ロシア用語の基礎知識:ロ

ロコソーフスキー コンスタンティーン
1896-1968。軍人。元帥。大粛清で流刑されるが、その後復活。スモレンスク攻囲戦で活躍し、スターリングラードの戦い、クールスクの戦いでは主役を張る。しかしベルリン攻略の任務はジューコフに与えられ、かれは隣の戦線軍に移された(スターリンに抗議したものの覆らず)。戦後は、父方がポーランド系だったためにポーランドに送り込まれ、ポーランド国防相。
ロシア
露西亜、ロシヤ、おろしや、おそろしや。
ロシア革命
第一革命(1905)、二月革命(1917)、十月革命(1917)の3つがある。ただしソ連崩壊後、十月革命は革命ではなく «クーデタ» とか «蜂起» などと呼ぶ方が一般的になっているようだ。
ロシア正教会
日本語ではロシア正教とかロシア正教徒という言い方をすることがあるが、ロシア正教という宗派があるわけではない。あくまでも教会組織のことなので、ロシア正教会と言うべきだろう(もっとも、必ずしも «正教» と «正教会» が厳密に使い分けられているわけではなさそう)。
 キリスト教を、細かいことをはぶいて、大きく西方のカトリックと東方のオルトドクス(正教)に分けると、ロシア正教会はオルトドクスに属する。ローマ教皇を頂点として一元的に組織されているカトリックと違い、オルトドクスは国家別に教会が組織されている。つまりロシア正教会は、ロシア帝国、ソ連、ロシア連邦という国家におけるオルトドクスの教会組織を指す。よって、ギリシャ正教と言えば東方オルトドクスのことだが、ギリシャ正教会と言うとギリシャ共和国内のオルトドクス教会のことになる。
 ちなみに日本の正教会も日本ハリストス正教会として独立しているが、主にロシア人によって布教が進められたため、モスクワ総主教(ロシア正教会のトップ)の管轄下に入っている。
ロシア帝国
ロシア語には «ツァーリ» という言葉と «インペラートル» という言葉があり、日本語ではどちらも «皇帝» と訳されている。ロシアの君主は、1721年まではツァーリを、それ以降はインペラートルを名乗った。このため、一般的にロシア帝国という言葉は1721年以降に適用されている。それ以前は «ロシア・ツァーリ国»。当サイトでは «モスクワ・ロシア» と呼んでいる。この点は歴史なども参照のこと。
ロシア的倒置法
英語で Russian reversal といい、言葉遊びの一種。もともと亡命ロシア人のヤーコフ・スミルノフが1980年頃にアメリカで始めたジョーク。本来の主語と目的語を入れ替えて、不条理感を出す。
 もともとのスミルノフのジョークでは単語の多義性を利用し、ソ連の政治・社会に対する風刺を含意していた(ちなみにわざと文法的な間違いも犯している)。

In America, you watch television. (アメリカでは人がTVを見る)
In Soviet Russia, television watch you! (ロシアではTVが人を監視する)

