З05:I 式 8 -авать
-авать と言っても、ここで述べるような不規則変化をするのは以下のみ。
- дава́ть および、接頭辞+-дава́ть
- 接頭辞+-знава́ть
- 接頭辞+-става́ть
もっとも、これ以外の -авать は пла́вать ぐらいだが(アクセントの位置が違うので、お仲間ではないのは明白だ)。
なお、*знавать および *ставать という動詞は存在しない。
これらの動詞では、現在形において、-ва- が消滅する。«削除型» である。
ところが、命令形は規則通りである。つまり -ва- が消えない。これはおかしい。なぜならほかのどの動詞でも、命令形は現在形と同じ語幹(変化語尾のない部分)をしているからである。それは不規則変化をする動詞とて例外ではない。стать が現在形で стану、станешь などと変化すれば、命令形も стань となる。決して *стай などとはならない。ところが、ここで見る -авать は、現在形では -ва- が消滅して -аю、-аешь などと変化するのに、命令形は *-ай とはならずに -авай となる。つまり、-авать の命令形のつくり方が実は例外なのである。
過去形が規則通りなのは言うまでもない。
これらはすべて不完了体動詞である。対応する完了体動詞は、以下の通り。
- да́ть および、接頭辞+-да́ть : I 式にも II 式にも属さない、本当の意味での特殊な変化。
- 接頭辞+-зна́ть : I 式規則変化(знать)。
- 接頭辞+-ста́ть : I 式不規則変化(стать)。
この3つ、いささか関係が複雑である。確認しておくが、
дать | дава́ть(不完) | да́ть(完) | |
-дава́ть(不完) | -да́ть(完) | ||
знать | зна́ть(不完) | ―(完) | |
-знава́ть(不完) | -зна́ть(完) | ||
стать | ста́ть(完) | станови́ться(不完) | |
-става́ть(不完) | -ста́ть(完) |
なお、ここでは давать および接頭辞+-давать は扱わない。дать の項で確認する。
-знава́ть(不完) ⇔ -зна́ть(完) ※完は I 式規則変化
признава́ть(不完) ⇔ призна́ть(完)
- 対格を認める・承認する・容認する
- 対格を造格とみなす
- 従属文だと認める
※призна́ние(中性名詞)承認、自白・告白
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
я | 男 | признаю́ | признава́л | |
女 | признава́ла | |||
ты | 男 | признаёшь | признава́л | признава́й |
女 | признава́ла | |||
он | 男性名詞 | признаёт | признава́л | ||
она | 女性名詞 | признава́ла | |||
оно | 中性名詞 | признава́ло | |||
мы | признаём | признава́ли | ||
вы | признаёте | признава́йте | ||
они | 名詞の複数形 | признаю́т |
незави́симость(女性名詞)独立
оши́бка(女性名詞)過ち・間違い
- Не все́ стра́ны призна́ли незави́симость Се́верной Осе́тии. 「すべての国が北オセーティヤの独立を認めたわけではない」
- не という否定の小詞は、直後にある単語を否定する。この場合は все 「すべての」。つまり「すべてではない国が認めた」ということである。
не が否定しているのは все であり、動詞 признали ではない。だから目的語 независимость は生格にならず、対格のまま。
- не という否定の小詞は、直後にある単語を否定する。この場合は все 「すべての」。つまり「すべてではない国が認めた」ということである。
- Призна́й свою́ оши́бку. 「自分の間違いを認めろよ」
