В07:AはB(形容詞)だ
Я́ сре́дний студе́нт.
という文では、形容詞は名詞の前に置かれて、名詞を修飾している。文法用語を使えば、この場合、形容詞が名詞の修飾語になっている。
しかし形容詞には、これとは違うもうひとつの用法がある。例えば日本語の形容詞「赤い」で考えてみよう。
- 修飾語 : 赤い花 ⇒ 赤い花が咲いている(「赤い花」は主語)。/あそこに見えるのは赤い花だ(「赤い花」は述語)。/かれは胸に赤い花を挿していた(「赤い花」は目的語)。
- 述語 : この花は赤い。
およそあらゆる言語において、形容詞はこのふたつの用法を持つ。ロシア語とて例外ではない。
- 修飾語 : кра́сный цвето́к
- 述語 : Цвето́к кра́сный.
言うまでもないことだが、日本語とロシア語と、構造がまったく同じである。単語の順番まで一緒だ。そういう意味で、何も考えずにできるはずだ。
ちなみに、注意しておくが、日本語でもロシア語でも 1 は文ではないが、2 は文である。
1 と 2 は、事実上順番を入れ替えただけ。それに、大文字にしたりピリオドを打ったり、文らしい細工をすれば、それでOKである。つまりこれまた、「これはAだ」と構造は同じ。「これは это」の代わりに名詞を置き、「A」のところに形容詞を置くだけ。このふたつをただ並べれば、それで文になるのだ。
- широ́кий за́л 「広いホール」 ⇔ За́л широ́кий. 「(この)*ホールは広い」
- широ́кая река́ 「広い川」 ⇔ Река́ широ́кая. 「(この)*川は広い」
- широ́кое не́бо 「広い空」 ⇔ Не́бо широ́кое. 「空は広い」
ロシア語の「この」は様々な意味で使用法が日本語とは微妙に異なる。詳細は別に譲るとして、とりあえずここでは、ロシア語では「この」という単語を入れなくても「この」という意味を持つ場合がある、と理解しておいていただきたい。日本語でも「ところがクマさんが後からついてくる」の「クマさん」は「この」という意味を持つ。
#13 形容詞を用いて「AはBだ」と言う場合にも、AとBを並べるだけ。ただし形容詞の語尾は、名詞の性に応じて変わる。
念のため確認しておくが、述語となっている形容詞の語尾は、主語となっている名詞の性に応じて変化する。
- Теа́тр большо́й. 「(この)劇場は大きい」
- Страна́ больша́я. 「(この)国は大きい」
- Зда́ние большо́е. 「(この)建物は大きい」
それは、主語が人称代名詞であっても同じことである。
- О́н высо́кий. 「かれは背が高い」
- Она́ высо́кая. 「彼女は背が高い」
- Я́ здоро́вый. 「わたしは健康です」 ※この場合、「わたし」は男。
- Я́ здоро́вая. 「わたしは健康です」 ※この場合、「わたし」は女。
- Ты́ глу́пый. 「きみはバカだなぁ」 ※この場合、「きみ」は男。
- Ты́ глу́пая. 「きみはバカだなぁ」 ※この場合、「きみ」は女。
推理小説で、犯人の一人称でわざと性別をわからない言葉づかいをさせて、犯人が男なのか女なのか読者にわからないように描く、という叙述トリックが用いられることがあるが、ロシア語ではこれは不可能である。