З04:I 式 7
наде́яться(不完) ⇔ ―(完)
- на+対格・動詞不定形・従属文を希望する・期待する・当てにする
※наде́жда(女性名詞)希望
※надёжный(形容詞)信頼できる・頼りになる
現在形・命令形の変化形式は、いわば «削除型» である。つまり、不定形から末尾の -ть だけでなくその前の -я- も削除する。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | наде́юсь | наде́ялся | |
女 | наде́ялась | |||
ты | 男 | наде́ешься | наде́ялся | наде́йся |
女 | наде́ялась | |||
он | 男性名詞 | наде́ется | наде́ялся | ||
она | 女性名詞 | наде́ялась | |||
оно | 中性名詞 | наде́ялось | |||
мы | наде́емся | наде́ялись | ||
вы | наде́етесь | наде́йтесь | ||
они | 名詞の複数形 | наде́ются |
- Мо́жно наде́яться на твою́ по́мощь? 「きみの助けを当てにしていい?」
- Ди́ма наде́ется то́лько на себя́. 「ディーマは自分しか当てにしていない」
- Наде́юсь получи́ть письмо́ от тебя́. 「きみの手紙(をもらうこと)を期待している」
- Я́ наде́ялся встре́тить её на вокза́ле. 「ぼくは駅で彼女に会えると思っていた」
- Наде́юсь, что ты́ вернёшься за́втра. 「明日には戻ってくるんでしょうね?」
- На бо́га наде́йся, а са́м не плоша́й. 「神を当てにしろ、だが自分でヘマをするな」=「天は自ら助くる者を助く」
- а という接続詞は、「しかし」という逆接の接続詞と認識されることが多い。それは決して間違いではないが、それでは но との区別がつかない。
но は文字通りの逆接の接続詞である。前の文を否定して後の文に続ける場合(当然、前の文を肯定して後の文を否定する場合も)に典型的に使われる。いずれにせよ、前と後とが相反することを示すのが基本的な役割だ。
これに対して а は、前と後を対比させる場合に用いる。前と後とが意味的に対立するとは限らない。
もちろん、このふたつの使い分けは必ずしも厳密ではない。「家の中は暖かいが外は寒い」という場合、どちらを使ってもいい。а を使えば、単に「中」と「外」、「暖かい」と「寒い」を対比させているだけになる。но を使うと「家の中は暖かい」に続く文が、これとは反する内容であることを示す。 - どうでもいい話だが、「天は自ら助くる者を助く」とは、聖書の一節でも何でもない。もともとは古代ギリシャ(ギリシャ神話の神々を信仰していた人々)の成句らしい。だから「天」とはゼウスやアポロを指したのだろう。英語では17世紀にはこのフレーズが使われていたようだが、原典があるわけでもないので様々なバリエーションがある。おそらく最も有名なのは "God helps those who help themselvs." だが、日本ではサミュエル・スマイルズ著『西国立志編 Self-help』の一節 "Heaven helps those who help themselvs." の翻訳から広まったので、「神」ではなく「天」と訳されるのが一般的になっている。ロシアには、この成句は直接入っていないし、広まってもいない。
- а という接続詞は、「しかし」という逆接の接続詞と認識されることが多い。それは決して間違いではないが、それでは но との区別がつかない。
а(接続詞)(AとBを対比させる時に使う)
плоша́ть(不完) ⇒ оплоша́ть(完)ヘマをする(口語)
смея́ться(不完) ⇔ ―(完)
- 笑う(声に出して笑う・笑い顔になる)
- над+造格を嘲笑する・あざ笑う
※сме́х(男性名詞)笑い(声)
※смешно́й(形容詞)笑える・滑稽な・おかしい
※смешно́(副詞)滑稽に、笑える(述語)
現在形・命令形の変化形式は、これまた «削除型» である。不定形から末尾の -ть だけでなくその前の -я- も削除する。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | смею́сь | смея́лся | |
女 | смея́лась | |||
ты | 男 | смеёшься | смея́лся | сме́йся |
女 | смея́лась | |||
