ロシア語講座:初級

Н08:и とそのお仲間

接続詞、そして一部小詞としても使われる5つの単語。

и

 「そして」を意味する接続詞 и は、直後の単語を強調する小詞としても用いられる。「〜も」という意味と考えておいていい。

接続詞

выходно́й(男性名詞)仕事が休みの日(休日・祝日だけでなく、有給休暇・非番なども含む)
кро́в(男性名詞)屋根・家・住居(古語・文語)

  1. 列挙(通常) 「AとB」
    • ты́ и я́ 「きみとぼくが」
    • Ле́нин, Ста́лин, Хрущёв, Бре́жнев и Горбачёв 「レーニン、スターリン、フルシチョーフ、ブレージュネフ、そしてゴルバチョーフ」
    • во вто́рник, в сре́ду, в четве́рг, в пя́тницу и в суббо́ту 「火曜日と水曜日と木曜日と金曜日と土曜日に」
    • Сего́дня тепло́, я́сно и ти́хо. 「今日は暖かく、晴れていて、静かだ」
  2. 列挙(強調) 「あれもこれも」
    • и ты́ и я́ 「きみもぼくも」
    • и Ле́нин, и Ста́лин, и Хрущёв, и Бре́жнев, и Горбачёв 「レーニンも、スターリンも、フルシチョーフも、ブレージュネフも、ゴルバチョーフも」
    • О́н бе́гает вокру̀г Импера́торского дворца́ и в до́ждь и в сне́г. 「かれは雨の日も雪の日も皇居のまわりを走っている」
      • 次の例文と比較してみよう。
        Он бегает вокруг Императорского дворца в дождь и в снег. 「かれは雨の日と雪の日に皇居のまわりを走っている」
    • Мо́й му́ж и пьёт, и ку́рит. 「うちの旦那は酒もやればタバコもやる」
    • В выходны́е она́ и спи́т, и чита́ет, и гуля́ет с соба́кой. 「休日は彼女は、寝もするし、本も読むし、犬の散歩もする」
    • И до́ждь идёт, и ве́тер ду́ет. 「雨も降るわ風も吹くわ」
  3. 同時進行(不完+不完)
    • Она́ сиде́ла и чита́ла. 「彼女はすわって本を読んでいた」
    • О́н за́втракал и смотре́л телеви́зор. 「かれは朝食をとりながらTVを見ていた」
  4. 順序・因果(完+完)
    • О́н поза́втракал и посмотре́л телеви́зор. 「かれは朝食をとってからTVを見た」
    • Ми́тя заболе́л и не пришёл на рабо́ту. 「ミーテャは病気になったので仕事に来なかった」
    • О́н тогда́ про́дал сво́й до́м, 「そこでかれは家を売りました」
      Про́дал карти́ны и кро́в, 「絵も住居も売りました」
      И на все́ де́ньги купи́л 「そしてそのお金で買いました」
      Це́лое мо́ре цвето́в. 「海ほどの花を」『百万本のバラ』
  5. 「そうすれば」
    • Бу́дешь рабо́тать, и де́ньги бу́дет. 「働けば金は入ってくる」
    • Поверни́те та́м напра́во, и вы́ ви́дите высо́кий до́м. 「あそこを右にまがれば高い建物が見えます」
    • Проси́те, и дано́ бу́дет ва́м; ищи́те, и найдёте; стучи́те, и отво́рят ва́м; и́бо вся́кий прося́щий получа́ет, и и́щущий нахо́дит, и стуча́щему отво́рят. 「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる」『マタイによる福音書』

