ロシア学事始ロシアの言語

インド=ヨーロッパ語族

ドイツ語などでは «インド=ゲルマン語族» と呼ばれることもある。インドの諸言語とヨーロッパの諸言語とを東西の代表として結んだ名称である。

 最大規模の言語グループ。
 話者総人口は 2 500 000 000 を越えるとも言われる。ただしこれは母語としての話者であり、第二・第三言語として習得した者も含めると、その数はおそらく人類の半数以上に達するだろう。
 その分布も、ヨーロッパ、シベリア・極東、インド、ペルシャ、南北アメリカ大陸、アフリカ、オセアニア等、文字通り地表のほとんどを覆っている。しかしこれは近代植民地主義の遺産であり、元来はヨーロッパ、ペルシャ、インドが主な分布地であった。中世までは中央アジアもインド=ヨーロッパ語族の言語がほぼ排他的に話されていた地であり、こんにちほどではないにせよ、分布が広い地域に広がっていたことは変わりない。
 文字資料の出現も古く、アフロ=アジア語族ほどではないにせよ、3500年以上遡ることが可能である。

 インド=ヨーロッパ語族は最も研究が進んでいるが、それでも細かい分類については異説も多い。ごく大雑把に一般論と思われるものを図式化すると、以下のようになる。

 インド=ヨーロッパ語族がもともとどこに存在したかは、現在でも共通認識が成立していないが、そもそも文字資料のない時代の言語を扱うことに無理がある。一般的に、西はドイツ、東は中央アジア、中間を取って南ロシア・ウクライナからポーランド、という辺りが想定されている。
 紀元前2000年紀に入ると、ギリシャ人、アナトリア語派の諸族、アーリア人が、それぞれ南下。文字資料が登場した頃には、すでにほぼこんにちの地域に分布を完了していた(ただし地域内での移動は、ゲルマン民族大移動など、その後もある)。

 ロシアにおいては、その話者は合計すると 157 706 601人となる。これは総人口の 108.64% に達する。

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スラヴ語派

 スラヴ語派は東西南の3グループに分類される。西スラヴ諸語はポーランド、チェコ、スロヴァキア、ソルブ。南スラヴ諸語はセルビア、クロアティア、スロヴェニア、ブルガリア。東スラヴ諸語はロシア、ウクライナ、ベラルーシ。
 スラヴ語派は10世紀頃まで統一性を保っていたとも言われるが、中でも東スラヴ諸語はようやく13世紀以降に分化していったもので、長い間ウクライナ語とベラルーシ語はロシア語の方言と見なされていた。
 ロシアではロシア語が公用語であり、実際圧倒的多数の国民がロシア語を母語としている。それ以外の国民もロシア語を話すことができ、第二言語・第三言語として使用する者も含めると、ロシア語はほぼ全ロシア国民の使用する言語である。

 ロシアにおける話者総数は 144 855 402人である。これは総人口の 99.79% に相当する。

言語名話者数民族名民族人口
1ロシア語142 573 285ロシア人119 035 706
2ウクライナ語1 815 210ウクライナ人2 942 961
3ベラルーシ語316 890ベラルーシ人807 970
4ポーランド語94 038ポーランド人73 001
5ブルガリア語30 894ブルガリア人31 965
6チェコ語13 242チェコ人2 904
7セルビア語・クロアティア語9 674セルビア人4 156
8スロヴァキア語2 169スロヴァキア人568

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バルト語派

 バルト語派は、スラヴ語派とともにスラヴ=バルト語派をなす、とする考えが根強い。とはいえ、とうてい聞いて相互理解できるレベルではない。

 ロシアにおける話者人口は 83 779人にすぎず、総人口に占める割合も 0.058% と微々たるものである。

言語名話者数民族名民族人口
1リトアニア語49 020リトアニア人45 569
2ラトヴィア語34 759ラトヴィア人30 142

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ゲルマン語派

 ロシアには、9 890 193人の話者がいる。これは総人口の 6.81% に相当する。ヘブライ語はインド=ヨーロッパ語族ではなく、アフロ=アジア語族である。他方でイディッシュはドイツ語からつくられたユダヤ人語であり、ゲルマン語派に属する。2002年の国勢調査ではヘブライ語とイディッシュとを区別していないので、とりあえずここにも含めておいた。

