Б05:感謝と謝罪
ありがとう
感謝を表明する表現は、特に堅苦しい言い回しがこのほかに山のようにある。
- Спаси́бо.
- おそらく日本人でも、「スパシーバ」というカタカナは見た・聞いたことがある人がいるだろう。ちなみに、「ありがとう」と「ありがとうございます」の区別はロシア語にはない。
「本当に」と強調したい場合は、большо́е を前か後につける(«Большое спасибо.»/«Спасибо большое.»)。
「ありがとう」というのは通常「あなた/君」に対して言うべきセリフであり、ゆえに日本語でもそうだが、別に「あなたに/君に」を明示する必要はない。それでも言いたければ、«Спасибо ва́м.»、«Спасибо тебе́.» という言い方もある。前者が вы、後者が ты に対して(この区別はもう大丈夫だろうか)。
これをひっくり返して «Вам спасибо.»、«Тебе спасибо.» と言うこともある。こちらはやや特殊なニュアンスが生じて、イントネーション次第(Вам、Тебе を高く発音して)では「あなたにこそありがとう」、つまり、「ありがとう」に対する「こちらこそ」といった感じで使われる。 - Благодарю́ ва́с.
- 直訳すると「あなたに感謝します」。英語の "Thank you."、ドイツ語の "Danke." そのまま。ただしロシア語では、«Спаси́бо.» より改まった感じ。
вы に対して使う。ты に対しては «Благодарю́ тебя́.» と言う。
すみません
- Извини́те.
- Прости́те.
- このふたつの区別はつかなくていい。どちらも英語の "Excuse me." に相当し、「すみません」、「ごめんなさい」を意味する。日本語の「すみません」や「ごめんなさい」も、ちょっと肩がぶつかった場合にも、何か重大な過失をしでかしてしまった場合にも使われるが、このふたつのロシア語も同様である。もっとも、深刻な謝罪の場合には別の表現もあるが、われわれが使うことはないだろう(もし使うことがあるとしても、ロシア語がある程度できないと意味がない)。
なお、このふたつはどちらも相手が вы の場合である。ты の場合は、おしりの「-те」が省略されて、それぞれ «Извини.» と «Прости.» となる。相手が ты の場合に «Извини.» や «Прости.» となるので、たとえば真剣さや申し訳なさを表現しようと思って ты の相手に «Извините.» とか «Простите.» と言ったりしても(日本人はそういうことをしがちだが)、意味がない(どころか、相手に誤解されかねない)。
どういたしまして
感謝や謝罪の言葉に対してどう応えるかだが、教科書や参考書などによっては、以下の表現について、「これは感謝に対して」、「これは謝罪に対して」と区別するものもあるが、大雑把に言えばあまり関係ない。どちらに対しても使える、と思っておいていい。
- Не́ за что. /не́ за што/
- ひとつの単語のように発音される。原義は、感謝であれ謝罪であれ、それに値するようなことは何もない、ということでなる。「それには及びません」といった感じ。
- Не сто́ит.
- 原義からすると、感謝であれ謝罪であれ、それには値しません/そうする(していただく)価値はありません、ということ。これまた「それには及びません」。
- Ничего́. /ничиво́/
- 時候のあいさつでも出てきたが、本来は「何もない」。つまり「大したことではない」、「構わない」、「平気だ」というようなニュアンス。だからこれまた「ありがとう」に対しても「すみません」に対しても普通に使われる。もっとも、多少くだけた感じか。
『こねこ』という映画では、子猫ティグラーシャが壊してしまった食器だか花瓶だかを直しながら、おばあちゃんがブツブツと «Ничего́, ничего́...» と独り言をつぶやいている。
発音に注意。 - Пожа́луйста. /пажа́лыста/
- 意味は普通に「どういたしまして」。「ありがとう」に対しても「すみません」に対しても普通に使える。
また、この言葉はほかの意味でも使われる。代表的なのが、人に何か勧める際の「どうぞ」、また何かお願いする際の「どうか〜〜してください」。つまり英語の "please" である。
つまりこの言葉ひとつで様々な場面に対応することができるわけだ。それらの使い方も含めて、ぜひ覚えておこう。
ただし発音は特殊。-уй- が /ы/ と発音されるのである。こんな発音はこの пожа́луйста だけ。