フォークロアを一口で総括するのは難しいが、大衆の間で伝統的に受け継がれてきた習俗、説話、信仰や知識を指す。
ロシアのフォークロアとして、ここでは以下について述べる。
ことわざや俚諺、アネクドートなどは、ロシア語の知識がないと意味をなさないので、同じく童謡や子守唄、俗謡、あるいは子供の遊びや祭り、さらには民間芸能などのたぐいも、文字だけ読んでもおもしろくないので、いずれもここでは割愛する。また、民間医療のような «生活の知恵» 的なものは、筆者の知識不足からここでは紹介できない。
なお、ここではロシア民族を中心としたスラヴ人のフォークロアについて述べる。その他の少数民族については、これまた筆者の知識が追いつかないので割愛。
神話、ブィリーナ、民話それ自体の紹介はしない。神話はそもそも残っていないから、したくてもできない。ブィリーナは聞いてナンボであり、翻訳をここで紹介してもあまり意味がない気がする。うまく訳せないし。民話はアファナーシエフの『ロシア民話集』が岩波文庫でも出ているので、そちらを参照されたい。
ということで、ここでは人物(?)本位で紹介する。
ただし、あらかじめ断っておくと、ブィリーナや民話のように «原典» が存在する場合はいいが、神々や精霊には典拠とすべき決定的な文献資料が存在しない。たとえばスヴァローグという神は、ある解説書では天空の神とされ、別の解説書では火の神とされ、また炉の神、鍛冶の神、さらには豊穣の神とする解説書もある。これらは矛盾する神格ではないので統一的に理解することも可能だが、統一的に説明している文献もない。ここではとりあえず手持ちの文献(すべてロシア語)を基に、あくまで筆者なりに理解し整理した形で記述している。
原典の日本語訳
- 中村喜和編訳、『ロシア英雄物語』、1994、平凡社ライブラリー
- アファナーシエフ、中村喜和編訳、『ロシア民話集』上下、1987、岩波文庫