ロシア学事始

ヨーロッパとアジア

ロシアの領土は、西の4分の1がヨーロッパ、残る東の4分の3がアジアに属する。

ヨーロッパとアジアの境界

 学術的に言うと、ヨーロッパとアジアの境界については、確定していない。ヨーロッパとアジアが同じ巨大なユーラシア大陸のそれぞれ一部でしかないのだから、両者間の境界線をどこに引くかは、所詮便宜的なものでしかないからだ。
 とはいえ、エーゲ海からダルダネルス海峡、マルマラ海、ボスフォロス海峡、黒海に抜けるラインは古来境界線として定着しているし、こんにちでは、ウラル山脈が境界線をなすという点にもおそらく異論は存在しないだろう。問題は、黒海とウラル山脈南部とを結ぶラインをどこに引くか、である。

 ロシア人は自らをヨーロッパ人と認識している。当然、自分たちの国はヨーロッパだと思っている。もちろん、だからと言ってシベリアまでもヨーロッパに含めて考えているロシア人などいない。
 ロシア人にとっての «祖形» は、イヴァン雷帝の時代の国家である。カザン・ハーン国とアストラハン・ハーン国を併合したイヴァン雷帝の国家が、ヨーロッパ国家としてのロシアの領域を定めたと考えてきた。ゆえに、その後に併合したシビル・ハーン国(シベリア)や北カフカーズはアジアと見なされてきた。つまり、ここでもウラル山脈がヨーロッパとアジアの境界線と認識されている。
 むしろこの認識は、ロシア人にならって西欧人が18世紀に取り入れた、と言ってもいいだろう(それ以前はいわば空白地であった)。

 黒海とウラル山脈とを結ぶラインについては、古くはケルチ海峡からアゾーフ海を経て、ドン河を遡るラインがヨーロッパとアジアの境界線と考えられていた(その先はつまり空白地)。
 ロシア人はアストラハン・ハーン国までをヨーロッパ、その南はアジアと認識しており、ドン河口部から南東にカーブしてカスピ海に抜けるラインを境界線と考えていた。この考えも西欧人に取り入れられ、現在でも支持されている。
 しかし北カフカーズ地方にロシア人が浸透していくにつれ、この境界線も南下する。こんにち、同様に広く支持されているのが、カフカーズ山脈の南北でヨーロッパとアジアを分けるという認識である。カフカーズ山脈にあるエリブルース山がヨーロッパの最高峰とされることが多いが、これはこの認識に基づいている。
 結局、北カフカーズ地方がヨーロッパに属するのかアジアに属するのか、異なる見解が存在している、ということだ。もっとも、一般的にロシア人は北カフカーズ地方はヨーロッパだと認識しているように思う。それでも北カフカーズの少数民族のことはアジア系と認識しているようで、ここら辺、ロシア人自身アンビヴァレントである。

 なお、細かい話をすると、ウラル山脈の南部についても諸説ある。こんにち最も一般的なのは、ウラル山脈からそのまま南下し(少し西によれて)カスピ海に抜ける、というものだろう。カザフスターンはその一部がヨーロッパに属するということになる。

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ヨーロッパ・ロシアとアジア・ロシア(シベリア・極東)

 ヨーロッパに属するロシア領を、日本語では一般的に «ヨーロッパ・ロシア» と呼ぶ。ただしこのような言い方はロシア語には存在せず、せいぜい «ロシアのヨーロッパ部分» とでも言うしかない。
 他方アジアに属するロシア領については、«アジア・ロシア» みたいな言い方は日本語にもロシア語にも存在しない。そこでこの «ロシアのアジア部分» をまとめて «シベリア・極東» と呼んでいる。

 ウラル山脈は、大雑把に言って東経 60° の線上に南北に走っている。東経 30° から東経 60° までの 30° の間に、ロシアのヨーロッパ部(ヨーロッパ・ロシア)の大部分が含まれている。
 一方、ロシアの西端は西経 170° である。つまりロシアのアジア部は、東経 60° から西経 170° までの 130° の間に広がっている。
 距離からすると1:4以上だが、面積的にはほぼ1:3である。
 ちなみに、ロシアの東端は同時にアジアの東端でもある。他方、アジアの西端はすなわちトルコの西端であり、おおよそ東経 25°。つまり経度から言うと、ロシアはアジアとほぼ同じだけ東西に広がっているということになる。
 なお、ここまでの話では «飛び地» のカリーニングラード州を無視してきたが、その西端はおおよそ東経 20° である。

 ちなみにここで人口について述べておくと、正確な数字は面倒なので計算していないが、ロシアのヨーロッパ部の人口とアジア部の人口とを比べると、概算で4:1となる。ロシアの人口密度は低いが、それもこれもアジア部の人口密度が希薄なせいである。ヨーロッパ部だけを見れば、ロシアの人口密度はさほど低くはない。

 最後に。
 面積的にヨーロッパに占めるロシア(ヨーロッパ・ロシア)の割合は実に 40% 近くにも達する。ヨーロッパの半分近くがロシア領だ、ということだ。
 他方、アジアに占めるロシア(シベリア・極東)の割合は、おおよそ 30%。アジアもまたその3分の1近くがロシア領だ、ということになる。別の言い方をすると、アジアの 30% がシベリア・極東だ、ということだ。

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最終更新日 10 07 2011

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