言語名話者数民族名民族人口
1英語6 955 315イギリス人
アメリカ人
529
1 275
2ドイツ語2 895 147ドイツ人597 212
3ヘブライ語・イディッシュ30 019ユダヤ人229 938
4スウェーデン語7 113
5オランダ語2 599

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ロマンス語派

 ロマンス語派の言語は、単純化して言えばラテン語の方言である。

 ロシアにおける話者総数は 1 050 518人(総人口の 0.72%)。

言語名話者数民族名民族人口
1フランス語705 217フランス人819
2モルドーヴァ語147 035モルドーヴァ人172 330
3スペイン語111 900スペイン人
キューバ人
1 547
707
4イタリア語54 172イタリア人862
5ルーマニア語22 663ルーマニア人5 308
6ポルトガル語9 531

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ギリシャ語

言語名話者数民族名民族人口
1ギリシャ語56 473ギリシャ人97 881

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アルバニア語

 イリュリア語、ダキア語、トラキア語などの «末裔» とされることが多いが、いずれにせよ他の諸言語との関係がはっきりしていない。

 話者総人口は 7 600 000 程度と見られている。

言語名話者数民族名民族人口
1アルバニア語3 220

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アルメニア語

言語名話者数民族名民族人口
1アルメニア語904 892アルメニア人1 130 491

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イラン語派

 イラン語派は、紀元前2000年頃には南ロシアからカザフ・ステップにかけての地域に分布していたと考えられる(これはインド=ヨーロッパ語族全体の故地とも想像される)。ちょうどこの頃、同じ地域に発達していたアンドローノヴォ文化が、イラン語派とインド語派共通の文化だったのではないかとの説もある。
 やがてその話者は、紀元前2000年紀前半に南方イラン高原へと勢力を拡大。北方ではスキタイ、サルマティアという騎馬民族として名を馳せ、南方ではオリエント世界を統一するペルシャ帝国を建設した。しかし紀元が前から後に移ると、ウクライナ、南ロシア、カザフのステップ地方は徐々にテュルク系諸民族に奪われ、このためこんにちロシアにはイラン語派の言語は残っていない。

 こんにちのロシアで話されるイラン語派の言語は、カフカーズのオセート語、タルィシュ語、タト語を除けば、すべて «外国語» である。

 話者総数は 150 000 000 を越えると推定される。ロシアでは 689 061人(総人口の 0.47%)。

言語名話者数民族名民族人口
1オセート語493 610オセート人515 579
2タジク語131 530タジク人120 136
3クルド語36 609クルド人19 607
4ペルシャ語9 568イラン人3 821
5アフガン語8 580パシュトゥーン人9 800
6タルィシュ語5 310タルィシュ人2 548
7タト語3 016タト人2 303
8ルシャン語441
9バローチ語345
10シュグナン語52
11山岳ユダヤ語
12ブハラ・ユダヤ語

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インド語派

 話者総数は 1 500 000 000 程度と推定され、インド=ヨーロッパ語族で最大のグループとなっている。これはそもそもインドの人口が多いためだが、インド人がみなインド語派の言語を話しているわけではない。
 インド語派の言語を話す人々は、紀元前2000年紀初頭に中央アジアからインドに侵入。ガンジス流域にガンジス文明を築き、最古の文献『リグ・ヴェーダ』を遺した。

 ロシアにおけるインド語派の言語の話者は、所詮は «外国人» でしかない。ロマ(ジプシー)は例外的にロシアに «土着» の民族であり(もっとも16世紀頃?に移住してきた)、『黒い瞳』などはロシア民謡と見なされている。
 ロシアにおける話者人口は 173 063人(総人口の 0.12%)。

言語名話者数民族名民族人口
1ロマ語166 514ロマ人182 766
2ヒンディー語5 853インド人4 980
3ベンガル語696

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最終更新日 24 11 2011

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