ロシア語講座:初級

К05:受け身の注意点3:形容詞化された受動形動詞過去短語尾

занять(完了体動詞)は、「占める」、「占拠する」、「占領する」という意味である。その受け身は、当然、「占められる」、「占拠される」、「占領される」である。

престо́л(男性名詞)玉座・王位・帝位(君主の地位)
наконе́ц(副詞)ついに・やっと・ようやく・とうとう・結局・最終的に
-то(小詞)(直前の単語を強調)

ここでジューコフは、1945年5月2日の一瞬について語っている(もちろん厳密には「その頃」ということになるだろうが)。また1481年にシャイフ=アフマドが大ハーンに就任したのである。
 ところが受動形動詞過去短語尾 занят は、普通はむしろ「占めるという行為が起こった一瞬は過去にあり、現在〇〇によって占められた状態にある」という意味で使われている。少なくとも日常会話レベルでは。

  1. Ве́сь кабине́т за́нят кни́гами. 「書斎全体が本で占められている」
  2. Туале́т бы́л за́нят. 「トイレは使用中だった」
  3. Я́ о́чень за́нят. 「ぼくはとても忙しい」

 書斎を本が埋めたのは、過去のある一瞬である。その結果として、いま現在、書斎は本で一杯になっている、ということを 1. は述べている。「いま現在本が書斎を埋め尽くしつつある」ということを言っているわけではない。
 トイレに誰かが入ったのは、過去のAという時点である。その結果として、ぼくがトイレに入ろうとした過去のBという時点では、すでに誰かが入っていた、ということを 2. は述べている。当然のことながら、AとBは同じ時ではない。AがBに先行している。しかしこの文が言いたいのはAの時点の出来事ではなく、Bの時点での状態なのである。ただし、純粋に可能性としては、「トイレが誰かに占拠された」=「トイレに誰かが入った」という意味かもしれない。上掲のベルリンや玉座のごとくである。
 このように、занят が状態を表す形容詞と化した結果として、3. のような表現が可能になる。очень という単語は程度を表すから、本来 занят とは結びつかない。なぜなら本来の意味からすると、 「占領された」か「占領されていない」かの二者択一であり、中間などあり得ないからだ。「とても」とか「少し」とかいう単語とは結合してはならないはずである(日本語でも「とても占領された」はおかしい)。だからわたしのロシア人の恩師は、«Я очень занят.» はロシア語として間違っている、と言っておられた。

 ここで занят を убит と比べてみよう。
 занят の場合、

О́н бы́л о́чень за́нят.

という表現が可能である。上述のように、ネイティヴのロシア語教師は「文法的に間違いだ」と主張していたが、現実問題としてそのネイティヴが日常会話で使っているのである。
 ところが убит は、

*О́н бы́л о́чень уби́т.

があり得ない。これは日本語で考えてみてもわかるだろうから、くだくだしくは解説しない。
 こうして見てくると、図式的に言えば、受動形動詞過去短語尾には3種類があることに気づくだろう。

  1. 動作「Dされた」を表す : убит など
  2. 状態「Dされた状態にある」を表す : открыт など
  3. 両方表す(頻度に違いはあれど) : занят など

 この3つの違いは厳密なものではないし(と言うか、そもそもこんな風に分類する人はいない)、単語の意味によるとしか言い様がない。その意味も日本語の意味ではなくあくまでもロシア語の意味である。ゆえに、ロシア人が「こう使おう」と思えばそう使われる、ということであり、ロシア人が「この使い方はおかしくね?」と思えばそう使われない、ということである。これはもはや文法ではなくフィーリングの問題であるから、これ以上立ち入ることはできない。

 とりあえず、以下、受け身の意味を喪失して形容詞化してしまった受動形動詞過去短語尾をいくつか紹介する。

Роско́смос(男性名詞)ロスコスモス社
организова́ть(完了体動詞・不完了体動詞)対格を組織・創設・設立する
регуля́рный(形容詞)規則正しい・定期的な
авиаре́йс(男性名詞)航空航路、便・フライト
представля́ться(不完了体動詞) ⇔ предста́виться(完了体動詞)自己紹介する

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最終更新日 21 09 2018

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