Г19:「〜を」
対格の変化語尾
先ずは対格語尾について確認しておこう。
名詞の対格
- 単数形
- 単数主格が -а で終わる名詞 ⇒ 単数主格末尾の -а の代わりに -у : Алекса́ндра ⇒ Алекса́ндру
- 単数主格が -я で終わる名詞 ⇒ 単数主格末尾の -я の代わりに -ю : Анастаси́я ⇒ Анастаси́ю
- 単数主格が -ь で終わる女性名詞 ⇒ そのまま(主格と等しい) : ма́ть ⇒ ма́ть
- それ以外
- 動物名詞/活動体名詞 ⇒ 単数生格と等しい : му́ж ⇒ му́жа
- 非動物名詞/不活動体名詞 ⇒ 単数主格と等しい : но́ж ⇒ но́ж
- 複数形
- 動物名詞/活動体名詞 ⇒ 複数生格と等しい : подру́га ⇒ подру́г
- 非動物名詞/不活動体名詞 ⇒ 複数主格と等しい : бума́га ⇒ бума́ги
実に単純である。対格独自の語尾があるのは、女性名詞の単数だけである。
主格末尾の文字 | 単数 | 複数 | |
---|---|---|---|
1 | -а | -у | 動は生 非動は主 |
2 | -я | -ю | |
3 | -ь (女) | -ь | |
4 | その他 | 動は生 非動は主 |
代名詞・形容詞の対格
人称代名詞の対格は、人称代名詞だけに、すべて動物名詞扱いされ、生格に等しい。
単数 | 複数 | ||
---|---|---|---|
一人称 | меня́ | на́с | |
二人称 | тебя́ | ва́с | |
三人称 | 男性 | его́ | и́х |
中性 | |||
女性 | её |
単数 | 複数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
女性 | 男性 | 中性 | ||||
単数 | 一人称 | мою́ | 動は生 非動は主 | |||
二人称 | твою́ | |||||
三人称 | 男性 | его́ | ||||
中性 | ||||||
女性 | её | |||||
複数 | 一人称 | на́шу | 動は生 非動は主 | |||
二人称 | ва́шу | |||||
三人称 | и́х |
単数 | 複数 | |||
---|---|---|---|---|
女性 | 男性 | 中性 | ||
硬変化 | -ую | 動は生 非動は主 | ||
軟変化 | -юю |
直接目的語「〜を」
対格とは、本来的に «直接目的語» を表現する格である。ゆえに、基本的に日本語の「〜を」に対応する。
- Мо́жно смотре́ть телеви́зор. 「TV見てもいいよ」
- На́до чита́ть кни́ги. 「(複数の)本を読まなければならない」
- На́до прочита́ть кни́гу. 「一冊の本(この本)を読み終えてしまわなければならない」
- прочитать は完了体だから、「読むことを完了する」ことを意味する。しかも про- という接頭辞にはそもそも「〜し通す」という意味がある。よってこの場合「読み終える」、「最後まで読み通す」という意味になる。
- Тру́дно изуча́ть ру́сский язы́к. 「ロシア語の勉強(ロシア語を勉強すること)は大変だ」
- Тру́дно изучи́ть ру́сский язы́к. 「ロシア語をマスターすることは大変だ」
- изучить は完了体だから「ロシア語の勉強を完了する」ことを意味する。「ロシア語の勉強を完了する」とは、「ロシア語をマスターする」ことにほかならない。
#69 対格は「〜を」を意味する。
とはいえ、現実にはすべての「〜を」が対格で表現されるわけではない。
- Глу́по боя́ться тако́й ма́ленькой соба́ки. 「こんな小さなイヌを怖がるなんてバカげている」 ⇒ 「〜を」は生格
- На́до ему́ помо́чь. 「かれを手伝わなければならない」 ⇒ 「〜を」は与格
- ちなみに помочь は完了体動詞だから、「いつも手伝いをしなければならない」という意味ではなく、「いま目の前の状況を助けてやらなければならない」という意味。
- Тру́дно бы́ло упралвя́ть студе́нтами. 「学生たちを統率するのは大変だった」 ⇒ 「〜を」は造格
- Лу́чше посмотре́ть на часы́. 「時計を見た方がいい」 ⇒ 「〜を」は前置詞+対格
глу́по(述語副詞)愚かだ・バカげている
боя́ться(不完了体動詞) ⇔ ×(完了体動詞)生格を怖れる
тако́й(指示代名詞)こんな・そんな・あんな
ма́ленький(形容詞)小さい
упралвя́ть(不完了体動詞) ⇔ ×(完了体動詞)造格を操縦・管理・運営する
逆に、対格がすべて日本語の「〜を」に当たるわけではない。
- Хорошо́ бы́ло встре́тить его́ по доро́ге. 「途中でかれに会えて良かった」 ⇒ 対格は「〜に」
- Лу́чше поблагодари́ть судьбу́. 「運命に感謝した方がいい」 ⇒ 対格は「〜に」
- Пока́ нельзя́ тро́гать скаме́йку. 「まだベンチに触れてはならない」 ⇒ 対格は「〜に」
встре́тить(完了体動詞) ⇔ встреча́ть(不完了体動詞)対格に会う
доро́га(女性名詞)道
※по дороге で「途中で」「行きがけに」
поблагодари́ть(完了体動詞) ⇔ благодари́ть(不完了体動詞)対格に感謝する
судьба́(女性名詞)運命
пока́(副詞)いまのところ・さしあたり
тро́гать(不完了体動詞) ⇔ тро́нуть(完了体動詞)対格に触れる
скаме́йка(女性名詞)ベンチ
単純に言えば、これは個々の動詞の支配(使い方)の問題である。ゆえに、動詞ごとに辞書で確認をするしかない。