小詞

быва́ть(不完了体動詞) ⇔ ─ (完了体動詞)
   ある・いる(反復)
пятно́(中性名詞)しみ・斑点・まだら、汚点・汚辱

  1. 強調
    • Уме́л ошиби́ться, уме́й и попра́виться. 「間違えることができたのなら、正すこともできるようになれ」(ことわざ)
    • И я́ не зна́ю. 「わたしも知らない」
    • Она́ изве́стна и в Япо́нии. 「彼女は日本でも知られている」
    • И она́ студе́нтка. 「彼女もまた学生だ」
    • Не могу́ и ду́мать. 「考えることすらできない」
    • О́н и спаси́бо не сказа́л. 「かれはありがとうも言わなかった」
    • «И восхо́дит со́лнце.» 「陽はまた昇る」
    • И на со́лнце быва́ют пя́тна. 「太陽にも黒点がある」(誰にでも欠点はある)

ни

 и の否定を表すのが ни である。つまり、「〜も(〜ない)」という場合に使われる。しばしば не や нет なしの文で。

стреля́ть(不完了体動詞) ⇔ стрельну́ть(完了体動詞)
   撃つ・射撃する・射る

  1. 列挙 「あれもこれも(ない・しない)」
    • ни ты́ ни я́ 「きみもぼくも(〜しない)」
    • Не́ было ни уче́бника, ни словаря́. 「教科書も辞書もなかった」
      • 次の例文と比較してみよう。
        Не было учебника и словаря. 「教科書と辞書がなかった」
    • Не зна́ю ни ме́ста, ни вре́мени. 「ぼくは場所も時間も知らない」
    • Я́ не́ был ни в Москве́, ни в Санкт-Петербу́рге. 「わたしはモスクワにもサンクトにも行ったことがない」
    • В выходны́е она́ ни спи́т, ни чита́ет, ни гуля́ет с соба́кой. 「休日は彼女は、寝るわけでもなく、本を読むでもなく、犬の散歩もしない」
    • О́н ни ры́ба ни мя́со. 「かれは魚肉でも牛肉でもない」=「何の取り柄もない」
    • О́н бы́л ни жи́в ни мёртв. 「かれは生きても死んでもいなかった」=「かれは生きた心地もしなかった」
  2. 強調(完全否定)
    • Ни сло́ва! 「喋るな」
      • 要するに「一言も」しゃべるな、という意味だから(存在を否定しているから)、слова は単数生格。以下、ни の後の名詞が生格になっているのは、同じ理屈による。
    • Ни ша́гу! 「一歩も動くな」
    • Ма́ша ни ра́зу не подняла́ гла́з на меня́. 「マーシャは一度も目を上げてわたしを見なかった」
      • 目的語として対格を要求する動詞 поднять が否定されているから、この場合の глаз は単数対格ではなく複数生格。
    • На у́лице (не́т) ни души́. 「表には人っ子ひとりいない」
    • На не́бе (не́т) ни о́блака. 「空には雲ひとつない」
    • О́н (не) сказа́л ни одного́ сло́ва. 「かれは一言も発しなかった」
    • Ни с ме́ста, ѝли бу́ду стреля́ть. 「そこから動くな。さもないと撃つぞ」
    • Ни оди́н челове́к не мо́жет мне́ помо́чь. 「誰ひとりぼくの助けにはならない」

или と то

 «и A и B» で「AもBも(両方とも)」、«ни A ни B» で「AもBも(両方とも)(ない)」である。
 これに対して、「AかBか(どちらか)」を意味するのが или であり、「AだったりBだったり」を意味するのが то である。

или

 или は、アクセントがあったりなかったり。もっとも、アクセントはあっても弱アクセントである。つまり、*и́ли と発音されることはなく、アクセントなしで軽く или か、せいぜい ѝли である。なお、もっと軽く иль と省略されることもある。

