ロシア語講座:初級

В06:形容詞の性の区別

さて、ここで話をもとに戻そう。

 これを改めて、名詞の性に応じて分ける。

  1. 形容詞+男性名詞
    • средний студент
    • хороший актёр
    • редкий японец
    • новый журнал
    • старый дом
    • большой словарь
  2. 形容詞+女性名詞
    • средняя студентка
    • хорошая актриса
    • редкая японка
    • интересная книга
    • белая кошка
    • широкая река

もうおわかりだろう。

 日本語の形容詞は、基本的にすべて「〜い」で終わる。「赤い」、「黒い」、「かわいい」、「汚い」、「うるさい」、「高い」、「長い」、「大きい」等々。多くの言語で、形容詞というのは名詞を修飾するという役割を担っているため、語尾に規則性が見られる。ロシア語も同様である。
 ロシア語の場合、それだけでなく、修飾する名詞の性に応じて語尾を変える。もっともこれまた、ヨーロッパの言語はどれもそうである(少なくとも、もともとはそうだった)。
 あいさつの言葉を思い出してみよう。「おはよう」はロシア語で «Доброе утро.» である。これに対して「こんにちは」は «Добрый день.»、「こんばんは」は «Добрый вечер.» となった。なぜ「おはよう」で Доброе、「こんにちは」と「こんばんは」で Добрый なのか、もうおわかりだろう。утро という名詞が中性名詞なので、形容詞も Доброе という中性名詞を修飾する形に、день と вечер が男性名詞なので、形容詞も Добрый という男性名詞を修飾する形になっているのである。

#6 形容詞は修飾する名詞の性に応じて語尾変化する。

 次の一覧表をしっかり覚えよう。

力点あり力点なし
硬変化軟変化
男性名詞を修飾する場合-ой-ый-ий
女性名詞を修飾する場合-ая-яя
中性名詞を修飾する場合-ое-ее

 ロシア語の語尾変化には、«硬変化» と «軟変化» とがある。上の表のように、これは対応している。
 また、変化語尾にアクセントがある場合、必ず硬変化になる。逆に言うと、変化語尾にアクセントが置かれるのは硬変化だけである。

 以下、具体的な形容詞を挙げてみる(語尾は男性形)。

 ということで、上で挙げた形容詞と、名詞とを組み合わせてみよう。アトランダムでいく(と言っても、意味的に組み合わせられない場合は除く)。

確認しておくが、「若いライオン」と言いたい場合、ロシア語のライオンは ле́в、すなわち男性名詞だから、これを修飾する形容詞は男性形にならなければならない。すなわち、молодо́й である。しかしもし「若いイヌ」と言いたい場合には、ロシア語のイヌは соба́ка、すなわち女性名詞であるから、молода́я でなければならない。このように、名詞ごとに、それを修飾する形容詞の語尾は絶対的に決まっている。

余談だが、ロシア語のライオンは、「♂ ♀ の区別があり、総称としては ♂ を表す名詞を使う。♀ を表す名詞を使うのはまれ」というカテゴリに属する。♀ ライオンを表す льви́ца という名詞もあるが、特に ♀ であることを強調したい場合を除き、あまり使われない。
 一方、ロシア語のイヌは、「♂ ♀ の区別があり、総称としては ♀ を表す名詞を使う。♂ を表す名詞も頻繁に使われる」というカテゴリに属する。♂ イヌを表す пёс は、特に ♂ であることを強調する意図がなくとも、実際に ♂ を表す場合には頻繁に用いられる。とはいえ、♂ と ♀ との区別を意識しない場合には соба́ка が用いられる。たとえば、「うちにはイヌがいる」と言う場合に実際には ♂ であっても соба́ка を用いることが多い。少なくとも「おたくにはイヌがいますか?」という場合は間違いなく ♂ ♀ に関係なく соба́ка を用いる。

正書法による «揺らぎ»

 正書法に基づき、硬変化と軟変化とが入り乱れることがある。と言うより、硬変化に一部だけ軟変化が紛れ込む。次のふたつのタイプに分けられる。

  1. г,к,х
    • бли́зкий 近い、вели́кий 偉大な、высо́кий 高い、глубо́кий 深い、гро́мкий 大声の、далёкий 遠い、до́лгий 長い、жа́ркий 熱い・暑い、коро́ткий 短い、кре́пкий 堅い、лёгкий 軽い、ма́ленький 小さい、мя́гкий 柔らかい、ни́зкий 低い、ре́дкий 稀な、сла́дкий 甘い、ти́хий 静かな、то́нкий 薄い、у́зкий 狭い、широ́кий 広い
    • азиа́тский アジアの、европе́йский ヨーロッパの、истори́ческий 歴史的な、косми́ческий 宇宙の、росси́йский ロシアの(国家)、ру́сский ロシアの(文化・民族・言語)/ロシア人、студе́нческий 学生の、япо́нский 日本の
  2. ж,ч,ш,щ
    • хоро́ший 良い

それぞれどう変化するかと言うと、

男性女性中性
硬変化вели́кийвели́каявели́кое
хоро́шийхоро́шаяхоро́шее

 すなわち、

という規則が適用されるのである。

 ちなみに、г,к,х ないし ж,ч,ш,щ であっても、アクセントがある場合は、дорогой や большой のように、すべて硬変化。正書法は無関係である。

男性女性中性
硬変化дорого́йдорога́ядорого́е
большо́йбольша́ябольшо́е

 厳密なことを言えば、г,к,х および ж,ш が硬変化、ч,щ は軟変化なのだが、そのような区別はこの際覚える意味がない。正書法の規則をしっかり把握していれば、「硬変化と軟変化が入り乱れる」ように見えるこの現象も、何の問題もなく理解できるはずである。

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最終更新日 28 02 2015

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