он | 男性名詞 | смеётся | смея́лся | ||
она | 女性名詞 | смея́лась | |||
оно | 中性名詞 | смея́лось | |||
мы | смеёмся | смея́лись | ||
вы | смеётесь | сме́йтесь | ||
они | 名詞の複数形 | смею́тся |
- О́н смея́лся. 「かれは笑った/笑っていた」
- Не сме́йся. 「笑うなよ」
- Лу́чше не смея́ться над чужо́й бедо́й. 「ひとの不幸を笑わない方がいいよ」
- Над ни́м смея́лись. 「かれは笑われた」
оде́ться(完)
⇔ одева́ться(不完) ※変化形式は I 式規則変化
- (服を)着る ※着る服は в+前置格で示す。
※оде́жда(女性名詞)衣類
現在形・命令形の変化形式は、いわば «追加型» である。不定形から末尾の -ть を削除し、代わりに -н- を加える。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | оде́нусь | оде́лся | |
女 | оде́лась | |||
ты | 男 | оде́нешься | оде́лся | оде́нься |
女 | оде́лась | |||
он | 男性名詞 | оде́нется | оде́лся | ||
она | 女性名詞 | оде́лась | |||
оно | 中性名詞 | оде́лось | |||
мы | оде́немся | оде́лись | ||
вы | оде́нетесь | оде́ньтесь | ||
они | 名詞の複数形 | оде́нутся |
- Сейча́с оде́нусь. 「いま支度しちゃうから」
- Мину́тку. О́н одева́ется. 「ちょっと待って。かれ身支度してるから」
- Она́ всегда́ тепло́ одева́лась. 「彼女はいつも暖かい格好をした」
одеться は「着る」だが、одеваться も「着る」である。完了体動詞 одеться が表すのは、たとえば裸の上に何か衣服を着て、着終えることである。これに対して不完了体動詞 одеваться が表すのは、そこにいたる過程で「着ている最中(着替え中)」。あるいは反復で「いつも着る」。その他の意味を表すこともあるが、「着用済みの状態にある」という意味はない。「かれはいま服を着ている」が、「いま袖を通して、いまボタンを留めているところ」という意味なら одеваться が使える。しかし「いま服を着て出歩いている」という意味では、まったく別の言い方をする。
だから «Она всегда тепло одевалась.» はあくまでも「暖かい格好をした」であって、「暖かい格好をしていた」ではない。もっとも現実的にはこのふたつの区別に意味はないが。
では、「着用済みの状態にある」という意味を表現したい場合はどう言えばいいのだろうか。様々な言い方があり得るが、一番単純なのは в+前置格(服)。«Он в джинсах.»「かれはジーンズを履いている」。
разде́ться ⇔ раздева́ться(不完) ※不完は I 式規則変化
- 着ているものを脱ぐ・裸になる
- Раздева́йтесь. (冬場などで、来客にコートやオーバーを脱ぐよう促す言葉)
- Раздева́йтесь, е́сли жа́рко. 「暑ければ上着をお取りください」
- Это «дацуйдзё». Зде́сь раздева́ются. 「ここが『脱衣場』です。ここで着ているものを脱ぎます」
ста́ть(完)
- (座っている状態から)立つ ⇔ станови́ться(不完)
- 立ち止まる・停止する ⇔ станови́ться(不完)
- 造格になる ⇔ станови́ться(不完)
- 動詞不定形(不完了体)し始める
- 動詞不定形(不完了体)する(意図がある)
※становиться の変化形式は II 式。остановить とまったく同じ(アクセント移動・音韻交替も)。
これも現在形・命令形の変化形式は «追加型» である。不定形から末尾の -ть を削除し、代わりに -н- を加える。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | ста́ну | ста́л | |
女 | ста́ла | |||
ты | 男 | ста́нешь | ста́л | ста́нь |
女 | ста́ла | |||
он | 男性名詞 | ста́нет | ста́л | ||
она | 女性名詞 | ста́ла | |||
