ロシア語講座:初級

Г12:格変化(動物名詞)

ここでひとつ、新しい文法概念を覚えなければならない。それが «動物名詞»、«非動物名詞» という対比である。なお、文法用語としてはそれぞれ «活動体名詞»、«不活動体名詞» とも呼ばれる。

 このような用語に惑わされることはない。実はこの区別は日本語にも存在し、われわれ日本人は無意識のうちに動物名詞と非動物名詞を区別しているのである。それは、「いる」と「ある」の区別である。
 日本語では、「存在する」と言う場合、主語によって「いる」と「ある」のふたつを使い分けている。これこそが動物名詞と非動物名詞の区別である。「いる」を使う名詞が動物名詞、「ある」を使う名詞が非動物名詞なのである。

 ここで、先に格変化を確認した単語がすべて非動物名詞であることに気づいただろうか。問題、規則、学校、答え、雑誌、チケット、コップ、飛行機、劇場、大皿、感情、文字、部屋、車、絵、問題、力。これらを日本語で「〜がいる」と言う人はあるまい。すべて「〜がある」である。
 日本語では、動物名詞と非動物名詞の区別は「いる/ある」という動詞に表れる。ロシア語では、対格の語尾に表れるのである。

#64 日本語で「いる」を使う名詞が動物名詞、「ある」を使う名詞が非動物名詞。

#65 ロシア語では動物名詞と非動物名詞の区別は、対格の語尾に(のみ)表れる。

 具体例を見てみよう。
 「大学生」という名詞がある。日本語で、「大学生がある」とは言わない。「大学生がいる」である。ゆえに「大学生」は動物名詞である。この場合、対格は生格と等しくなる。

студент 「大学生」
単数複数
主格студе́нтстуде́нты
生格студе́нтастуде́нтов
与格студе́нтустуде́нтам
対格студе́нтастуде́нтов
造格студе́нтомстуде́нтами
前置格студе́нтестуде́нтах

このようになる。
 非動物名詞では、対格の語尾は主格と同じであった。しかし動物名詞では、生格と等しくなる。これは男性名詞だが、女性名詞ではどうなるだろうか。

женщина 「女」
単数複数
主格же́нщинаже́нщины
生格же́нщиныже́нщин
与格же́нщинеже́нщинам
対格же́нщинуже́нщин
造格же́нщинойже́нщинами
前置格же́нщинеже́нщинах
мужчина 「男」
単数複数
主格мужчи́намужчи́ны
生格мужчи́нымужчи́н
与格мужчи́немужчи́нам
対格мужчи́нумужчи́н
造格мужчи́ноймужчи́нами
前置格мужчи́немужчи́нах
рыба 「魚」
単数複数
主格ры́бары́бы
生格ры́быры́б
与格ры́беры́бам
対格ры́буры́б
造格ры́бойры́бами
前置格ры́беры́бах

мужчина の -жч- というスペルは、ч が無声子音だから直前の有声子音 ж も無声化して ш という発音になる。そうすると、шч (厳密には /ш'ч/)という発音は щ であるから(厳密にはそのペテルブルグ方言)、結果として мужчина という単語は /мущина/ と発音される。

女性名詞の単数対格は、もともと独自の語尾をとっていた。だから動物名詞でも、同じく、きちんと独自の語尾をとる。これに対して複数対格で、生格と等しくなる。
 なお、мужчина は男性名詞だが、語尾変化の形式は女性名詞と同じになる。これは語尾が -а で終わっているからだ。

 動物名詞とは動物を表すから、基本的に ♂ と ♀ の区別がある。ゆえに、動物名詞は基本的に男性名詞か女性名詞であり、中性名詞はない(まったくないわけではない)。

 では、これに基づいて、先に挙げた語尾一覧を次のようにつくり変えてみよう。

男性中性女性
単数主格-
生格
与格
対格
造格-ом-ой
前置格
複数主格
生格-ов-
与格-ам
対格
造格-ами
前置格-ах

つまりこの表の ★ というマークは、「動物名詞は生格に、非動物名詞は主格に等しい」という印である。
 この表がすべての基本である。ゆえにこの表を完璧に覚え、身につけなければ、ロシア語学習は先に進まない。

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最終更新日 20 03 2015

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