо́й ча́с но́чи
02:20два́ часа́ два́дцать мину́тдва́дцать тре́тьеготре́тий ча́с но́чи
03:08три́ часа́ во́семь мину́тво́семь четвёртогочетвёртый ча́с но́чи|утра́
04:05четы́ре часа́ пя́ть мину́тпя́ть пя́тогопя́тый ча́с утра́
05:30пя́ть часо́в три́дцать мину́тпо̀лшесто́го(полови́на шесто́го)шесто́й ча́с утра́
06:13ше́сть часо́в трина́дцать мину́ттри́дцать седьмо́госедьмо́й ча́с утра́
07:55се́мь часо́в пятьдеся́т пя́ть мину́тбез пяти́ во́семьвосьмо́й ча́с утра́
08:45во́семь часо́в со́рок пя́ть мину́тбез пятна́дцати де́вять(без че́тверти де́вять)девя́тый ча́с утра́
09:21де́вять часо́в два́дцать одна́ мину́тадва́дцать одна́ деся́тогодеся́тый ча́с утра́
10:16де́сять часо́в шестна́дцать мину́тшестна́дцать оди́ннадцатогооди́ннадцатый ча́с утра́
11:15оди́ннадцать часо́в пятна́дцать мину́тпятна́дцать двена́дцатого(че́тверть двена́дцатого)двена́дцатый ча́с утра́
12:00двена́дцать часо́вдвена́дцать дня́(по́лдень)
12:39двена́дцать часо́в три́дцать де́вять мину́тбез двадцати́ одно́й ча́спе́рвый ча́с дня́
13:00трина́дцать часо́вча́с дня́
14:40четы́рнадцать часо́в со́рок мину́тбез двадцати́ три́тре́тий ча́с дня́
15:15пятна́дцать часо́в пятна́дцать мину́тпятна́дцать четвёртого(че́тверть четвёртого)четвёртый ча́с дня́
16:52шестна́дцать часо́в пятьдеся́т две́ мину́тыбез восьми́ пя́тьпя́тый ча́с дня́|ве́чера
17:48семна́дцать часо́в со́рок во́семь мину́тбез двена́дцати ше́стьшесто́й ча́с ве́чера
18:01восемна́дцать часо́в одна́ мину́таодна́ седьмо́госедьмо́й ча́с ве́чера
19:59девятна́дцать часо́в пятьдеся́т де́вять мину́тбез мину́ты во́семьвосьмо́й ча́с ве́чера
20:02два́дцать часо́в две́ мину́тыдве́ девя́тогодевя́тый ча́с ве́чера
21:50два́дцать оди́н ча́с пятьдеся́т мину́тбез десяти́ де́сятьдеся́тый ча́с ве́чера
22:43два́дцать два́ часа́ со́рок три́ мину́тыбез семна́дцати оди́ннадцатьоди́ннадцатый ча́с ве́чера|но́чи
23:23два́дцать три́ часа́ два́дцать три́ мину́тыдва́дцать три́ двена́дцатогодвена́дцатый ча́с но́чи
24:00два́дцать четы́ре часа́двена́дцать но́чи(по́лночь)

 もっとも、わたしたち日本人も、日常会話で「5時23分」とか言うことはまずない。たいていは、「5時20分」とか「5時25分」とかサバを読む。それはロシア人でも同じことである。
 特に XX:00 ぴたりでなくとも平気で「X時」と言うことが多い。

 без を使った表現は、引き算が面倒なためか、廃れつつあるようだ。そもそも、公的表現が日常的表現を駆逐しつつあると言う人もいる(TVやラジオを通じて普及したのか)。その一方で、公的表現でも час や минута が省略される傾向が強い。

 утра́、дня́、ве́чера、но́чи を使うかどうかは、前後の文脈次第。これを使うのは、あくまでも 08:00 と 20:00 とを区別するため。だから「明日8時にお前んち行くよ」では утра か вечера がないと誤解される怖れがあるが、「明日は8時に起きる」では普通は必要ない(「20:00 に起きる」という特殊な場合を除いて)。

 副詞的に用いる場合(「〜に」)、

  1. 対格(そのまま) : без、четверть を用いた表現
  2. в+前置格 : половина を用いた表現
  3. в+対格 : その他

順序数詞+час

 日常的表現であるが、頻繁に用いられる。
 上述のように、00:01〜01:00 が第一の1時間 первый час、01:01〜02:00 が第二の1時間 второй час、02:01〜03:00 が第三の1時間 третий час、等々で、この表現は12時間制でしか用いられないから、11:01〜12:00 が第十二の1時間 двенадцатый час となった後は、12:01〜13:00 は再び第一の1時間 первый час となる。
 上掲の表の「順序数詞+час」というのは、この表現のことである。

 この表現は、日本語では次のような場合に相当するだろう。

これらがすべて、ロシア語では четвёртый час で済む。その意味で、非常にアバウトではあるが便利な表現なので、ぜひ覚えておこう。

 副詞的に用いる場合(「〜に」)、в+前置格とする。その場合、ча́с は ча́се ではなく часу́。

書き方

 時刻を文字で書く場合、さまざまな場面ごとに異なる。たとえば、公的表現か日常的表現かとか、分がなく時だけか時も分もあるかとか、副詞的に用いられているとか、である。その規則は煩雑で、しかも必ずしも厳密ではない。なのでここでは省略。
 とりあえずは、ロシア語(キリール文字)で書いておくこと。

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最終更新日 31 07 2015

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