оно | 中性名詞 | ста́ло | |||
мы | ста́нем | ста́ли | ||
вы | ста́нете | ста́ньте | ||
они | 名詞の複数形 | ста́нут |
- Ста́нь! 「起立!」
- Станови́сь! 「立ち止まっていろ」=「整列!」
- Часы́ ста́ли. 「時計が止まった」
- Я́ ста́ну больши́м поли́тиком. 「ぼくは偉い政治家になる」
- この文の политиком、次の文の взрослой、さらにその次の красивой と、いずれも造格になっている。これは стать|становиться が造格を要求するからだが、同時に造格の用法でもある。この造格の用法については、後で改めて確認する。
- Ты́, разуме́ется, уже́ ста́ла взро́слой. 「きっと君はもう大人になっているんだろうね」
- Ты́ ста́нешь краса́вицей. 「きみは美人になるよ」
- すでに何度か見たが、完了体の現在形は、話者・筆者の確信「〜するはずだ」を示すことがある。
- Серёжа ста́л меша́ть Ка́те занима́ться. 「セリョージャはカーテャの勉強を邪魔し始めた」
- Ми́ша ста́л чита́ть на дива́не. 「ミーシャはソファの上で読書を始めた」
- Я́ не ста́ну тебе́ отвеча́ть. 「お前に答えてやるつもりはない」
поли́тик(男性名詞)政治家(性不問)
разуме́ется(挿入語)もちろん・当然・当たり前
краса́вица(女性名詞)美女
вста́ть(完) ⇔ встава́ть(不完) ※不完は I 式不規則(-авать)
- 立ち上がる・起立する
- 起床する・起きる
оста́ться(完) ⇔ остава́ться(不完) ※不完は I 式不規則(-авать)
- 残る・とどまる
- 造格のままである
отста́ть(完) ⇔ отстава́ть(不完) ※不完は I 式不規則(-авать)
- 取り残される・遅れる
уста́ть(完) ⇔ устава́ть(不完) ※不完は I 式不規則(-авать)
- 疲れる
закры́ть(完)
⇔ закрыва́ть(不完) ※変化形式は I 式規則変化
- 対格をとじる・しめる
※закры́тие(中性名詞)閉鎖
※закры́тый(形容詞)閉じられた・閉まった、非公開の
現在形・命令形の変化形式は、いわば «交替型» である。不定形から末尾の -ть を削除し、さらに -ы- を -о- と交替させる。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | закро́ю | закры́л | |
女 | закры́ла | |||
ты | 男 | закро́ешь | закры́л | закро́й |
女 | закры́ла | |||
он | 男性名詞 | закро́ет | закры́л | ||
она | 女性名詞 | закры́ла | |||
оно | 中性名詞 | закры́ло | |||
мы | закро́ем | закры́ли | ||
вы | закро́ете | закро́йте | ||
они | 名詞の複数形 | закро́ют |
- О́н закрыва́ет воро́та. 「かれは門を閉じつつある/かれは門を閉じる」
- О́н закрыва́л две́рь. 「かれはドアを閉じた/閉じつつあった」
- О́н закры́л две́рь. 「かれはドアを閉じた」(だからいまドアは閉まっている)
- Закро́й тетра́дь. 「ノートを閉じなさい」
- На э́то нельзя́ закрыва́ть глаза́. 「このことに目をつむってはいけない」
закры́ться(完) ⇔ закрыва́ться(不完) ※不完は I 式規則変化
- とじる・しまる
- ─ Осторо́жно. Две́ри закрыва́ются. 「お気をつけください。ドアが閉まりつつあります」(メトロのアナウンス)
- Окно́ само́ закры́лось. 「窓がひとりでに閉まった」
- Э́тот магази́н закры́лся в во́семь. 「この店は8時に閉店した」
откры́ть(完) ⇔ открыва́ть(不完) ※不完は I 式規則変化
- 対格をひらく・あける
※откры́тие(中性名詞)開くこと・開けること、開始・開幕・開設・開会、発見
※откры́тый(形容詞)開かれた、見通しの利く、公開の、露出された・むき出しの
