ロシア語概説:個数詞

количественное имя числительное

個数詞の変化

 1という数詞はロシア語では特殊で、どのような名詞と結合するかにより形を変える。その格変化、および用法からして、形容詞に似ている。それかあらぬか、科学アカデミー『現代ロシア語小便覧』(2010)は1を数詞ではなく形容詞に分類している。

1の形名詞の種類
оди́н男性単数оди́н мужчи́на
одна́女性単数одна́ маши́на
одно́中性単数одно́ де́рево
одни́複数одни́ сыновья́

 1に複数形がある、というのはおかしな話だが、これはロシア語の один が数詞ではなく形容詞だと考えれば何の問題もない。意味的にも、単に「1」という数を表す使い方だけではなく、特殊な用い方をされるためである。この「特殊な用い方」は文法の話ではなく один という単語の用法の話なので、ここでは省略(下で別途説明する)。

 2という数詞も、結合する名詞の種類により形を変える。これは、いまはなくなった双数という特殊な数の名残りである。

2の形名詞の種類
два́男性два́ стола́
中性два́ окна́
две́女性две́ ко́мнаты

格変化

 数詞は、他の名辞類と同じく、格変化をする。格変化をする条件は名詞と同じで、文中での役割や、動詞・形容詞・前置詞の要求などに従う。
 その場合、1と2は上掲のように結合する名詞により形を変えるので、各個数詞は以下のように変化することになる。

数詞変化条件変化の種類
格、結合する名詞の性・数24
格、結合する名詞の性12
それ以外6

 ただし、1の格変化は形容詞と同じく男性と中性の斜格は同じなので、実際には19通り(厳密に言うともっと少ない)。また2の格変化は、男性・中性と女性で共通なので、実質7通り(男性・中性と女性で形が異なるのは主格のみ)。
 さらに言うと、それぞれ対格は、名詞と同じように、結合する名詞が動物名詞か非動物名詞かによって主格や生格と等しくなる(ただし名詞とは異なる変化パターンをするので、詳細は以下)。

 格変化のパターンは、1は形容詞そのまま。2、3、4、40、90、100、1.5、150は特殊。それ以外は III 式の名詞型変化に順ずる(詳細は名辞類変化を参照)。さらに 50、60、70、80、200、300、400、500、600、700、800、900 は、これらの複合数詞を構成する単純数詞それぞれが別々に格変化をする。例として、50と800を挙げてみる。

50800
пят-ь-деся́твосем-ь-со́т
пят-и́-десят-ивосьм-и-со́т
пят-и́-десят-ивосьм-и-ста́м
пят-ь-деся́твосем-ь-со́т
пят-ью́-десят-ьювосем-ью-ста́ми
пят-и́-десят-ивосьм-и-ста́х

1 000、1 000 000、1 000 000、...

 これらの数を表す単語は、数詞ではなく名詞である。ゆえに、それぞれに性を有し、数・格の変化をする。すなわち тысяча は女性名詞であり、女性名詞としての格変化をする。単数造格には特殊な形があり得るが、これについては下で詳述する。миллион、миллиард などは男性名詞であり、男性名詞としての格変化をする。

個数詞と形容詞・名詞の結合

 ロシア語では、英語その他と異なり、数詞と形容詞・名詞をそのまま並べるだけでは意味をなさない。数詞と結合する場合、形容詞・名詞は以下のように特殊な格変化をする。どのような数詞と結合するかにより、形容詞・名詞の数・格が異なる。その意味で、数詞と形容詞・名詞の結合においては、実質的に「数詞が形容詞・名詞を支配する」と言える。
 なお、

数詞が主格

数詞形容詞名詞
単/複 主格単/複 主格
2・3・4複数 生格*単数 生格
5〜複数 生格

 * 「2(主格)+形容詞+女性名詞」という結合においては、形容詞は複数主格でもいい。

数詞が斜格

数詞形容詞名詞
単/複(数詞と同じ格)
2・3・4複数(数詞と同じ格)
5〜

 なお、対格の扱いは、名詞における扱いと異なる。すなわち、名詞は有生性により対格の形が異なる。単数男性・単数中性・複数の動物名詞は生格と、非動物名詞は主格と等しくなる(単数女性の対格は独自の語尾を持つ)。ところが数詞は、

 以上、主格・斜格をあわせて、次のように整理することができよう。

 1 один は、科学アカデミー『現代ロシア語小便覧』によれば数詞ではなく形容詞であるから、数詞+形容詞+名詞ではなく形容詞+形容詞+名詞という結合になる。ゆえに、один は性・数・格において完全に名詞に一致する。