ロシア美術館
サンクト・ペテルブルグにあるロシア美術専門の美術館として、モスクワのトレティヤコーフ美術館と双璧をなす。収蔵点数ではロシア美術館の方が多いが、それも当然。もともとロシア美術館は皇帝ニコライ2世の肝いりで開設されたもので、他方トレティヤコーフ美術館はトレティヤコーフの個人コレクションが基となっている。ただし著名作で言うと、トレティヤコーフ美術館に軍配があがるだろう。トレティヤコーフが移動展派と親しかったことが大きい。
 本館の建物は、皇帝アレクサンドル1世とニコライ1世の弟、ミハイール・パーヴロヴィチ大公のために建てられたミハイロフスキイ宮殿。それ自体が美術品である。
ロシアリクガメ
Google によると、2015年、日本で最もググられたロシアの動物関連のワード。ロシアンブルーより多い、というのは正直驚き(ロシアンブルーは、世界で最もググられているロシア関連のワードらしい)。和名はヨツユビリクガメだが、ペットショップではホルスフィールドリクガメなどと呼ばれることもある。ロシアではただの «カメ»。
ロシア暦
英語でも «ロシアン・カレンダー» と言ったりするが、別にロシアに固有のものではない。厳密に言うと、これは «ユリウス暦» のこと。紀元前46年に古代ローマのユリウス・カエサルが制定したもので、1年を厳密に365+1/4日として数えるもの。現在の «西暦» は、1582年に制定された «グレゴリウス暦» のことで、ユリウス暦(ロシア暦)とはだいたい100年で1日のズレが生じる。
 西欧諸国がユリウス暦を廃してグレゴリウス暦を使うようになった後もロシアがユリウス暦を使い続けたため、いつの間にかロシア暦という言い方が生じただけのこと。そのロシアでも、1918年にユリウス暦を廃してグレゴリウス暦に移行した。
 ただし、ロシア正教会はいまでもユリウス暦(ロシア暦)を使い続けている。このためロシアではクリスマスは12/25ではなく1/7。
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ロシアン・ティー
紅茶の銘柄のことではなく、飲み方のこと。日本で «ロシアン・ティー» と言えば、紅茶にジャムを入れて飲む、と認識されている。しかしこれは必ずしも正しくない。ロシアでは、一般的に紅茶とジャムは別々に出され、ジャムをスプーンですくって舐めながら紅茶を飲む。
 もともとロシアでは紅茶は単独で飲むものではなく、ジャム、ケーキ、クッキー等と一緒に嗜むものだった。だから «ロシアン・ティー» とは言うが、特別な飲み方でも何でもない。ロシア人は自分たちの飲み方を «ロシアン・ティー» などと呼ばない。
ロシアン・ブルー
猫の品種のひとつ。ヨーロッパ・ロシア原産の品種であり、ロシア人が「ネコ」と言った場合に連想するのがこれ。«ブルー» と言うが、体毛は灰色。スタイルはほっそりしており、尾は長い。ちなみに現ロシア領に固有の種としては、ほかにサイベリアンとクリリアン・ボブテイルがいる。
ロシアン・ルーレット
リボルバー(回転式拳銃)を使ったゲーム。シリンダーに1発だけ弾を込めてシリンダーを適当にまわし、こめかみに銃口を当てながら引き金を引くもの。通常シリンダーには5発から6発の弾丸が込められるため、死の確率は1/5か1/6。
 その名からロシアが発祥の地だとされることが多いが、事実は不明。強制的なものであれば犯罪性が高いし、自発的なものであっても実行者が死んでしまったりするため、表面化することは少なく、ほとんど記録に残っていない。
ロジェストヴェンスキー ゲンナディー
1931-。指揮者。正確にはロジュデーストヴェンスキイ。ボリショイのオケ(1964-70)やヴィーン(1980-82)をはじめ、ソ連・ロシアやヨーロッパ各地の楽団を指揮している。同時にモスクワ音楽院で教えてもいる。«爆演» 系の指揮で知られるが、聴衆を盛り上げるパフォーマンスはロシアの指揮者の中でも一番だろう。
ロジェストヴェンスキー ジノーヴィー
1848-1909。海軍軍人。日露戦争における日本海海戦のロシア側司令官。
露介
ろすけ。ロシア人に対する蔑称。もともとはロシア語でロシア人を意味する русский(ルースキイ)が日本語で訛ったものであり、特に侮蔑的な意味はなかったと思われる。
ロストロポーヴィチ ムスティスラフ
1927-2007。チェリスト。ソルジェニーツィンを擁護したため、1974年に事実上亡命した。ワシントン・ナショナル交響楽団の指揮者としても活躍。1990年に帰国。
ロドチェンコ アレクサンドル
1891-1956。ロシア・アヴァンギャルドを代表するデザイナー。
ロバチェフスキー ニコライ
1792-1856。数学者。非ユークリッド幾何学を «発見»。
ロマノフ家
ロシアの皇帝家(1613-1917)。後世にはプロイセン出身という伝説がつくられたが、史実の上では14世紀前半から続くモスクワ貴族。早くも14世紀後半には有力貴族となっており、16世紀にはイヴァン雷帝の最初の妃アナスタシーヤを輩出。その血縁もあって、モスクワ系リューリク家が断絶した際にはその甥フョードル・ロマーノフが後継ツァーリの候補と目された。その後 «スムータ(動乱)» を経て、1613年にフョードルの子ミハイールが全国会議でツァーリに選ばれる。
 ロマーノフという家名は、厳密に言うと、フョードル・ロマーノフ兄弟の子孫に限定される。この一族は、1761年の女帝エリザヴェータの死で、男系が断絶する。彼女の後を継いだピョートル3世は姉の子で、史家の中にはこれ以降を «ロマーノフ・ホルシュタイン=ゴットルプ家» と呼ぶことがある。
ロモノーソフ ミハイル
1711-65。ロシア人が誇る «万能の天才»。質量保存の法則を発見し、«熱素» を否定し、金星に大気を発見し、オーロラの現象を科学的に解明し、『ロシア語文法』を執筆し、数多くの詩を残してロシア詩を理論的にも実作面でも発展させ、モスクワ大学を創立した。

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最終更新日 16 11 2016

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