ロシア語講座:初級

И12:何よりも

「AはA’よりもBだ」

という文における「A’」を「何」、あるいは「誰」に置き換えてやると、いわゆる «最上級» を意味する文になる。

「Aは何よりもBだ」 ≒ 「Aは一番Bだ」

 文法的なことを言えば、«最上級» とは、«比較級» と同じく、形容詞・副詞の特殊な形態を指す。しかしロシア語ではいささか厄介なので、日常会話ではこの表現がよく使われる。

厳密に言うと、このように言い換えることで微妙にニュアンスが変わってしまうかもしれないが、それを気にするのは上級レベルになってからでいい。

 「何よりも」と言う場合の「何」は、言うまでもなく、疑問詞ではない。ゆえに что を使うわけではない。同じく「誰よりも」にしても、кто は使わない。それぞれ「すべての物」、「すべての者」と言い、всё (весь の単数中性)および все (весь の複数)を使う。
 確認だが、形容詞は、単数中性形で「〜〜なもの」、複数形で「〜〜な人々」を意味する名詞となる。всё が「すべての物」、все が「すべての者」を意味するのは、それと同じ用法である。

すでに見た скорее всего 「きっと」という熟語も、この用法に基づいている。

 このように、

が、事実上の最上級の表現として用いられる。

#196 最上級の表現には、日常会話では比較級が流用される。

 乱暴に言ってしまうと、特に頻繁に用いられる最上級の表現は、次のように分けられる。

述語修飾語
形容詞比較級の流用最上級複合型
副詞比較級の流用比較級の流用

このように、修飾語として使われる形容詞最上級だけが、用法が特殊である。
 この表を、比較級の用法の表と組み合わせてみると次のようになる。

述語修飾語
形容詞比較級 : 単純型
最上級 : 比較級の流用
比較級 : 単純型(文法違反)/複合型
最上級 : 複合型
副詞比較級 : 単純型
最上級 : 比較級の流用
比較級 : 単純型
最上級 : 比較級の流用

つまり、比較級であれ最上級であれ、修飾語としての形容詞だけが、特殊な表現・使い方をする。これは、言うまでもなく、本来の文法からすると名詞と性・数・格を一致させなければならないのに、比較級は格変化をしないからである。
 このためもあって、ロシア人は、日常会話においては、修飾語としての形容詞比較級(「より○○な××」)を使わなくて済む言い回しを好む。

Но̀ от тайги́ до брита́нских море́й 「しかしタイガからイギリスの海までの」
Кра́сная а́рмия все́х сильне́й. 「何ものよりも赤軍は強い」『Белая армия, черный барон』

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最終更新日 07 11 2017

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