- Его́ признаю́т лу́чшим компози́тором своего́ вре́мени. 「かれを、その時代最高の作曲家と認めている」=「かれは当時で最高の作曲家と認められている」
- Его́ призна́ют лу́чшим компози́тором своего́ вре́мени. 「かれを、その時代最高の作曲家と認めることになる」=「かれは当代最高の作曲家と認められることになるだろう」
- アクセントの位置ひとつで意味がまるっきり違ってきてしまうことに注意。
上は признаю́т だから不完了体動詞で、現在時制。いま現にみんながかれを最高の作曲家と認めている、ということだ。ということは、かれは現在の人か、過去の人か。たとえばこの「かれ」はチャイコーフスキイでもショスタコーヴィチでもいいのである。
下は призна́ют だから完了体動詞で、未来時制。まだいまは、かれは最高の作曲家として認められていない。しかしいずれはそう認められるようになる、という話者・筆者の確信を述べている。ということは、かれはどう考えても現在の人か、あるいは未来の人だ。たとえば「うちの息子」かもしれない。 - своё время は「自分の時」という意味だが、この場合は「かれ」の生きた時代、と考えていい。だから「かれ」が過去の人か、現在の人か、未来の人か、によって具体的にいつかは変わってくる。
- アクセントの位置ひとつで意味がまるっきり違ってきてしまうことに注意。
признава́ться(不完) ⇔ призна́ться(完)
- в+前置格・従属文を白状する・打ち明ける
- Серёжа призна́лся, что о́н ничего́ не зна́л. 「セリョージャは、何も知らなかったと白状した」
- Ли́за призна́лась Ко́ле в любви́. 「リーザはコーリャに告白した(愛を打ち明けた)」
- Признава́йся во всём. 「すべてを打ち明けなさい」
узнава́ть(不完) ⇔ узна́ть(完)
- 対格・о+前置格・従属文を知る
- 対格・о+前置格・従属文について問い合わせる(問い合わせて知る)
- 対格を識別する・分かる
- Я́ узнаю́ но́вости не по телеви́дению, а от дру́га. 「わたしはニュースはTVではなく友人から聞く」
- Я́ узна́ла у па́пы, что ма́ма сейча́с где́-то в Росси́и. 「ママがいまロシアのどこかにいることは、パパから聞いた」
- 情報源(「誰々から」)は、このように、от+生格でも、у+生格でも、どちらでも可。ただしそれが人ではなくTVだとかラジオとかになると、по+与格になる。ここら辺はそれぞれの前置詞の用法の問題なので、辞書を見るべし。
- Узна́й его́ и́мя. 「かれの名前を調べとけ」
- Не узна́л свою́ маши́ну? 「自分の車が分からなかったのか?」
- Ты́ узнаёшь его́? 「かれが誰だかわかるかい?」
- Вы́ меня́ не узнаёте? 「わたしがおわかりになりませんか?」
-знавать(不完) ⇔ -знать(完)において、非常に厄介な点について。
不完了体動詞 -знавать | 完了体動詞 -знать | 文字表記 |
---|---|---|
-знаю́ | -зна́ю | -знаю |
-знаёшь | -зна́ешь | -знаешь |
-знаёт | -зна́ет | -знает |
-знаём | -зна́ем | -знаем |
-знаёте | -зна́ете | -знаете |
-знаю́т | -зна́ют | -знают |
このように、教科書以外の印刷物や手書きでは、アクセント記号も振られないし ё という文字も使われないので、現在形において不完了体動詞と完了体動詞の区別がまったくつかない。
書く時には、不完了体・完了体の区別を気にせずに済むので楽だが、読む時・話す時には的確に判断できないとならない。場合によっては、不完了体と完了体を取り違えて、意味をまるきり間違えてしまうこともあり得るのだ。
- Видишь, мы признаем ошибки.
- Об этом мы узнаем по интернете.
この場合の признаем および узнаем のアクセントはどこにあるだろうか?(これらは不完了体動詞だろうか完了体動詞だろうか?)
