ロシア学事始ロシアの言語

ウラル語族

ウラル山脈が故地と考えられたためこう名付けられたが、地理的には大きくウラル系とバルト系に分けられる。

 下位グループについては諸説あり、まだ確定していないようだ。伝統的には大きくサモエード語派とフィン・ウゴル語派に分けられる。しかしサモエード語派、フィン語派、ウゴル語派に分ける考えもあり、さらにサモエード語派とウゴル語派とをあわせて東方系とし、西方系のフィン語派と対比させる考えもある。
 フィン・ウゴル語派は伝統的にフィン語派とウゴル語派に分けられてきたが、ウゴル語派、バルト語派、ヴォルガ語派、ペルミ語派、サーミ語に分ける説もある。

 サーミ語はスカンディナヴィア半島北部で、バルト系はフィンランド、エストニア、ロシアのバルト海沿岸部などで、そしてマジャール語はハンガリーで話される。しかしそれ以外の言語は、基本的にロシアにしか話者が存在しない。

 話者総数は、世界的には 25 000 000人という数字が挙げられることがある。ロシアでは 2 076 290人(そのほとんどがフィン語派)、総人口の 1.43% である。

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フィン語派

 上記のように、フィン語派の位置づけや分類については諸説あるが、ここでは伝統的な上掲の表に従って話を進める。
 フィン語派の各言語の分布地域は、その名称が示している。すなわち、バルト系はバルト海沿岸部に、ヴォルガ系はヴォルガ中流域に、ペルミ系はその東側(ウラル山脈の西側)に分布している。名称からはわからないサーミ語は、ロシア北極圏のコラ半島からノルウェー、フィンランド、スウェーデンにかけて広がる。
 その地理的分布からもわかるように、ヴォルガ系とペルミ系はロシア以外には話者がいない。バルト系はフィンランドとエストニアというふたつの独立国家の主要言語となっており、その話者もほとんどが両国に住んでいるが、しかしその一方で、イジョラ語、ヴェプシ語、ヴォート語の話者はほとんどロシアにしかいないし、カレリア語話者も大多数がロシア国民である。すなわち、大雑把に言ってフィン語派に属する言語の多くがロシアに «土着» の言語だと言える。
 もっとも、話者人口は話が別である。世界的には、フィン語が 6 000 000 程度、エストニア語が 1 100 000 程度、サーミ語が 30 000 程度と、いずれもかなり幅のある数字ではあるが、単純集計で 7 130 000 となる。これにロシアにおける話者数を加えて、9 000 000 から 10 000 000 といったところがフィン語派の世界的な話者総数となろう。見てわかるとおり、その半数以上がフィン語話者であり、そのほとんどがロシア国外にいる。
 ロシアにおける話者人口は、正確には 2 016 688人。総人口に占める割合は 1.39% である。ちなみに、この半分以上をヴォルガ系のマリ語とモルドヴァー語が占め、残りのほとんどをペルミ系のウドムルト語とコミ語が占める。

言語名話者数民族名民族人口
1モルドヴァー語614 260モルドヴァー人977 381
2マリ人604 298
草原マリ語451 033草原マリ人56 119
山岳マリ語36 822山岳マリ人18 515
3ウドムルト語463 837ウドムルト人636 906
4コミ語217 316コミ人309 013
5コミ=ペルミャーク語94 328コミ=ペルミャーク人125 235
6カレリア語52 880カレリア人93 344
7フィン語51 891フィン人34 364
8エストニア語26 645エストニア人28 310
9ヴェプシ語5 753ヴェプシ人8 240
10サーミ語787サーミ人1 991
11ヴォート語774ヴォート人73
12イジョラ語362イジョラ人327

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ウゴル語派

 «ウゴル» とは、ユグラ地方のこと。ユグラ地方とは大雑把に言ってウラル山脈北部であり、この地方にてかつてロシア人はハントィ人やマンシ人と接触した。こんにちでは、ロシアのウゴル語派の話者は、ウラルの東部、西シベリアのオビ中・下流域に分布している。おかしなところにいるのがハンガリー語話者であり、これは9世紀の «民族大移動» の結果である。こんにちロシアにいるハンガリー語話者は、言うまでもなく9世紀以前から残っている人々などではない。
 話者総人口は、世界的には 15 000 000 程度と見られているが、そのほとんどがハンガリー語話者である。ロシアでは 26 026人(総人口の 0.018%)。

言語名話者数民族名民族人口
1ハントィ語13 568ハントィ人28 678
2ハンガリー語9 712ハンガリー人3 768
3マンシ語2 746マンシ人11 432

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サモエード語派

 «サモエード» という言葉は、少なくともロシア語として捉えれば、«サモ(自分)» + «エード(食)» であり、«自らを食らう者» と理解できる。このためロシア語では、こんにちは «サモエード» ではなく «サモディー» という言葉が使われている。
 もっとも、«サモエード» という言葉の語源は実ははっきりせず、ロシア語ではない、とする説もある。

 サモエード諸語は伝統的に北部語群と南部語群に分けられているが、これは現在の地理的分布に基づくものであり、«系譜» とは無関係である。もっとも、その分布もほぼ西シベリア北部に限定されている。このためロシア人の一般的な認識としては、サモエード諸語の話者は、パレオアジア諸語の話者と同じ «シベリアの民族» である。しかしその中で、圧倒的多数を誇るネネツ人はヨーロッパ・ロシアの北部にまで進出している。
 民族としてサモエード語派に属する言語を話す民族はロシア国内にしかおらず、例外的な国外居住者を無視すれば、サモエード語派の言語を話す者は2002年の時点で全世界でたった 33 576人ということだ。ちなみにこれは、ロシアの総人口の 0.023% になる。

言語名話者数民族名民族人口
1ネネツ語31 311ネネツ人41 302
2セリクープ語1 641セリクープ人4 249
3ンガナサン語505ンガナサン人834
4エネツ語119エネツ人237

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最終更新日 24 11 2011

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