И01:形容詞の特殊な形
次の会話を見てみよう。
A : 「『カラマーゾフの兄弟』って面白い1?」
B : 「ぼくは面白い2と思ったけど」
C : 「『罪と罰』の方が面白い3よ」
B : 「えー。『カラマーゾフ』面白い2けどなあ」
C : 「いや、面白1くないとは言わないよ。ただ比較したら『罪と罰』の方が面白い3でしょ、って話」
B : 「まあ、『罪と罰』確かに面白い2けどね」
A : 「で、結局『カラマーゾフ』面白い1の?」
ここには「面白い」という形容詞が8回使われているが、日本語ではこれらは何ら区別されない。実際、この8つの「面白い」を分類しろ、と言われたら、たいていの日本人は戸惑うばかりだろう。ところがロシア人は、この8つの「面白い」を次の3種類に分ける。
- 普遍的・絶対的な話として、そもそもこの小説が面白いかどうか
- 個人的な印象・好みの話として、「ぼくにとって」この小説が面白いかどうか
- 別の小説と比較した上で、どちらの方が面白いか
この分類に基づいて、「面白い」を表す интересный という形容詞も3種類に形を変える。
- Рома́н интере́сный.
- Рома́н интере́сен.
- Рома́н интере́снее.
どうでもいいことだが、個人的には『罪と罰』より『カラマーゾフの兄弟』の方が面白いが、それこそ人それぞれ。
同じような例。
A : 「奥さん元気2?」
B : 「元気2だよ。ちょっと前まで風邪引いてたんだけどね」
A : 「へえ、珍しい。奥さんもともと元気1な人だよね」
B : 「風邪引いたのも数年振りだとか言ってたしね」
A : 「きみもいつも元気2だし、夫婦そろって元気1だよね」
B : 「いやあ、前ほど元気3でもないよ。病気こそしないけど、からだ中ガタがいってるよ。きみの方がよっぽど元気3だよね」
A : 「少なくともいまは元気2だけどね」
この8つの「元気」も、ロシア語文法は次の3種類に分ける。
- 本来的・体質的な話として、そもそも元気な人かどうか
- 瞬間的に見て、いま現在病気をしているかどうか
- 以前、あるいは他人と比べて元気かどうか
これにともない、「元気」という意味の здоровый という形容詞を3種類に変化させる。
- Жена́ здоро́вая.
- Жена́ здоро́ва.
- Жена́ здоро́вее.
以上、ふたつの例を見てみた。このような形容詞の分類を、文法用語で言うとそれぞれ
- 長語尾
- 短語尾
- 比較級
となる。
長語尾というのは、これまで学んできた形容詞の形、使い方である。ということで、これから形容詞短語尾と比較級について学んでいこう。