ロシア学事始ロシア語講座初級

ロシア語講座:初級

В09:名詞は名詞だ

ここまで、「AはBだ」という形式の文を見てきた。
 改めて確認しておくと、ロシア語ではこの場合、AとBをただポンと並べて置くだけ。それ以外には何も必要がない。
 ただし、次のような場合は少し事情が異なる。すなわち、文法用語を使うと、AもBもともに名詞の場合である。

  1. Оте́ц ─ инжене́р. 「父はエンジニアです」
  2. Мо́й сы́н ─ студе́нт. 「うちの息子は大学生です」
  3. Росси́я ─ широ́кая страна́. 「ロシアは広い国だ」

#15 「AはBだ」のAB双方が名詞の場合、間に ─ を挿入する。

 2. の場合はAの сын を мой が、また 3. の場合はBの страна を широкая が、それぞれ修飾している。しかしこの修飾語を取っ払ってしまうと、«Сы́н ─ студе́нт.»(息子は大学生です)、«Росси́я ─ страна́.»(ロシアは国だ) となり、名詞+名詞である。
 このように、骨格部分が名詞+名詞であれば、それに修飾語がつくかつかないかは関係ない。

 現在のロシア国歌は、次のように始まっている。

Росси́я ─ свяще́нная на́ша держа́ва, 「ロシアは聖なるわれらの国である」
Росси́я ─ люби́мая на́ша страна́. 「ロシアは愛するわれらの国である」

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AとBの性の不一致

 すでに見たように、ロシア語は性の区別にうるさく、形容詞の語尾は性によって変化する。Aが名詞、Bが形容詞の場合は、形容詞の語尾は名詞の性に応じて変わる。
 ところがA、Bともに名詞の場合、性を一致させることができる場合とできない場合とがある。

#16 AB双方が名詞の場合、性を一致させることができる場合とできない場合とがある。

 性を一致させることができる場合とは、性によって名詞が違う場合である。これは人を表す名詞を使う場合である。

 これに対して、性を一致させることができない場合とは、人以外を表す名詞を用いる場合である。

 人を表す名詞であっても、性による区別がない場合は、AとBの性が一致しない。むしろ、肩書きについては一致しないことの方が多い。

 さらに、話の流れからして次のような場合にも性が一致しない。

учи́тель には対応する ♀ を表す名詞 учи́тельница が存在する。しかし特に性を意識せずに漠然と「教師」と言う場合には、男性名詞を用いる(かつて教師が男性ばかりだった頃の名残り)。結果としてこのような文になる。

 さて、こうなると、容易に想像がつくように、

  1. A(名詞)+B(形容詞)
  2. A(名詞)+B(形容詞+名詞)

とで、同じ形容詞でも語尾が違う、ということが起こる。

  1. Москва́ краси́вая. 「モスクワは美しい」
  2. Москва́ ─ краси́вый го́род. 「モスクワは美しい都市だ」

1. では красивая は述語であり、主語 Москва に対応しているので、変化語尾が女性形になっている。これに対して 2. では красивый は修飾語であり、述語は名詞 город である(あるいは красивый город 全体で述語)。красивый は город を修飾しているので、これに対応して男性形になっている。
 当たり前のことだが、念のために確認しておいた。

 もうひとつ、確認しておく。

ここで問題としたいのは、日本語「プーチンは偉大だ」は「名詞+名詞」の形をとっているが、ロシア語の方は「名詞+形容詞」である、という点である。当たり前のことだが、日本語の品詞とロシア語の品詞は常にイコールというわけではない。

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最終更新日 28 02 2015

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