-става́ть(不完) ⇔ -ста́ть(完) ※完は I 式不規則
встава́ть(不完) ⇔ вста́ть(完)
- 立ち上がる・起立する
- 起床する・起きる
主語 | 現在形 | 過去形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|
встава́ть | ||||
я | 男 | встаю́ | встава́л | |
女 | встава́ла | |||
ты | 男 | встаёшь | встава́л | встава́й |
女 | встава́ла | |||
он | 男性名詞 | встаёт | встава́л | ||
она | 女性名詞 | встава́ла | |||
оно | 中性名詞 | встава́ло | |||
мы | встаём | встава́ли | ||
вы | встаёте | встава́йте | ||
они | 名詞の複数形 | встаю́т | |||
вста́ть | ||||
я | 男 | вста́ну | вста́л | |
女 | вста́ла | |||
ты | 男 | вста́нешь | вста́л | вста́нь |
女 | вста́ла | |||
он | 男性名詞 | вста́нет | вста́л | ||
она | 女性名詞 | вста́ла | |||
оно | 中性名詞 | вста́ло | |||
мы | вста́нем | вста́ли | ||
вы | вста́нете | вста́ньте | ||
они | 名詞の複数形 | вста́нут |
- Встава́й, прокля́тьем заклеймённый, 「起て 呪いの烙印を押されし者よ」『インターナショナル』
- Шко́льники вста́ли, когда́ уви́дели учи́теля. 「教師を見て生徒たちは立ち上がった」
- Вдру́г она́ вста́ла из-за стола́. 「突然彼女はテーブルから立ち上がった」
- Я́ обы́чно встаю́ в ше́сть. 「わたしは普段六時に起きる」
- Встава́й: уже́ пора́. 「起きなさい。もう時間よ」
- За́втра вста́нь в пя́ть. 「明日は五時に起きなさい」
- 命令形における不完了体と完了体の違いには、
- 体の本来的な意味・用法による違い。
- 命令形に独特の違い。
- 命令形における不完了体と完了体の違いには、
остава́ться(不完) ⇔ оста́ться(完)
- 残る・とどまる
- 造格のままである
※остально́й(形容詞)残りの
※оста́ток(男性名詞)残り・余分
Лю́ба(女性名詞)女性名 Любо́вь の省略形
одино́кий(形容詞)身寄りのない・ひとりぼっちの、独身の・未婚の
кра́жа(女性名詞)窃盗・盗み
челове́ческий(形容詞)人間の
несча́стье(中性名詞)不幸
ко́рень(男性名詞)根・ルーツ
неуме́ние(中性名詞)できないこと・やり方を知らないこと
- Я́ оста́нусь зде́сь до его́ возвраще́ния. 「わたしはかれが戻るまでここにとどまる」
- Жена́ остава́лась до́ма одна́. 「妻はひとり家に残った」
- Жена́ оста́лась до́ма. 「妻は家に残った」(だからいま家にいる)
- 別の言い方をすると、「妻は家に残っている」。つまり、«Жена остаётся дома.» と同義(になる場合がある)。
- Я́ бу́ду остава́ться в Са̀нкт-Петербу́рге ещё на неде́лю. 「わたしはあと1週間サンクトに残る・とどまる・いるつもりです」
- Оста́ньтесь ещё немно́го. 「もう少しいてください」
- Оста́нься со мно́й. 「ぼくと一緒にいて」
- До отлёта оста́лось два́ часа́. 「出発まであと2時間だ」
- Ко́ля оста́лся жи́ть во Владивосто́ке. 「コーリャはそのままウラジオに住み着いた」
- 厳密に言うと、остаться と結合する動詞不定形は目的を表すから、「コーリャはウラジオに住むために残った」。
- У меня́ ещё остаю́тся во́лосы. 「わたしにはまだ髪が残っている」
