歴史
前史
1894年にパリで国際オリンピック委員会(IOC)が結成された時、その14人のメンバーの中にアレクセイ・ブトフスキー将軍というロシア人がいた。かれはオリンピックの開催にも尽力したが、ロシア帝国政府は無関心だった。1896年、第1回アテネ大会が開催されたが、オデッサの選手たち数人がギリシャに向かったものの、資金不足でイスタンブールから引き返している。キエフ出身のニコライ・リッテルがただひとりアテネに何とか到着し、レスリングと射撃にエントリーしたらしいが、やはり資金不足のため不参加に終わっている。
同様の事態が1900年の第2回パリ大会でも繰り返されている。IOCの公式記録によれば、馬術にふたり、射撃にひとり、それぞれエントリーしたことになっている。しかし実際には3人ともに参加していないようだ。
1904年の第3回セントルイス大会には、エントリーすらしていない。もっとも、大西洋の向こう側で開催されたこの大会には、ヨーロッパの多くの国が不参加だった。
1908年、第4回ロンドン大会で、ロシアは初めて本格的に参加を果たす。
ソ連
1917年の十月革命を受けて誕生したソ連は、国際社会から村八分にされていた。西側の中で最も早くソ連を承認したのがイギリスで1924年。アメリカにいたっては1933年である。このため第一次世界大戦から第二次世界大戦までの戦間期には、オリンピックにソ連を招待しようという動きもほとんど起こらなかった。ソ連の方もNOC(国別のオリンピック委員会)を創設してオリンピックに参加しようとはしなかった(オリンピックへの参加は国単位ではなくNOC単位)。
世界選手権の類にソ連が初めて参加したのは、1946年にパリで開催された重量挙げの世界選手権。同年オスローの陸上のヨーロッパ選手権にも参加している。当時はまだソ連は各種スポーツ協会・連盟のメンバーではなかったが、国際スポーツ界もソ連を無視できなくなったものだろう。ソ連の側もこの後相次いで各種スポーツ協会・連盟に加盟している。1949年、第1回バレーボール世界選手権が開催され、ソ連が初代チャンピオンとなった。すでに1948年には、サンモリッツとロンドンのオリンピックにソ連政府が視察団を派遣している。ソ連の側もオリンピックを含む国際スポーツ界に自らかかわるようになっていった。
1950年、ヘルシンキ・オリンピックの組織委員会がソ連政府に正式に参加を要請。これを受けて1951年、ソ連オリンピック委員会が組織され、こうして1952年、第15回ヘルシンキ大会にソ連は初めて参加することになった。
ソ連崩壊
1991年、ソ連が崩壊し、15の国々が «新たな独立国» となった。これに先立ち15の国々は独自のNOCを創設した。しかしIOCはすでに、1992年夏のバルセロナ大会が終了するまで新たなNOCを認めない方針を打ち出していたため、15の国は独自にオリンピックに参加する道が閉ざされていた(ただしバルト3国は戦間期に独立国としてオリンピックに参加しており、IOCはバルト3国がソ連に併合された後もそれぞれのNOCの消滅・脱退を公式には認めていなかったので、その «復活» として例外的に新規参加を認めた)。結局IOCは、バルト3国を除く12の «旧ソ連諸国» を単一の «合同チーム» として参加させることにした。合同チームのフランス語 Équipe unifiée からEUNと呼ばれた。
バルセロナ大会後、各国のNOCはそれぞれIOCに加盟し、よって1994年のリレハンメル大会からは12ヶ国はそれぞれ独立して参加している。
メダルの «国籍»
孫基禎の金メダルが日本の金メダルとしてカウントされているように、所属するNOCによってメダルの «国籍» は判断される。
しかしロシア・ソ連のように、NOCそのものが存在しなくなってしまったような場合はどうするのだろうか?
とりあえずここでは便宜上、以下のものはロシアのメダルとしてカウントすることにした。
- 1952年から1988年までにソ連が獲得したすべてのメダル。
- 1992年にEUNが獲得したもののうち、
- 個人種目では、ロシアのNOCに所属する選手の獲得したメダル。
- 団体・チーム・ペア・ダブルス等の種目では、ロシアのNOCに所属する選手が参加して獲得したメダル。
詳細
通算メダル総数
以下の情報は上記基準に従って筆者が独自に集計したもの(2008年現在)。IOC等の公式記録とは無関係である。計算違いはご容赦。
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 644 | 524 | 512 | 1680 |
夏季 | 526 | 438 | 425 | 1389 |
冬季 | 118 | 86 | 87 | 291 |
参考までに他国がどれだけメダルを取っているか挙げてみよう(2008年現在)。スウェーデン以下は必ずしもメダル数上位とは限らない。
ちなみに以下の数字はWikipediaに基く(ドイツのみは筆者が勝手に合計した)。
アメリカ
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 1008 | 810 | 696 | 2514 |
夏季 | 930 | 730 | 638 | 2298 |
冬季 | 78 | 80 | 58 | 216 |
ドイツ
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 518 | 529 | 541 | 1588 |
夏季 | 400 | 413 | 447 | 1260 |
冬季 | 118 | 116 | 94 | 328 |
イギリス
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 215 | 258 | 263 | 736 |
夏季 | 207 | 255 | 253 | 715 |
冬季 | 8 | 3 | 10 | 21 |
フランス
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 216 | 236 | 267 | 719 |
夏季 | 191 | 212 | 233 | 636 |
冬季 | 25 | 24 | 34 | 83 |
イタリア
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 226 | 189 | 208 | 623 |
夏季 | 191 | 158 | 174 | 523 |
冬季 | 36 | 31 | 34 | 101 |
スウェーデン
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 185 | 191 | 217 | 593 |
夏季 | 142 | 160 | 173 | 475 |
冬季 | 43 | 31 | 44 | 118 |
オーストラリア
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 134 | 137 | 167 | 438 |
夏季 | 131 | 137 | 164 | 432 |
冬季 | 3 | | 3 | 6 |
ノルウェー
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 152 | 146 | 127 | 425 |
夏季 | 54 | 48 | 43 | 145 |
冬季 | 98 | 98 | 84 | 280 |
日本
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 132 | 122 | 138 | 392 |
夏季 | 123 | 112 | 125 | 360 |
冬季 | 9 | 10 | 13 | 32 |
カナダ
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 96 | 132 | 151 | 379 |
夏季 | 58 | 94 | 108 | 260 |
冬季 | 38 | 38 | 43 | 119 |
オーストリア
| 金 | 銀 | 銅 | 計 |
総計 | 69 | 97 | 105 | 271 |
夏季 | 18 | 33 | 35 | 86 |
冬季 | 51 | 64 | 70 | 185 |