Г03:動詞の不定形
述語副詞には、動詞の不定形と結合するものがある。そこで先ずは、動詞の不定形について確認しておこう。
ロシア語では、動詞は語尾変化する。そのうち、辞書の見出しになっている形を «不定形» と呼ぶ。«不定詞» とか «不定法» とか呼ぶ人もいる。
動詞の不定形の語尾は、次のパターンしかない。
- -ть
- 母音+ть
- -ать : ду́мать、сказа́ть、чита́ть
- -еть : ви́деть、лете́ть
- -ить : говори́ть、стро́ить、тра́тить
- -оть : коло́ть
- -уть : дви́нуть、ду́ть
- -ыть : бы́ть、плы́ть
- -ять : взя́ть、стоя́ть、та́ять
- 子音+ть
- -зть : ле́зть
- -сть : е́сть、кла́сть、се́сть
- 母音+ть
- -ти́
- идти́ およびその派生語の -йти́
- -зти́ : везти́
- -сти́ : вести́、нести́、расти́
- -чь
- -е́чь : бере́чь、же́чь、ле́чь、пе́чь、се́чь、те́чь
- -о́чь : мо́чь、помо́чь
#46 動詞の不定形は語尾が決まっている。
言うまでもないが、名詞にも同じ語尾になるものがあるので、混同しないように。
- крова́ть ベッド(女性名詞)
- ве́сти お知らせ(女性名詞複数形)
- ре́чь 話(女性名詞)
問題(?)はふたつある。
- さまざまな接頭辞と結合することで、派生的な動詞が無数に生み出される
- -ть,-ти́,-чь の後に -ся がつく動詞がある
接頭辞
乱暴に言うと、英語で動詞+副詞で表現する意味を、ロシア語では接頭辞+動詞で表現する。
英語 | ロシア語 | |
---|---|---|
行く | go | ходить |
入る | go into | входить |
出る | go out | выходить |
去る | go away | уходить |
通る | go through | проходить |
迂回する | go around | обходить |
このため、覚えるべき単語の数は英語よりはるかに増えるが、覚えるべき内容は変わらない。
英語の副詞を覚えるのと同じで、ロシア語では接頭辞を覚えれば、接頭辞+動詞でつくられた無数の動詞の意味が、おぼろげながらも理解できる。たとえば в- という接頭辞は、いくつもの意味があるが、そのひとつに「内部へ入る・入れること」がある。
- ходи́ть 行く ⇒ входи́ть 入る
- вести́ 導く ⇒ ввести́ 導き入れる
- ли́ть 注ぐ ⇒ вли́ть 注ぎ込む
- тяну́ть 引く ⇒ втяну́ть 引き入れる
という具合である。
個々の接頭辞について覚えるのは中級以上になってからの話になろうが、この原理は理解しておいて損はない。
#47 基本的な動詞に接頭辞がつくことで様々な動詞が派生していく。
ся 動詞
おしりに -ся がついている一群の動詞がある。これを便宜上 «ся 動詞» と呼ぶ。
ся 動詞には次のような特徴がある。
- 既存の動詞に -ся がついて、まったく別の動詞としてつくられた。当然意味も別。
- 勝手につくることはできない。
- もとの動詞が現存しないものもある(ごく少数)。
- 当然、ся 動詞を持たない動詞も数多い。
- -ся は必ず動詞の一番おしりにつく。
- 直前が母音だった場合は、-ся ではなく -сь になる。
例を挙げてみる。
-ся がつかない動詞 | -ся がつく動詞 |
---|---|
звуча́ть | - |
та́ять | - |
нача́ть | нача́ться |
спа́ть | спа́ться |
верну́ть | верну́ться |
явля́ть | явля́ться |
прийти́ | прийти́сь |
- | смея́ться |
- | боя́ться |
-ться の場合、発音は цца /ʦːə/ となる。тьс が同化して ц /ʦ/ になるので、я が硬音 а になる。と同時に、なぜか /ʦ/ が長子音化(二重子音化)するため、このような発音になるのである。強いて日本語で書くと「ッツァ」。
意味や用法はさまざまなので、とりあえず「こういう形の動詞もある」ということが理解できれば、いまは十分。ただし覚える際には、もとの動詞とは別物として独自に覚えよう。
#48 -ся は必ず語末につく。
#49 子音の後で -ся、母音の後で -сь。
どうでもいいが、«ся 動詞» という言い方は日本人独特のもの。ロシア人は «再帰動詞» と呼ぶ。