- Оста́нься дру́гом. 「友達でいてよ」
- Ты́ остава́йся собо́й. 「君は君のままでいて」
- Лю́ба оста́лась одино́кой. 「リューバはひとりぼっちのままだった/未婚だった」
- Через де́сять ле́т о́н ещё оста́нется молоды́м. 「10年後もかれは若いままだろう」
- Кра́жа остаётся кра́жей! 「窃盗は窃盗だ!」
- остаётся を使っているから、直訳すれば「窃盗は窃盗のまま残っている」。相手がいろいろ言い訳をしたりした末に吐くべきセリフ。
- Все́ челове́ческие несча́стья име́ют оди́н ко́рень: неуме́ние споко́йно остава́ться у себя́ в ко́мнате. 「人類の不幸すべては同じ根を持つ。自室でおとなしくしていられない、ということだ」(パスカル)
余談だが、似たような単語があるので、混同しないように覚えよう。
- оста́ться(完) ⇔ остава́ться(不完)残る・とどまる
- оста́вить(完) ⇔ оставля́ть(不完)対格を残す
- останови́ть(完) ⇔ остана́вливать(不完)対格を止める・とどめる
- останови́ться(完) ⇔ остана́вливаться(不完)止まる・とどまる
устава́ть(不完) ⇔ уста́ть(完)
- 疲れる ※原因を示すのは、от+生格・с+生格・動詞不定形(不完了体)など。
※уста́лый(形容詞)疲れた
ходьба́(女性名詞)歩くこと
чте́ние(中性名詞)読むこと・読書
- Я́ уста́л. 「疲れた」
- Ты́ уста́ла ходи́ть? 「歩き疲れたかい?」
- Сего́дня у меня́ но́ги уста́ли от ходьбы́. 「今日は歩きすぎて足が疲れた」
- От чте́ния уста́ли глаза́. 「本を読んでて目が疲れた」
ちなみにロシア人は「お疲れさま」とは言わない。ねぎらいの言葉は、もっと直接的な表現を使う。たとえば音楽家に「素晴らしい演奏でした」とか。日本語は婉曲な言い回しを好むが、ロシア語を話す以上、直接的な言い回しをするように心がけよう。
上の答え合わせ
- Ви́дишь, мы́ признаём оши́бки. 「いいかね、われわれは間違いを認めているのだ/あのね、おれたち間違ってたよ」
- 単純に時制で考えてみよう。われわれは間違いを、いま認めているのか、これから認めてしまうのか(つまりいまはまだ認めていないのか)。完了体は現在時制を示し得ないから、この文が現在時制であれば必然的に признаём である。もし призна́ем だとしたら、それは未来時制である。前後の文脈次第ではどちらもあり得るかもしれないが、普通に考えればこの場合は現在時制、ゆえに不完了体であろう。
- Об э́том мы́ узна́ем по интерне́те. 「これについてはインターネットで調べておく」
- こちらも時制で考えてみよう。われわれはインターネットで、いま調べている最中なのか、これから調べてしまうのか(つまりいまはまだ調べていないのか)。場合によっては、いつも調べる、という反復の意味もあり得る。反復ないし現在進行形であればこれは不完了体 узнаём、未来時制であれば完了体 узна́ем となる。
ところが узнавать という動詞に、現在進行形の意味・用法はない。ここでは「調べる」という訳語を使っているので混乱してしまうかもしれないが、この動詞は本来、「知らなかった ⇒ 知っている」という一瞬を捉えている。だからその過程は示し得ないのである。つまり日本語は変だが「これについてはインターネットを通じて知る」。
また、この場合は反復の意味でもあり得ない。文頭で「これについて」と述べている以上、「これについて知らなかった ⇒ これについて知っている」という状態移行はただ一回だけの出来事だからである。
その他の意味・ニュアンスで不完了体 узнаём という可能性もないではないが、やはりそれは特殊な文脈に置かれた場合、ということになるだろう。普通に考えれば、узнаем は完了体。
- こちらも時制で考えてみよう。われわれはインターネットで、いま調べている最中なのか、これから調べてしまうのか(つまりいまはまだ調べていないのか)。場合によっては、いつも調べる、という反復の意味もあり得る。反復ないし現在進行形であればこれは不完了体 узнаём、未来時制であれば完了体 узна́ем となる。