ロシア語講座:初級

И11:程度の表現

比較級にかかわる程度の表現をいくつか確認しておこう。

 「A は A' より B だ」において、A と A' との差が明確な数字で表現され得る場合は、

на+対格

で表される。

дре́вний(形容詞)古代にあった(いまはない)、古代から残る・続く(いまもある)
полчаса́(男性名詞)30分 ※格変化は特殊

 これとは別に、造格で表されることもある。とはいえ、数詞+名詞の格変化を完璧にこなせないうちは、避けた方が無難だろう。

 他方、A と A' との差が曖昧な場合は、副詞が用いられる。

 A と A' との差が倍数である場合は、

в+対格+раз

で表される。

 ちなみに、

раз 回・度・倍
単数複数
主格ра́зразы́
生格ра́за | ра́зура́з
与格ра́зураза́м
対格ра́зразы́
造格ра́зомраза́ми
前置格ра́зераза́х

つまり2、3、4と結合する時に раза となるほかは、раз である。

 この表現について、日本人にはわかりづらい例を挙げる。

т.е. /то́исть/(接続詞)つまり ※то есть の略記。略さず то есть と書かれることもある。

в 45 раз уже は直訳すると「45倍狭い」。日本語からするとおかしいが、ロシア語ではこう言う。

зарпла́та(女性名詞)給料・賃金(どちらかと言うと口語的) ※本来は略語

概数

 話は逸れるが、「2年」ではなく「2、3年」、「5個」ではなく「5、6個」という表現は、ロシア語でも日本語と同じである。
 つまり、日本語ではこのような場合、数詞をただ並べる(場合によっては数詞+助数詞)。ロシア語でも、数詞をただ並べるだけだ。なお、文字で書く場合には数詞と数詞の間にダッシュなどを挟む。

 中級ないし上級で学ぶことだが、正書法によれば、アラビア数字を結ぶのはダッシュ「 ─ 」、ロシア語を結ぶのはハイフン「 - 」。空白は入れない。

限界

 「これ以上〜〜できないくらい」という表現。これは非常に単純で、как と можно ないし нельзя を比較級と組み合わせる。можно と нельзя の違いは、上級レベルで考えるべきことで、いまは無視しておいていい。

 これを、主文と「 , 」で結ぶ。

ますます

ますます

 「ますます〜だ」というのは、程度が深まっていく様を表している。ゆえに、ロシア語ではこの手の表現は必ず比較級とともに用いられる。

  1. ещё
    • Она́ ста́ла ещё краси́вее. 「彼女はますます綺麗になった」
    • Она́ ре́дко смея́лась, ещё ре́же пла́кала. 「彼女はめったに笑わなかったし、泣くのはもっとまれだった」
  2. всё
    • Ста́ло всё темне́е. 「いっそう暗くなった」
    • До́ждь идёт всё сильне́е. 「雨がますます激しくなってきた」
      • ロシア語の文には「なってきた」「なった」という意味の単語が存在していない。ただ単に「降っている идёт」と言っているだけだ。しかし比較級とともに用いられていることで「以前も雨が降っていた」、「現在も雨が降っている」、「以前よりも現在の方が雨が激しい」という3つの意味を持つ。この結果、「以前」と「現在」との間に雨脚が変化したことが言外に語られており、結果として日本語の「激しくなった」というニュアンスを持つ。
    • Я́ люблю́ тебя́ всё бо́льше и бо́льше. 「きみのことがもっともっと好きになった」
      • ロシア語の文には「なった」という意味の単語が以下同上。
      • всё は強調の小詞だが、この文では бо́льше を繰り返すことで、強調のニュアンスを強調している。このように、「比較級 и 比較級」という強調の表現は口語ではよく見られる。

〜であればあるほど

 「〇〇であればあるほど××だ」、「〇〇すればするほど××になる」という表現は、ロシア語では、単純に言うと、

чем 比較級, тем 比較級

となる。具体例を見た方が早いだろう。

рассве́т(男性名詞)夜明け(の時間、その空)
дрова́(女性名詞)まき・たきぎ

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最終更新日 07 11 2017

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