動物名詞非動物名詞
男性名詞女性名詞中性名詞複数
оди́н отли́чный студе́нтодна́ отли́чная студе́нткаодно́ большо́е де́ревоодни́ больши́е дере́вья
одного́ отли́чного студе́нтаодно́й отли́чной студе́нткиодного́ большо́го де́реваодни́х больши́х дере́вьев
одному́ отли́чному студе́нтуодно́й отли́чной студе́нткеодному́ большо́му де́ревуодни́м больши́м дере́вьям
одного́ отли́чного студе́нтаодну́ отли́чную студе́нткуодно́ большо́е де́ревоодни́ больши́е дере́вья
одни́м отли́чным студе́нтомодно́й отли́чной студе́нткойодни́м больши́м де́ревомодни́ми больши́ми дере́вьями
одно́м отли́чном студе́нтеодно́й отли́чной студе́нткеодно́м большо́м де́ревеобни́х больши́х дере́вьях

2・3・4

 2・3・4の数詞と結合する場合、形容詞・名詞の格変化は非常に複雑。

名詞が動物名詞の場合名詞が非動物名詞の場合
複 生
複 主*
単 生две́ хоро́ших же́нщины
две́ хоро́шие же́нщины
複 生
複 主*
単 生два́ бе́лых до́ма
複 生дву́х хоро́ших же́нщин複 生дву́х бе́лых домо́в
複 与дву́м хоро́шим же́нщинам複 与дву́м бе́лым дома́м
複 生дву́х хоро́ших же́нщин複 生
複 主*
単 生два́ бе́лых до́ма
複 造двумя́ хоро́шими же́нщинами複 造двумя́ бе́лыми дома́ми
複 前дву́х хоро́ших же́нщинах複 前дву́х бе́лых дома́х

5〜

 5〜の数詞と結合する場合、形容詞・名詞は常に複数。また、有生性による区別(動物名詞・非動物名詞)は存在しない。

名詞が動物名詞の場合名詞が非動物名詞の場合
пя́ть лу́чших актёровпя́ть ста́рых зда́ний
пяти́ лу́чших актёровпяти́ ста́рых зда́ний
пяти́ лу́чшим актёрампяти́ ста́рым зда́ниям
пя́ть лу́чших актёровпя́ть ста́рых зда́ний
пятью́ лу́чшими актёрамипятью́ ста́рыми зда́ниями
пяти́ лу́чших актёрахпяти ста́рых зда́ниях

語順

 「数詞+名詞」という語順は、厳密な数字を表す。もちろん、文脈等により概数を表すこともあるのは、日本語と同じである。

 「名詞+数詞」という語順は、概数(「おおよそ・だいたい・約」)を表す。

1 000、1 000 000、1 000 000 000、...

 これらの数を表す単語は数詞ではなく名詞であるから、形容詞・名詞との結合は、通常の名詞と名詞の結合に等しい。ただし数を表すので、数は常に複数である。つまり、これら тысяча、миллион、миллиард などと結合する形容詞・名詞は常に複数生格である。тысяча、миллион、миллиард などが格変化をしても、これに結合する形容詞・名詞は複数生格のままである。

合成数詞

 数詞の一覧表(こちら)で掲げた以外の数を表すためには、個数詞(不定数詞などは除く)や名詞(千、百万、十億、等々)を組み合わせる。こうしてつくられるものを «合成数詞» と呼ぶ。この場合、合成数詞を構成する複数の単語全体をひとつの数詞と考える。

 合成数詞においては、одни は用いられない。

形容詞・名詞との結合

 合成数詞が形容詞・名詞と結合する場合、意味を持つのは合成数詞を構成する複数の数詞のうちの最後の数詞だけである。
 すなわち、21 двадцать один/одна/одно が形容詞・名詞と結合する場合、形容詞・名詞の扱いは один/одна/одно と結合する場合に等しい。つまり、形容詞・名詞はいずれも単数主格となる。22 двадцать два/две と結合する場合、形容詞は複数生格(名詞が女性名詞の場合は複数主格も可)、名詞は単数生格(つまり два/две と結合する場合に等しい)。25 двадцать пять と結合する場合、形容詞・名詞ともに複数生格(つまり пять と結合する場合に等しい)。

 тысяча、миллион、миллиард などは名詞であるから、数詞との結合において名詞と同じ格変化をする。当然、тысяча は女性名詞であるから、2 000 においては два ではなく две が用いられる。

格変化

 合成数詞の格変化においては、合成数詞を構成するすべての数詞が格変化する。
 結合する形容詞・名詞については、上で説明したことの応用。すなわち、形容詞・名詞の数・格は合成数詞の最後の数詞の要求に従う。

 ただし重要な特殊規則が存在する。すなわち、有生性による区別が、最後の数詞が один/одно の場合にしか現れなくなる(最後の数詞が одна の場合 = 女性名詞単数においてはそもそも区別がない)。それ以外の合成数詞では、常に対格は主格に等しい。つまり、合成数詞では、最後の数詞が один/одно の場合を除いて、動物名詞を非動物名詞扱いする、ということである。

