ロシア連邦大統領 Президент Российской Федерации (Prezident Rossiyskoy Federatsii) はロシア連邦の国家元首である。
国民の直接投票により選出され、任期は6年。連続2期まで。
被選挙権を有するのは、過去10年間以上ロシアに恒常的に住む、35歳以上のロシア国民である。
現職
現在の大統領は、2012/05/07に就任したヴラディーミル・ヴラディーミロヴィチ・プーティン(第4代)。任期は6年(2018年まで)。
歴代大統領
就任 | 退任 | 氏名 | 生没年 | ||
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1 | 1991/07/10 | 1996/11/05 | エリツィン ボリース・ニコラーエヴィチ | 1931-2007 | 心臓手術のため一時的に権限を委譲 |
1996/11/05 | 1996/11/06 | チェルノムィルディン ヴィクトル・ステパーノヴィチ | 1938-2010 | 代行(首相) | |
1 | 1996/11/06 | 1999/12/31 | エリツィン ボリース・ニコラーエヴィチ | 1931-2007 | 辞任 |
1999/12/31 | 2000/05/07 | プーティン ヴラディーミル・ヴラディーミロヴィチ | 1952- | 代行(首相) | |
2 | 2000/05/07 | 2008/05/07 | プーティン ヴラディーミル・ヴラディーミロヴィチ | 1952- | |
3 | 2008/05/07 | 2012/05/07 | メドヴェーデフ ドミートリイ・アナトーリエヴィチ | 1965- | |
4 | 2012/05/07 | プーティン ヴラディーミル・ヴラディーミロヴィチ | 1952- |
副大統領
現在、副大統領 Вице-президент Российской Федерации (Vitse-prezident Rossiyskoy Federatsii) はいない。大統領が任期中に死亡した場合、病気等のため職務を遂行できない場合、解任された場合、辞任した場合には、首相が大統領代行を務める(ただし一部権限は付与されない)。
1991年の大統領制導入時には、副大統領が存在した。アメリカと同じく、大統領とペアで選挙され、任期は5年。1991年、アレクサンドル・ルツコーイがボリース・エリツィンの副大統領として就任。しかし1993年、新憲法制定により廃止された。このためアレクサンドル・ルツコーイはロシアで唯一の副大統領となっている。
権限
半大統領制
半大統領制とは、大統領制と議院内閣制の中間に位置する制度という意味でこう呼ばれる。
代表的な大統領制とはアメリカのもので、行政権は大統領にあり、行政府は大統領に率いられる。一方議院内閣制では、日本やイギリスがそうだが、立法府たる議会が行政府たる内閣に対して大きな権限を持ち、行政府(内閣)は大統領ではなく、議会の承認を得た(つまりは議会に支持された)首相が率いる。大統領がいても、ドイツやイタリアなどは議院内閣制と言っていい(大統領には儀礼的・象徴的役割しかない)。
半大統領制とは、強大な権限を持つ大統領と、議会の支持を必要とする内閣(首相)とが共存する制度である。フランスが典型的な例である。大統領の出身政党が議会選挙で敗北し、反対政党が議会の過半数を握れば、大統領と首相(内閣)がそれぞれ対立する政党の出身ということになる。
半大統領制においては、基本的に憲法上の規定はないものの、対外的な国家主権の行使の中心となる外交と軍事を大統領が、内政を首相(内閣)が担うのが一般的である。
政府との関係
ロシア連邦憲法によれば、ロシアにおける行政権は政府に属する。しかし現実には行政権は大統領と政府とで分担されている。大統領の管轄する省庁は、内務省、外務省、国防省、司法省、非常事態省などである(詳細は政府の項を参照のこと)。
政府は議会ではなく大統領に対して責任を負う。
大統領は首相の任命権を有する(ただし国家ドゥーマの承認が必要)。
大統領は閣僚の任免権を有する(ただし首相が提案)。
大統領は内閣総辞職の決定権を有する。
大統領が不在の場合、首相がその職務を代行する。
議会との関係
ロシア連邦憲法によれば、ロシアにおける立法権は議会に属する。しかし現実には、大統領は大統領令を発布することで事実上の立法権を持っていると言える。また、議会の可決した法案は、大統領が署名しなければ効力を持たない。つまり、大統領には事実上の拒否権がある。
大統領は国家ドゥーマの解散権を有する。ただしいつでも発動できるわけではない。条件については議会の項を参照のこと。
国家ドゥーマは大統領を弾劾する権限を有し、それに基づき連邦ソヴィエトは大統領を解任する権限を有する(ただしそれぞれ過半数ではなく3分の2の賛成が必要)。
大統領は国家ドゥーマへの法案の提出権を有する。
裁判所との関係
憲法裁判所判事、最高裁判所判事、最高調停裁判所判事の任命権を有する(ただし連邦会議の承認が必要)。
最高検事の任免権を有する(ただし連邦会議の承認が必要)。
その他の権限
国民投票の実施。
中央銀行総裁の任免権(ただし国家ドゥーマの承認が必要)。
大使の任免権(ただし連邦議会の該当委員会と事前協議が必要)。
外交政策の実施。
外交交渉権と条約署名。
ロシア連邦軍最高総司令官。
軍の最高司令部の任免権。
軍事ドクトリンを承認。
軍事状態の発令権(ただし連邦議会に事後通告が必要)。
非常事態の発令権(ただし連邦議会に事後通告が必要)。
大統領令
大統領令 Указ Президента Российской Федерации (Ukaz Prezidenta Rossiyskoy Federatsii) とは、大統領が独自の権限で発することのできる «法律» である。たとえば、現在の国旗・国歌・紋章は、いずれももともと大統領令で定められた。
ただし法的性格を持たない大統領令もある。たとえばフィギュア・スケーター川口悠子がロシア国籍を取得した際、最終的にそれを認めたのはメドヴェーデフ大統領の大統領令である。
大統領令は、憲法と連邦法に抵触しない限り、大統領の権限の範囲内の事柄について発することができ、憲法、連邦法に次ぐ法的拘束力を持つ。