ロシア学事始ロシア語講座初級

ロシア語講座:初級

В18:だった/だろう

ここまで学んできたロシア語は、すべて «現在時制» であった。

 日本語というのは、いささか時制というものに無頓着な気がする。それとも人によるのだろうか。
 時制という概念の説明は省くとして、単純に言えば過去・現在・未来の区別のことである。ロシア語を含むヨーロッパの言語は、これを動詞の変化で示す。
 ところが、これまで見てきたロシア語の文には、そもそも動詞が存在しなかった。だから時制は示されていないのだが、動詞が存在しないことが現在時制を示している、と考えることができる。

左のカタコトの日本語は、すべて現在時制を表している。同様に、動詞を持たない右のロシア語もすべて現在時制である(ちなみに右のロシア語はすべてカタコトではない)。

#36 時制は動詞によって示される。動詞のない文は現在時制である。

 しかしこのようなロシア語も、過去時制と未来時制を示すためには、動詞が必要になる。英語で言う be 動詞である。ロシア語でこれに相当するのが быть という動詞である。быть の過去形を挿入することで過去時制が、未来形を挿入することで未来時制が示される。
 быть という動詞は、ただ単に時制を示すためだけに用いられる。独自の意味はない。とりあえず現段階では、そう理解しておいて問題ない。

#37 動詞のない文で過去・未来を示すには、быть を挿入する。

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быть の語形変化

 動詞は、主語が何か、に応じて語形変化する。быть の語形変化は、次のとおりである。

単数複数
過去形男性бы́лбы́ли
女性была́
中性бы́ло /бы́ла/
未来形一人称бу́дубу́дем
二人称бу́дешьбу́дете
三人称бу́детбу́дут

 быть という動詞は、このように、過去形と未来形とで異なるパラダイムに従って変化する。これを主語ごとに細かく図式化すると、次のようになる。

主語быть の変化
過去未来
単数ябы́лбу́ду
была́
тыбы́лбу́дешь
была́
он / 男性名詞単数бы́лбу́дет
она / 女性名詞単数была́
оно / 中性名詞単数бы́ло
複数мыбы́либу́дем
выбу́дете
они / 名詞複数бу́дут

 では、これまで見てきた文に、これを挿入してみよう。
 確認しておくが、「AはBだ」という文ではAが主語である。つまり、быть の変化形はAが何であるかに従う。

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1. 機械的に挿入するだけでいい文

 実は、過去時制や未来時制にするに際して быть の変化形をただ機械的に挿入すればいい文は、ほとんどない。
 ここでは所有代名詞を述語とする文をここに分類したが、厳密に言えばこれすら、過去時制や未来時制にするに際して考慮が必要となる場合がある。とはいえ、とりあえずいまの段階では、所有代名詞を述語とする文には「機械的に быть の変化形を挿入すればいい」と理解しておいていい。

名詞/人称代名詞 + 所有代名詞

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2. 文法的に注意が必要な文

指示代名詞 + 名詞

 これは、形式的には「AはBだ」であり、Aが主語であるから、動詞の変化はAに従うはずである。ところが、Aが指示代名詞 это の場合だけは例外で、AではなくBに従う。

#38 「AはBだ」において、Aが это の場合、述語動詞の変化はBに従う。

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3. 多少の考慮が必要な文

 これ以外のあらゆるパターンの「AはBだ」が、実は、過去時制・未来時制にするに際して多少の考慮が必要になる。
 その際、その「多少の考慮」がどのようなものなのかが問題なわけだが、まだ学んでいない文法を用いることになるので、とりあえず以下、何も考えずに機械的に быть の変化形を挿入してみた。これでもロシア人に通じないではない。
 ということで、いまの段階では、「AはBだ」を過去時制・未来時制で言いたい場合には、後で学ぶことになる文法事項を用いるべきか否か、という判断が常に求められる、ということだけはしっかり認識しておいていただきたい。

#39 「AはBだ」の過去時制・未来時制は、意味合い次第で、быть の変化形を機械的に挿入するだけでは済まない。

 以下、機械的に挿入したため、意味がおかしな文がある。それは日本語で考えてもわかるだろう。その意味でも以下の例文は、便宜的なものでしかない。быть の変化形の使い方が確認できれば、いまはそれで十分だ。

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名詞 + 名詞

 このパターンについては、否定と同じように、─ が消える点、留意すべし。

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人称代名詞 + 名詞

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名詞/人称代名詞 + 形容詞

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主語が вы の場合

 このように、вы が単数の意味でも、動詞は были ないし будете である。

#40 単数を意味する вы が主語の場合、述語が動詞であれば複数形。

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否定

 否定の仕方は、すでに述べたとおり。否定の小詞 не は否定すべき単語の直前に置かれるが、普通の文ではそれは述語(動詞)であるから、быть の変化形の前に挿入すればいい。
 注意すべきは、быть の過去形の否定では、アクセントの位置が特殊だ、という点である。

単数複数
過去男性не́ былне́ были
女性не была́
中性не́ было

 ちなみに、言うまでもないとは思うが、疑問文はすでに見たとおり。

  1. 口頭では、特殊なイントネーションで発音する。
  2. 文字では、文末を「 . 」や「 ! 」ではなく「 ? 」にする。

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最終更新日 28 02 2015

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