ロシア語概説:命令形

формы 2-го лица единственного и множественного числа повелительного наклонения

どうでもいいことだが、ロシア語の文法用語として «命令形» というのは存在しない。これはあくまでも «命令法二人称において使われる動詞の形» であり、ゆえにそういう持って回った言い方をする。

命令形単数のつくり方

1 ) 命令形は、現在語幹からつくる。 * 例外1

    • де́лать ⇒ де́лают ⇒ де́ла- + -й ⇒ де́лай
    • про́бовать ⇒ про́буют ⇒ про́бу- + -й ⇒ про́буй
  1. -и́
    • зва́ть ⇒ зову́т ⇒ зов- + -и́ ⇒ зови́
    • же́чь ⇒ жгу́т ⇒ жг- + -и́ ⇒ жги́
    • спа́ть ⇒ спя́т ⇒ сп'- + -и́ ⇒ спи́
    • запо́лнить ⇒ запо́лнят ⇒ запо́лн'- + -и ⇒ запо́лни
    • привы́кнуть ⇒ привы́кнут ⇒ привы́кн- + -и ⇒ привы́кни
    • колеба́ть ⇒ коле́блют ⇒ коле́бл'- + -и ⇒ коле́бли
    • ры́скать ⇒ ры́щут ⇒ ры́щ'- + -и ⇒ ры́щи  ※ щ は /ш'ш'/ ないし /ш'ч'/ であるから二重子音
    • знако́мить ⇒ знако́мят ⇒ знако́м'- + -ь ⇒ знако́мь
    • ста́ть ⇒ ста́нут ⇒ ста́н- + -ь ⇒ ста́нь
    • вя́нуть ⇒ вя́нут ⇒ вя́н- + -ь ⇒ вя́нь
    • ре́зать ⇒ ре́жут ⇒ ре́ж- + -ь ⇒ ре́жь
    • пла́кать ⇒ пла́чут ⇒ пла́ч'- + -ь ⇒ пла́чь
    • бре́дить ⇒ бре́дят ⇒ бре́д'- + -ь ⇒ бре́дь

 -ь は命令形であることを示すために加えられるものである。現在語幹末尾の子音が軟音であるか否かとは無関係である(上記 ста́ть ほかの例)。
 もちろん ь は発音記号であるから、直前の子音を軟音化する。しかし軟音化し得ない子音の後にも、命令形を示すものである以上、加えられなければならない(上記 ре́зать の例)。その場合、発音は ь の有無とは無関係である。

 -и と -ь の区別は厳密ではない。多重子音の後でも -и ではなく -ь が使われる場合がある。

2 ) 命令形には単数形と複数形とがある。単数形は無標だが、複数形は有標で、単数形の末尾に -те を付加する。

 ただし -ся は常に末尾に置かれる。

 命令形の単数と複数は、意味上の単複ではなく人称上の ты、вы に対応する。ゆえに、現実には単数の相手に対しても複数形を使用することがある。

3 ) アクセントの位置は、現在形単数一人称の位置に順ずる。

 ただし、現在語幹の末尾が母音の場合は、命令形語尾は必ず -й となるので、変化語尾にアクセントがある場合は現在語幹に移動する。 * 例外3

命令形の例外

  1. 不定形語幹から命令形
  2. вы́- の完了体動詞
  3. 現在語幹の末尾が母音で -й ではないもの
  4. 不規則な命令形
  5. 命令形を持たない動詞

1 ) 一部動詞は現在語幹ではなく不定形語幹から命令形をつくる。以下のものである。

2 ) アクセントの位置が現在語幹にある場合、現在語幹の末尾が単子音では -ь となる。しかし接頭辞 вы́- がついてつくられた完了体動詞では、-и となることがある。特に、もとの動詞が -и であった場合には、-ь にならず -и となる。

3 ) 現在語幹の末尾が母音の場合は -й となるが、II 式の変化語尾をとる -и́ть は -и́ となる。もっとも、母音 + -ить はすべて II 式。ゆえに現実的には、「母音 + -ить の中でアクセントが変化語尾にあるもの」と言うべきか。

4 ) 上記の命令形のつくり方に従わない、特殊な命令形を取る動詞が存在する。以下の3種類である。

5 ) 動詞の中には、意味上ないし様々な理由で命令形を持たないものがある。命令形を持たない動詞の代表例が е́хать だろうが、この手の動詞は主に語義的に命令に適さないものが一般的である。слы́шать「聞こえる」、ви́деть「見える」、хоте́ть「欲しい」、сто́ить「価値がある」、зна́чить「意味する」、боле́ть「患う」
 しかし代表例の е́хать からして、命令に適さないどころか命令形がなければやっていけない。にもかかわらず命令形がない以上、何らかの事情で命令形を使用しなければならない場合、似た意味を持つほかの動詞の命令形を流用するほかはない。е́хать ⇒ поезжа́й、слы́шать ⇒ слу́шай、ви́деть ⇒ смотри́、хоте́ть ⇒ жела́й

 俗語などでは存在しないはずの命令形が使われることもある。

 また、これらに接頭辞がつくなどしてつくられた派生語では、命令形が普通に存在することも多い。захоти, смоги

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最終更新日 03 09 2012

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