ロシア学事始ロシア語講座初級

ロシア語講座:初級

Г07:付随情報の示し方

「見る」とか「貸す」、「帰る」、「決める」、「信じる」など、動詞は通常、単独で用いられてもあまり意味をなさない。「かれを見る」、「母に手を貸す」、「家に帰る」、「開催を決める」、「かれの勝利を信じる」など、付随する情報があって初めて使われるものである。
 動詞だけではない。述語副詞も同様で、「暑い」にしても「今日は暑い」、「都合がいい」にしても「ぼくにとっては都合がいい」、「静かだ」にしても「通りが静かだ」、等々、やはり付随する情報が示されるのが、多くの場合は一般的である。「静かだ」だけで済まされるのは、「どこが」が話者・筆者と聞き手・読み手との共通認識になっている場合だけであろう。
 このような付随情報の表現の仕方には、単純に言って大きく4通りある。

  1. 動詞の不定形 : 動作そのものを示す
  2. 副詞 : 述語や文全体にかかわる状況を示す
  3. (前置詞+)名詞・代名詞・形容詞の «斜格» : 述語、主語、文全体などにかかわる状況を示す
  4. (接続詞+)文

 このうちいずれを用いるかは、究極的には個々の単語の用法の問題である。しかも支配する側の単語の用法であるだけでなく、支配される側の単語の用法でもある。文法の問題ではない。辞書でいちいち確認すべき事柄である。
 とはいえ、基本的には日本語の区別と同じである。

 文を使った方法は先の話。まずはそれ以外の3通りについて学んでいこう。

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動詞+動詞の不定形

 動詞の不定形を要求する述語副詞については、すでに見た。
 ここでは動詞の不定形を要求する動詞について確認する。

#57 動詞の中には、動詞の不定形を支配して「〜することを〜する」という意味になるものがある。

 これは文法の問題ではなく、個々の動詞の用法の問題であり、ゆえにいちいち辞書で確認しなければならない。とはいえ、ロシア語と日本語でさほどズレがあるわけではないので、常識的な範囲でかなり対処できる。たとえば次のような動詞が、動詞の不定形と結合する。

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 問題は、それぞれの動詞が要求する不定形が完了体か不完了体か、である。これにはふたつの要素がある。

  1. 動詞そのものの要求
    • 完了体を要求 : успеть (「時間内に〜してしまう」ということだから、必ず完了体)
    • 不完了体を要求
      • 動作の開始・終了など : кончить、начать、перестать、продолжить
      • 動作の能力など : привыкнуть、(уметь)、(учить)、(учиться)
  2. 体の意義 : その他

 たとえば начинать | начать という動詞は、不定形として、常に不完了体動詞を要求する。

これは кончать | кончить も同じである。要するに、начинать | начать、あるいは кончать | кончить という動詞そのものが、不完了体動詞を要求するということだ。
 他方、решать | решить の場合、特に要求が限定されていないので、不完了体動詞も完了体動詞も使えるが、それぞれで意味が異なる。

 動詞そのものの要求は、個々の動詞ごとに覚えるしかないので、いちいち辞書で確認する必要がある。これに対して体の意義による使い分けは、辞書には何ら記述されていないので、体の意義・用法をしっかり理解して自分で判断していくしかない。

#58 支配される動詞の不定形が完了体か不完了体かは、支配する動詞の用法と体の意義のふたつの要素により決まる。

 なお、語順は、「DすることをCする」という場合にはCDの順。

  1. помо́чь реши́ть
  2. реши́ть помо́чь

では、どちらの動詞がどちらの動詞を支配しているのか、わかりづらい。現実には、ほとんどの場合、支配する側の動詞が語尾変化するなどして、区別がつかないでもないが、述語副詞とともに用いられて支配する側の動詞も不定形で用いられたりすると、動詞の不定形がふたつ並んでしまうことになる。
 通常は、1. では、前に置かれた помо́чь が後に置かれた реши́ть を支配し、「реши́ть することを помо́чь する」。つまり、「決めることを手伝う」とかいう意味になる。
 2. は逆だから、「помо́чь することを реши́ть する」。つまり、「手伝うことにする」というのが一般的だ。

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to 不定詞と動名詞

 英語をご存知の方のために言っておく。
 英語には to 不定詞と動名詞との区別があり、動詞によって to 不定詞を取る場合と動名詞を取る場合とで意味がまったく異なることがある。
 ロシア語には to 不定詞も動名詞も存在しない。そのため、英語とはまったく異なる言い回しが用いられる。

日本語書き忘れる
(書くという行為をし忘れる)
書いたことを忘れる
(書いたという事実を忘れる)
英語forget to writeforget writing
ロシア語забыть писатьзабыть + 文
日本語タバコを吸うために(していることを)やめるタバコを吸うことをやめる(=禁煙する)
英語stop to smokestop smoking
ロシア語останови́ться, чтобы кури́тьпереста́ть кури́ть

このように、ロシア語の動詞の不定形が、英語の to 不定詞に相当するのか動名詞に相当するのか、場面ごとに異なる。また、どちらにも相当しない場合もある。英語との対比で理解するのではなく、英語を一旦忘れてロシア語独自の論理を理解することが重要である。

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最終更新日 20 03 2015

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