Ж14:個数詞のある文
与格+個数詞
個数詞が与格と結合すると、年齢を表す。
一般的に、語順は「与格+個数詞」。
- Мне́ два́дцать (ле́т). 「ぼくは20歳です」
- Ему́ со́рок (ле́т). 「かれは40歳だ」
- Жене́ ещё не́т сорока́ (ле́т). 「妻はまだ40歳になっていない」
- Моему́ сы́ну ско́ро го́д. 「うちの息子はもうすぐ1歳です」
- Моему́ сы́ну второ́й го́д. 「うちの息子は数えで2歳です(1歳から2歳まで)」
- Котёнку ещё ме́сяцы. 「子猫はまだ(生後)数ヶ月だ」
- Санкт-Петербу́ргу уже́ три́ста ле́т. 「サンクト=ペテルブルグは(建設されて)もう300年が経つ」
- Ско́лько ва́м ле́т? 「おいくつですか?」
#158 与格+個数詞は年齢の言い方。
ちなみに、ロシア語には「ティーンエイジャー」という言葉、概念は存在しない。
「ティーンエイジャー」というのは、英語の「13 thirteen」から「19 nineteen」がすべて -teen で終わっていることから、13歳から19歳を指す言葉として生まれたものである。ロシア語にそんな言葉、概念がなくて当然だ。
生格+個数詞
個数詞は生格と結合するものである。これはすでに見たとおりだ。
- де́сять студе́нтов 「10人の学生」
- студе́нтов де́сять 「10人ほどの学生」
では、「AはBだ」のBが個数詞の場合はどうなるだろう。別の言い方をすると、「AはG個だ」という文だ。たとえば「学生は10人だ」、「学生は10人いる」だが、次のパターンを比べてみよう。
- Та́м де́сять студе́нтов.
- Та́м студе́нтов де́сять.
- Студе́нтов та́м де́сять.
結論から言うと、「AはG個だ」は 3) のパターンになる。
単純に言うと、1) は「あそこには10人の学生がいる」、2) は「あそこには10人ほどの学生がいる」である。「学生はあそこに10人いる」、「あそこにいる学生は10人だ」というニュアンスを表現するのが 3) である。
- Все́х ма́льчиков ─ пя́ть. 「男の子は全員で5人だった」
- Муки́ ─ два́ мешка́. 「小麦粉は2袋分ある」
- Де́л у меня́ мно́го. 「わたしには仕事がたくさんある」
- Маши́ны у на́с бы́ло две́. 「うちに車は2台あった」
とりあえず典型的な語順を並べたので、わかりやすいかと思う。
単純に整理すると、「AがG個ある」という文は、Aを生格にする、ということだ。単数生格か複数生格かは、数詞次第である。
#159 「AがG個ある」では、Aを生格。
ただし、この言い方ができなくても、あまり問題はない。多少ニュアンスは変わってしまうが、次のような語順でも言いたいことは大体伝わる。
- У меня́ мно́го де́л.
- У на́с бы́ло две́ маши́ны.
文法的に言えば、Aが生格になる、というのは数量を表す生格の用法である。だから、数詞以外との結合でもAは生格になる。
Е́сть кни́ги и уче́бники, напи́санные и о Ку́рске, и Ку́рском кра́е, но и́х, по сравне́нию с остальны́ми, ─ ка́пля в мо́ре. 「クールスクについても、クールスク州についても、書かれた本や教科書はある。が、それも、他のものに比べると大海の一滴である」
これだといささかわかりづらいかと思うので(まだ学んでいない文法も含まれているので)、次のように書き換えてみよう。
И́х(кни́г и уче́бников) ─ ка́пля в мо́ре. 「それら(本や教科書)は、大海の一滴である」
их が生格になっているのは、この文でその数量が示されているからである。
個数詞が主語の場合の述語の性・数
少しややこしい文法だが、「主語と述語の一致」という問題を確認しておきたい。
- Маши́ны у на́с бы́ло две́. 「うちに車は2台あった」
という例文に違和感を覚えなかったろうか。そう、述語 было の語尾が単数中性になっているのだ。「2台の車」というのは複数である。なのになぜ述語が単数なのか。
実は、これこそロシア語における「主語と述語の一致・不一致」という問題のひとつなのである。
そしてこの問題が、実に厄介である。つまり、様々な条件次第でどうとでもなるのだ。ここでは次のように単純化して理解しておこう(より詳しくは上級レベルになってから)。
- 個数詞が主語の場合、述語は単数中性。
- ただし個数詞と結合する名詞が人間を表す場合は、複数も可。
ということで、いくつか例文を挙げてみる。
- У меня́ бы́ло мно́го де́л. 「わたしにはたくさんの仕事があった」
- В то́ вре́мя Ми́ше бу́дет пя́ть. 「その時にはミーシャは5歳(になっている)だろう」
- Ку́рицы в саду́ бы́ло две́. 「庭にはニワトリが2羽いた」「庭にいたニワトリは2羽だった」
- На у́лице стоя́ло ше́сть маши́н. 「通りには6台の車が停まっていた」
- Во́семь студе́нтов получи́ли пре́мию. 「8人の学生が賞をもらった」
- В кабине́те бы́ло во́семь студе́нтов. 「教官室には8人の学生がいた」
- Вре́мени у меня́ оста́лось ма́ло. 「ぼくに残された時間はわずかだ(った)」
- Люде́й прие́хало ма́ло. 「やって来たのはほんのわずかな人だけだった」
#160 主語が個数詞の場合、述語は単数中性。
レベル的には中級以上だが、たとえば最後の例文を考えてみる。
Лю́ди прие́хали. 「人々はやって来た」
を基本として、その「人々」がどのくらいの人数だったかを不定数詞で説明する。
Ма́ло люде́й прие́хало. 「ほんのわずかな人しか来なかった」
文法上主語が люди ではなく мало になったので、動詞を単数中性形に修正するわけである。ここから、語順の原則に従い、もっとも言いたい単語 мало を文末に持ってくる。
Люде́й прие́хало ма́ло.
もっとも、このプロセスは実はおかしい。少なくともロシア人はこんなプロセスを経て最後の文に到達しているわけではない。しかしこう考えると、この形の文も文法的に理解しやすいのではないだろうか。
ロシア語では、このように、名詞と、その名詞の数量を示す数詞とが分離している文が頻出する。この語順には慣れよう。
逆に、話す・書く場合には、日本語の感覚でAを主格にしがちである。«数量を示すのは生格» という原則を、しっかり身につけておこう。