結合する名詞が動物名詞結合する名詞が非動物名詞
один/одно(単独でも合成数詞末尾でも)数詞は生格に等しい数詞は主格に等しい
одни(単独でしか使われない)
одна(単独でも合成数詞末尾でも)数詞は対格
2・3・4単独数詞は生格に等しい数詞は主格に等しい
合成数詞末尾数詞は主格に等しい
5〜単独
合成数詞末尾

個数詞と形容詞・名詞(まとめ)

 以上、あらゆる個数詞の形容詞・名詞との関係をまとめると、以下のようになる(下表以外は類推すべし)。

有生性
11名詞の性に従属名詞の数に従属名詞の格に従属区別あり
21, 31, 41, 51, 61, 71, 81, 91
101, 121, 131, 141, 151, 161, 171, 181, 191
201, 221, 231, 241, 251, 261, 271, ...
名詞・形容詞は常に単数
22名詞の性に従属主格では名詞は単数
斜格では名詞は複数
形容詞は常に複数
名詞・形容詞の格を支配
(主格では生格)
(斜格では同じ格)
22, 32, 42, 52, 62, 72, 82, 92
102, 122, 132, 142, 152, 162, 172, 182, 192
202, 222, 232, 242, 252, 262, 272, ...
区別なし
3, 43, 4名詞の性と無関係区別あり
23, 33, 43, 53, 63, 73, 83, 93
103, 123, 133, 143, 153, 163, 173, 183, 193
203, 223, 233, 243, 253, 263, 273, ...
24, 34, 44, 54, 64, 74, 84, 94
104, 124, 134, 144, 154, 164, 174, 184, 194
204, 224, 234, 244, 254, 264, 274, ...
区別なし
5-5, 6, 7, 8, 9, 10
11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20
25, 26, 27, 28, 29, 30
35, 36, 37, 38, 39, 40
45, 46, 47, 48, 49, 50
55, 56, 57, 58, 59, 60
65, 66, 67, 68, 69, 70
75, 76, 77, 78, 79, 80
85, 86, 87, 88, 89, 90
95, 96, 97, 98, 99, 100
105, 106, 107, 108, 109, 110
111, 112, 113, 114, 115, 116, 117, 118, 119, 120
125, 126, 127, 128, 129, 130
135, 136, 137, 138, 139, 140
145, 146, 147, 148, 149, 150
155, 156, 157, 158, 159, 160
165, 166, 167, 168, 169, 170
175, 176, 177, 178, 179, 180
185, 186, 187, 188, 189, 190
195, 196, 197, 198, 199, 200
205, 206, 207, 208, 209, 210
211, 212, 213, 214, 215, 216, 217, 218, 219, 220
225, 226, 227, 228, 229, 230
235, 236, 237, 238, 239, 240
245, 246, 247, 248, 249, 250
255, 256, 257, 258, 259, 260
265, 266, 267, 268, 269, 270
275, 276, 277, 278, 279, 280, ...
名詞・形容詞は常に複数
1 0001 000, 2 000, 3 000, ...名詞・形容詞は常に生格

 ただし 1 000 тысяча については、名詞であるか数詞であるか、意識の面で揺らぎが見られる。
 たとえば形容詞・名詞との結合において、文法的には「名詞+名詞」であるから、тысяча と結合する形容詞・名詞は常に複数生格であり、これは тысяча が格変化をしても変わりはないはずである。しかし特に口語においては、тысяча の格変化にあわせて、これと結合する形容詞・名詞を格変化させることがある。
 また、тысяча の単数造格は тысячей だが、時に тысячью が使われることがある。тысячью という形は、個数詞の格変化(пятью、шестью、семью、...)の影響で生じたもので、тысяча を個数詞的に用いる場合に現れる。「個数詞的に用いる場合」とはどういう場合かと言うと、тысяча 単独で用いられる場合である。одна тысяча は個数詞と結合しているため、この造格は одной тысячей となる。

個数詞および数詞的名詞について若干の問題

 上述のように、ロシア語では один に複数形がある。これは один に「1」以外の意味・用法があるからである。

 少々極端に言えば、ロシア語では один は、複合数詞か、上掲のような特殊な意味・用法か、いずれかでしか使われない(もうひとつ、複数形しかない名詞を数える場合にも用いられるが、これについては集合数詞を参照)。なぜなら「1人の男の子」と言う場合、один мальчик などと言う必要がないからである。単数形 мальчик だけですでに「1人」という意味が示されているのだ。

