フレデリック・フォーサイス『イコン』(1996)は、ロシアにおける帝制復活を本格的に、かつ学問的に正しく、実在の人物の状況や家系にも詳しく触れながら論じた、非常に珍しい小説。フォーサイスは特段好きでもないが、この作品はかなり楽しませてもらった。
作中、ラストでロシア皇帝に選ばれるイギリス王族の名は明示されていないが、ケント公の弟プリンス・マイクル・オヴ・ケントのこと。別にこの小説が刺激になったわけでもなかろうが、実在のプリンス・マイクル本人もロシア皇位の継承に意欲を示しているとかいないとか。
なおニコライ2世と顔立ちがそっくりとか言われているが(小説中だけではなく実際にも)、そうかな? 興味のある方は(肖像権の関係でここには掲載できないので)、「Michael of Kent」辺りでググってもらいたい。
セミョーン・ロマーノフという人物は実在しない。その父とされるキリールもまたしかり。作中で殺される人物でもあるし、また«皇位継承の権利はあるが望んでいない»という人物が必要だったので創作したのだろう。
ちなみに、翻訳でポールとかポーリンとか言っているのは、皇帝パーヴェルのことである。
以下、スタイルシートで家系図を示す。環境次第では(正確に)表示されない。悪しからず。(正確に)表示されない場合はこちらの画像を。
赤枠はツァーリ・皇帝。赤紫枠は女性。水色枠は実在しない(架空の)人物。点線枠は『イコン』では名が記されていない人物。