ロシア連邦では、国家のシンボルとして次の3つが定められている。
ちなみに «国家のエンブレム Государственная эмблема (Gosudarstvennaya emblema)» という言葉もあるが、おそらく一般的には紋章や国旗など、国家の視覚的シンボル全般を指す言葉であって(時には法律で定められていないもの、熊だの白樺だのも指す)、法律上使用法が明確になっているわけではない。
また «紋章 герб (Gerb)» というのは日本でいう家紋・紋所、国章とは微妙に異なり、西洋の紋章学で言うところの紋章のことである。日本の家紋・紋所も «紋章» と呼ぶこともあるが、国章などはむしろ «エンブレム» と呼ぶのが一般的だと思う。
さらにもうひとつ、«国家のペチャーティ Государственная печать (Gosudarstvennaya pechat')» という言葉がある。玉璽である。もっとも王さまがいなくても «国家のペチャーティ» はあるが、日本語では適当な単語が存在しないので、とりあえず «玉璽» と呼んでおく。«ペチャーティ» だけの場合(«国家の» という形容詞がつかない場合)は、«印章» と訳されるのが一般的だと思う。ようは «ハンコウ»のことである。
本来、印章は紋章などよりもはるかに歴史が古い。しかもしばしば紋章に使われる図柄は、そもそも印章に使われていた意匠を流用したものであることが多い。
しかしなぜかロシア・ソ連のシンボルを扱う学問(何と呼ばれるのか知らん)では、印章は無視される。せいぜい紋章のおまけとして語られる程度である。双頭の鷲も、本来は紋章ではなく印章に使われたデザインであったにもかかわらず、である。
それは法律における扱いでも同様だ。上述のように、国歌、国旗と並んで紋章もきちんと法律で定められているが、印章はここでも紋章の付録でしかない。
ということで、当コンテンツでも印章については項目を立てなかった。そもそもロシア・ソ連では、印章のデザインは紋章とほぼ共通しているということもあり、一部紋章について論じる中で言及するにとどめる。
ロシア連邦のシンボル
現行のシンボルは、1993年に大統領令でそれぞれ制定され、2000年に «憲法的法律» によって細かく規定された(国歌はこの時現行のものに差し替えられた)。
国歌
タイトル:『ロシア連邦国歌 Государственный гимн Российской Федерации (Gosudarstvennyy gimn Rossiyskoy Federatsii)』
作詞:セルゲイ・ミハルコーフ
作曲:アレクサンドル・アレクサンドロフ
国旗
白・青・赤の横縞の三色旗。縦横の比率は2:3。
紋章
双頭の鷲。細かく言うと、赤地の盾に金の双頭の鷲。胸にはモスクワの紋章である聖ゲオルギオス。
歴史的変遷
国家 | 紋章 | 国旗 | 国歌 |
---|---|---|---|
ロシア帝国 | 双頭の鷲A 1667-1917 | 黒黄白 1858-83 白青赤 1883-1917 | ロシア人の祈り 1816-33? 神よ、ツァーリを護りたまえ 1833-1917 |
臨時政府 | なし(双頭の鷲) | なし(赤旗) | なし(労働者のマルセイエーズ) |
ソヴィエト・ロシア | 鎌と鎚A 1918-1993 | 赤旗A 1918-1954 赤旗B 1954-91 | インターナショナル 1918-23 なし 1923-90 |
ソ連 | 鎌と鎚B 1923-1991 | 赤旗C 1923-1991 | インターナショナル 1923-44 ソ連国歌AB 1944-91 |
ロシア連邦 | 双頭の鷲B 1993- | 白青赤 1991- | グリンカの曲 1990-2000 旧ソ連国歌 2000- |
以上、いずれも法律や勅令によって定められたものである。
AとかBとかいうのは、同じタイプのものでも異なるバリエーションであることを示す。