Е07:従属文その1
ここで話が大きく逸れるが、«従属文» というものについて簡単に確認しておこう。
Я́ ду́мал, что Ми́ша до́ма. 「ミーシャは在宅中だと思った(思っていた)」
従属文にもいろいろあるが、ここで問題としたいのは、このように «主文» の「目的語」の役割を果たす従属文である。
上掲の例文は、
主語 | 述語 |
---|---|
ミーシャは | 在宅中だ |
Миша | дома |
という文と、
主語 | 述語 | 目的語 |
---|---|---|
わたしは | 思った(思っていた) | 〜 |
Я | думал | 〜 |
とを組み合わせたものである。
「わたしは〜と思っていた」の「〜」の部分が、「ミーシャは在宅中だ」という文になっている。この場合、「わたしは〜と思っていた」が «主文»、つまりメインの文であり、「ミーシャは在宅中だ」が «従属文(従属節)»、つまりサブの文である。
主文の「〜」の部分は、名詞であれば「思う」という動詞の「目的語」となる部分だ。つまりこの場合、従属文が主文の目的語としての役割を担っていると考えることができる。
- わたしはかれにはもう先がないということを知っている。 ※従属文は「知っている」の «目的語»。
- かれが落ち込んでいたのを思い出した。 ※従属文は「思い出した」の «目的語»。
- 今日は遅くなるかもしれないとかれは言った。 ※従属文は「言った」の «目的語»。
このような形でふたつの文を組み合わせる場合、基本的には次のような構造を取る。
主文, что 従属文
つまり、主文と従属文とを、что という接続詞が結びつけている、ということだ。なおこの際、что の前にコンマ「 , 」は必須である。
#111 主文の «目的語» となる従属文は、что に導かれて主文(の動詞)の後に続ける。
что と言えば、「何」という意味の疑問詞だった。ところがここでは、主文と従属文とを結びつける «接着剤» の役割を果たしていて、「何」という意味などない。文法的に言えば、что という単語は
- 疑問代名詞 : 意味は「何」
- 接続詞 : 意味はなし
というふたつの意味・用法を持つ。このふたつを区別する最大の目安は、アクセントである。
- 疑問代名詞 что にはアクセントがある。
- 接続詞 что にはアクセントがない。
ということだ。これを間違えると、聞いているロシア人が戸惑うことになり、悪くするとこちらの言っていることを理解してもらえない。
#112 что́(アクセント有)は「何」。что(アクセント無)は意味なし(単なる接続詞)。文意がまったく異なる。
もう一点。
言語によっては、従属文にするために動詞などに細工を施さなければならないものもあるが、ロシア語ではそのような必要は一切ない。普通の文を что の後に置いてやれば、それだけで従属文になる。その意味で、われわれは何も考えなくていい。
ということで、まだ学んでいない動詞ばかりなのでロシア語は省くが、どういう構造になるかを示しておく。
- わたしはかれにはもう先がないということを知っている。 ⇒ わたしは知っている, что かれにはもう先がない
- かれが落ち込んでいたのを思い出した。 ⇒ わたしは思い出した, что かれが落ち込んでいた
- 今日は遅くなるかもしれないとかれは言った。 ⇒ かれは言った, что 今日はかれは遅くなるかもしれない
作文をする場合は、主文、従属文それぞれをロシア語できちんとした文に直せない人が案外多いので注意。
具体例はこれから、動詞を学ぶ中で見ていこう。
時制の一致
英語をご存知の方のために。
ロシア語には、«時制の一致» はない。日本語の感覚で通用する。