ロシア語講座:初級

Г10:格

付随情報の示し方の第三は、「(前置詞+)名詞・形容詞・代名詞の斜格」である。これが使えないと、ロシア語でのコミュニケーションはほぼ不可能。
 たとえば、ここまでの例で言うと、

のふたつは、この斜格によって示される。

 そこでここで、格というものについて学んでいこう。

格とは

 «格» とは、名詞が文中でどのような役割を果たしているかを示す指標である。
 わかりやすく単純化して説明しよう。
 日本語では、「かれ」という名詞が文中でどのような役割を果たしているかを示すのは、«てにをは»(助詞)、特に «格助詞» である。「かれ」、「かれ」、「かれ」、「かれ」、「かれ」等々。つまり、名詞に付属する助詞が、名詞の格を示すのである。
 これに対してロシア語では、名詞の語尾が変化して、その形が格を示す。

 ちなみに、格が示しきれない細かい意味・ニュアンスを表現するために、日本語は名詞を用いる。「かれのへ」、「かれとともに」、「かれので」、等々。一方ロシア語でこの役割を担っているのは前置詞である。

#62 「〜は」、「〜の」、「〜を」等、文中での名詞の役割を標示するのが格である。

 主格とは辞書の見出しになっている形で、言わば «格変化していない形» である。ゆえに、主格以外の格を «斜格» と総称し、主格と区別する。
 斜格という用語は、教科書の類には登場しない、専門性の高い用語であるから、学んでいく上で覚える必要はまったくない。とはいえ利便性の高い言葉でもあるので、当コンテンツではおそらく多用することになる。なので、覚えておいていただけるとありがたい。

 個々の格の使い方については、追々詳しく学んでいこう。

#63 名詞は、格に応じて語尾を変化させる。

 名詞は格に応じて、語尾を変化させる。これを «格変化» と呼ぶ。格変化は、

結果として、36個の語尾を覚えなければならない。ただし現実には、それほど多くはない。

 Алекса́ндр というのは男性の名、この男性の本来の名前であり、これが主格である。Алекса́ндра は生格ないし対格、Алекса́ндру は与格、Алекса́ндром は造格、そして Алекса́ндре は前置格である。以上、単数における場合であるが、Алекса́ндр という名の人物が複数いた場合は、それぞれ Алекса́ндры(主格)、Алекса́ндров(生格・対格)、Алекса́ндрам(与格)、Алекса́ндрами(造格)、Алекса́ндрах(前置格)となる。
 いかなる変化語尾がいかなる格を示すかは、名辞類の性と数によって厳格に決まっている。ゆえに、Влади́мир という名前もまた、Влади́мира、Влади́миру、Влади́миром、Влади́мире などと変化する。こうして、Его́ра とあれば、これが Его́р という人名の単数生格ないし単数対格だとわかるし、О́сипу とあれば О́сип の単数与格だとわかる。
 そして格(語尾の形)が文中での役割を標示するのであるから、文中に Михаи́л とあれば、単数主格であるから、「ミハイールは」か「ミハイールだ」という意味だとわかる。Михаи́лам とあれば、複数与格であるから、「ミハイール(という名前の人)たちに」。Михаи́ла とあれば、単数生格であるから、「ミハイールの」。
 ゆえに、格変化がきちんとできないと、文がしゃべれないし聞き取れない。読めないし書けない。ロシア語が使えない。

 これでわかるだろうか。以前学んだ名詞の複数形とは、つまり複数主格のことだったのである。あれを必要に応じてさらに斜格に変化させなければならない。

 なお、厳密には「男性名詞」の変化ではなく、「子音で終わる名詞」の変化と言うべきである。同様に、「中性名詞」の変化ではなく「-о、-е で終わる名詞」の変化であり、「女性名詞」の変化ではなく「-а、-я で終わる名詞」の変化である。ゆえに、-а、-я で終わる男性名詞は、「男性名詞」の変化ではなく「-а、-я で終わる名詞」の変化をする。また -мя で終わる中性名詞は特殊な変化パターンをとる。
 ただしこの言い方は、正確ではあるが面倒なので、一般的にも、ここでも、「男性名詞」の変化、等々という言い方をする。

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最終更新日 20 03 2015

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