ина́че(副詞)違った風に・別のやり方・方法で

  1. AかBか
    • ты́ или я́ 「きみかぼくが」
    • ра̀но или по̀здно 「遅かれ早かれ」
    • бо̀лее или мѐнее 「多かれ少なかれ」
    • та́к или ина́че 「いずれにせよ」
    • Сейча́с ѝли никогда́! 「いまやるか、決してやらないか」=「これが最後の機会だ」= Now or never!
    • Тебе́ ча́ю ѝли ко́фе? 「ティーとコーヒーどっち?」
    • Кни́га твоя́ ѝли её? 「(この)本はきみの? 彼女の?」
    • Я́ не зна́ю, идёт о́н ѝли не́т. 「かれが来るか来ないかわからない」
    • В выходны́е она́ ѝли спи́т, ѝли чита́ет, ѝли гуля́ет с соба́кой. 「休日は彼女は、寝ているか、本を読んでるか、犬の散歩をしている」
  2. そうしなければ、さもないと
    • Сто́й, ѝли стрельну́! 「止まれ! さもないと撃つぞ!」
    • Уходи́, ѝли бу́дет ху́до. 「あっち行け。さもないとひどいぞ」
    • Бу́ду то́лько врачо́м ─ ѝли вообще́ в институ́т не пойду́. 「医者にしかなるつもりはないよ。さもなきゃ、そもそも大学になんか行かない」

то

проясня́ться(不完了体動詞) ⇔ проясни́ться(完了体動詞)
   はっきり見えるようになる、晴れる・澄む

  1. AだったりBだったり
    • то̀ ты́, то̀ я́ 「きみだったりぼくだったりが」
    • То̀ хо́лодно, то̀ жа́рко. 「寒かったり暑かったり」
    • О́н то̀ е́л, то̀ пи́л. 「かれは食べたり飲んだりしていた」
    • Сего́дня то̀ идёт до́ждь, то̀ проясня́ется. 「今日は降ったり晴れたりしている」
    • В выходны́е она́ то̀ спи́т, то̀ чита́ет, то̀ гуля́ет с соба́кой. 「休日は彼女は、寝たり、本を読んだり、犬の散歩をしたりしている」
  2. 従属文を受けて主文の始まりを示す
    • Когда́ о́н пришёл домо́й, то̀ о́н сра́зу лёг спа́ть. 「かれは家に着くなり寝た」
    • Е́сли ты́ согла́сен, то̀ я́ ему́ покажу́ го́род. 「きみが同意なら、かれに街を見せてやるけど」

ли

 肯定が и、否定が ни だとしたら、疑問が ли である(母音の後では、しばしば ль となる)。
 ли はかなり特殊な使い方をするので、少し詳しく見ておこう。

疑問文

 ロシア語の疑問文は、

  1. 口頭では、特殊なイントネーションで発音する。
  2. 文字では、文末を「 . 」や「 ! 」ではなく「 ? 」にする。

だけで示される。これだけで必要十分なのだが、ロシア人にも時には疑問のニュアンスを強調したいことがある。そのような場合に使うのが ли である。
 ли には次のような規則がある。

  1. 聞きたい単語の後に置かれる。
  2. 聞きたい単語を文頭に置く。

 1 はロシア語では珍しくもない規則だが、2 はかなり特殊なので、しっかり覚えておこう。

平叙文О́н студе́нт.
疑問文通常О́н студе́нт?
лиО́н ли студе́нт? 「かれが学生?」
Студе́нт ли о́н? 「かれは学生?」

イントネーションは、普通の疑問文と同じく、聞きたい単語のアクセントの位置を上げる。ちなみに、ли にアクセントはない。

平叙文Са́ша лю́бит ча́й.
疑問文通常Са́ша лю́бит ча́й?
лиСа́ша ли лю́бит ча́й? 「紅茶好きなのってサーシャ?」
Лю́бит ли Са́ша ча́й? 「サーシャって紅茶好きなの?」
Ча́й ли Са́ша лю́бит? 「サーシャが好きなのって紅茶?」

 ли を使った疑問文では、このように微妙なニュアンスの違いを明確にすることができる。通常はこのニュアンスの違いは語順やイントネーションで表現される。

〜かどうか

  1. 「かれがいつ来るか知ってる?」
  2. 「かれが来るかどうか知ってる?」

1 は、従属文に「いつ」という疑問詞を使うことで表現する。

これに対して、2 はどう表現したらいいだろうか。ここでロシア語では ли を使うのである。

 いくつか例文を示してみよう。

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最終更新日 14 07 2019

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