と言えば、Студент も лекцию も単数形だから、「1人の学生が1回の講義に遅刻した」という意味である(当然、前後のコンテキスト次第では違う意味を表す場合もあり得る)。

複数形

 名詞の単数形がそれだけで「1」という意味を持つ以上、複数形はそれだけで複数を示す。その場合、数詞が結合していなければ、概数を示すということになる。

 これは、数を表す名詞についても言える。すなわち、тысачи は「数千」という意味であり、миллионы は「数百万」という意味である。なお、「数十」や「数百」を表したい場合、десять や сто は数詞であるから複数形を持たない。ゆえにそれぞれの数を表す名詞 десяток、сотня を複数形にする。なお、言うまでもないとは思うが念のため。これらは名詞であるから、結合する名詞は普通に複数生格である。десяток や сотня が格変化しても複数生格のまま。

1.5、150

 1.5 を表す полтора は、два と共通する部分が多い。すなわち、

 他方、150 を表す полтораста は、двести、триста、четыреста 等々と同じであり、結合する形容詞・名詞は常に複数となる。

0

 нуль と ноль は互換可能で何ら区別はないが、ニュアンスとして нуль の方が文語的である。語源となったドイツ語 Null の形を保っているのが、古形に感じられるのである(ちなみに、ラテン語 nullus から直接入ってきたわけではない)。

 ロシア語では 0 は名詞だが、日本語でも零は名詞だろう。使い方も日本語と同じで、名詞と結合することはまずない。あるとすれば、単位との結合だろうか(0°C、0時)。この場合、結合する名詞は通常加算名詞(の意味)だろうから、複数生格となる。

数詞から派生した名詞

 ロシア語には、数詞から派生した名詞が存在する。「3」を例に挙げると、тройка と тройник である。いずれも数詞 три から派生した名詞である。
 本来、数詞 три は「何かが3つある」ことを意味する。さらにそこから派生して、抽象的な「3という数」をも意味する。ゆえに数学で 3 + 3 = 6 などという場合にも три を用いる。
 これに対して、「3」という数字(文字)を意味するのが тройка である。「3(という文字)を書く」という場合には、тройка を用いる。そこから тройка は「『3』という文字を持つもの」を意味するようになった。トランプの3、学校の成績の3(ロシアでも5段階評価)、バスや電車の路線としての3、等々。さらにそれが転じて、「3つで1つ」というものを指す場合にも тройка は用いられる。三頭立ての馬車、三つ揃えの紳士服やスリーピース、飛行機の3機編隊、三頭政治(ただし歴史学用語としての「三頭政治」には триумвират という専門用語がある)、等々。
 тройник はかなり特殊な言葉であり、「3単位(3メートル、3グラム、3本、等々)から成るもの」を指す。意味も特殊だし、どちらかと言うと古語的なニュアンスがあるので、実用的観点からすると覚える必要はない。ただし пара は英語の pair に相当し、「2つで1つ」のものを指す名詞として頻繁に用いられる。このため、двойка は「2つで1つ」のものを意味しない。なお、двойник は「生き写し」、「ドッペルゲンガー」を意味する特殊な名詞である。
 さらに、10には десятка と десяток という非常にまぎらわしいふたつの名詞が存在する。десятка が тройка 同様の意味・用法を持つ名詞である。десяток は десять の代わりに、名詞と結合して用いられる。また、名詞であるから、数詞 десять には不可能な表現が可能である。たとえば、年齢を表すには数詞が用いられるが、「70代」といった表現は数詞には不可能であるから、名詞の десяток が用いられる。さらに「数十」のように複数形にすることも、десяток なら可能である。

数詞を修飾する形容詞

 1を修飾する形容詞は存在しない(1自体が形容詞なので)。形容詞を修飾するのは副詞である。

 1以外の数詞を修飾する形容詞は、常に複数。格は当然数詞に一致する。

以上/以下

 以上/以下は、不定数詞 много/мало の比較級 больше(более)/меньше(менее) を用いる(他の言い方もある)。

  1. более четырёх вариантов
  2. четыре и более варианта

 この場合、1 においては четыре が比較級 более に後置されて生格となっている(比較級の比較の対象を示す表現参照)。そのため、вариант も複数生格となっている。
 他方 2 においては、и более は無視して вариант は четыре と接続する。ゆえに単数生格である。

余り

 「50冊余りの本」、「40有余年」、「3時とちょっと」、というように、「個数詞+アルファ」を表す場合、一般的にロシア語では с лишним を用いる。なお、この表現は集合数詞でも使われる。
 語順としては、「個数詞/集合数詞+名詞+с лишним」、「個数詞/集合数詞+с лишним+名詞」のどちらもあり得る。後者の場合、名詞は с лишним を無視して個数詞/集合数詞と結びつく。

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最終更新日 23 05 2013

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