※откры́тка(女性名詞)ハガキ ※ロシアでは基本的に絵ハガキ
- Откро́йте, пожа́луйста, о́кна; мне́ жа́рко. 「窓開けてください。暑いんで」
- Открыва́йте две́рь. 「どうぞ(ドアを開けてください)」
- 命令形で完了体動詞を使うか不完了体動詞を使うか、ふたつの判断基準がある。
- 体そのものの意味・用法
- 命令形に独特の違い
- 命令形で完了体動詞を使うか不完了体動詞を使うか、ふたつの判断基準がある。
- О́н откры́л ро́т. 「かれは口を開け(て発言し)た」
- Ле́на откры́ла другу́ю буты́лку. 「レーナは新しいビンを開けた」
- Она́ сра́зу откры́ла письмо́. 「彼女はすぐに手紙を開封した」
- Ты́ са́м откро́й себе́ доро́гу. 「自分の道は自分で切り拓け」
- ロシア語はこういう場合、「自分の道を свою дорогу」ではなく「自分に道を себе дорогу」と言う。
- Све́та напра́сно откры́ла зо́нтик. 「スヴェータは傘を開いたが役に立たなかった」
напра́сно(副詞)無駄に・むなしく
зо́нтик(男性名詞)傘
откры́ться(完) ⇔ открыва́ться(不完) ※不完は I 式規則変化
- ひらく・あく
- Две́рь пло́хо открыва́ется. 「(この)ドアはなかなか開かない」
- Из окна́ открыва́лся прекра́сный ви́д. 「窓の外には素晴らしい光景が開けていた」
- Сим-сим, откро́йся! 「開け、ゴマ」
- сим-сим とは、アラブ語で「ゴマ」らしい。日本語と同様、英語でも "Open, sesame!" と意訳するのが普通だが、ロシア語では音訳しているわけである。もっとも、ロシア語でも意訳して «Сеза́м, откройся!» とするバージョンがある。どうやらこのフレーズ、日本ほど一般的ではないように思われる。
もっとも、どうでもいい話だが、(いまのところ)このセリフの原典はアラブ語ではない。『アリ=ババ』のアラブ語原典はいまだに発見されておらず、このエピソードは『千一夜物語』の仏語訳者アントワーヌ・ガランの創作だという説もあるそうだ。このセリフも、だから、原典はフランス語で «Sésame, ouvre-toi!»。そう考えると、«Сим-сим, откройся!» というのは訳としてはおかしい。
- сим-сим とは、アラブ語で「ゴマ」らしい。日本語と同様、英語でも "Open, sesame!" と意訳するのが普通だが、ロシア語では音訳しているわけである。もっとも、ロシア語でも意訳して «Сеза́м, откройся!» とするバージョンがある。どうやらこのフレーズ、日本ほど一般的ではないように思われる。
пе́ть(不完) ⇔ спе́ть(完)
- 対格を歌う
※пе́сня(女性名詞)歌
現在形・命令形の変化形式は、これも «交替型» である。不定形から末尾の -ть を削除し、さらに -е- を -о- と交替させる。
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | пою́ | пе́л | |
女 | пе́ла | |||
ты | 男 | поёшь | пе́л | по́й |
女 | пе́ла | |||
он | 男性名詞 | поёт | пе́л | ||
она | 女性名詞 | пе́ла | |||
оно | 中性名詞 | пе́ло | |||
мы | поём | пе́ли | ||
вы | поёте | по́йте | ||
они | 名詞の複数形 | пою́т |
- Она́ поёт хорошо́. 「彼女は歌がうまい」
- Ма́ма пе́ла пло́хо. 「ママは音痴だった」
- Спо́й «Сте́ньку Ра́зина». 「『ステンカ・ラージン』歌ってよ」
- 歌のタイトル «Стенька Разин» を対格にしている。このように、歌や本、映画などのタイトルを格変化させるかさせないかには、微妙な法則がからむので、ここでは省略。基本は格変化させるものと思っておこう。
- Ча́йник поёт. 「やかんが鳴ってるよ」
- Са́ша всегда́ поёт с чужо́го го́лоса. 「サーシャはいつも他人の声から歌う」=「サーシャはいつも他人の尻馬に乗る」
- Кто́ тебе́ пе́л в у́ши? 「だれがお前の耳に歌いかけたんだ?」=「誰がお前にあることないこと吹き込んだんだ?」