ロシア用語の基礎知識:ト

『道化師のギャロップ』
個人的に日本で一番有名なロシア音楽だと思っている。タイトルの知名度とは無関係に、この曲を聴いたことのない日本人はおそらくいないだろう。日本人という日本人は、子供の頃に、それどころかお爺さんお婆さんになってからも、運動会で毎年のようにこの曲を聴いている。『天国と地獄』と並ぶ、運動会の定番メロディ。
 作曲はドミートリー・カバレーフスキー。1940年に発表した組曲『道化師』(もともとは劇の付随音楽)の中の第2曲。だから正確には «『道化師』の『ギャロップ』»。ロシアでは特に有名なわけではないので、『道化師のギャロップ』と言っても、このメロディを口ずさんでも、たぶんわかってもらえない(ただしカバレーフスキー個人は有名)。
ドゥーロヴァ ナデージュダ
1783-1866。軍人。ロシア最初の女性士官として知られる。ナポレオンのロシア遠征では騎兵を率いてスモレンスクの戦いに従軍したり、クトゥーゾフの伝令兵を務めたりした。
ドストエフスキー フョードル
1821-81。作家。『罪と罰』(1866)、『カラマーゾフの兄弟』(1879-80)が特に有名。
トーチカ
鉄筋コンクリート製の防御陣地(軍事用語)。もっとも、ロシア語で «トーチカ» と言えば、単純に «点» という意味。ロシア語の «トーチカ» にはトーチカという意味はない。
ドミートリー・ドンスコーイ
1350-89。モスクワ大公(1363-89)。北東ルーシにおけるモスクワ大公の覇権を確立。ドン河畔のクリコーヴォの戦いでタタール軍を破り、ドンスコーイと讃えられた。
ドルゴルーキー公家
ドルゴルーコフとも。ロシアを代表する貴族の家柄。リューリク家の末裔で、もともとの所領はモスクワの南方にあった。無数の分家にわかれ、その多くが帝政ロシアの上層部で活躍している。ドストエーフスキーが『未成年』で、主人公のコンプレクスを助長するためにこの姓を使ったのもむべなるかな。なお、ユーリー・ドルゴルーキーとは無関係。
トルスタヤ ソフィヤ
1844-1919。レフ・トルストーイの妻。日本などではソクラテスの妻クサンティッペ、モーツァルトの妻コンスタンツェと並ぶ «世界三大悪妻» に数えられることも。もっとも、夫が私有財産を棄てるなどと言ったり、社会活動や宗教に没頭して家庭を顧みなかったのだから、夫婦仲がうまく行かなくても当然。夫が世界中から信奉される中、彼女が一方的に悪者にされる風潮が生まれた。
トルストイ アレクセイ
1817-75。詩人。歴史小説『白銀公爵』と歴史劇3部作で有名。ただし短編「ウプィリ」は、いわゆる吸血鬼ものの先駆的作品。
トルストイ アレクセイ
1883-1945。作家。その作品はどちらかと言うと «大衆文学» に分類されるもので、『アエリータ』や『技師ガーリンの双曲線』のようなSF、歴史小説、児童文学を手がけた。
トルストイ レフ
1828-1910。作家。『戦争と平和』(1865-69)、『アンナ・カレーニナ』(1875-77)が特に有名。
トルベツコイ公家
ロシアの代表的な貴族の家柄。リトアニア大公ゲディミナスの末裔。同族のゴリーツィン家などと同じく、帝政ロシアの最上層部で活躍した。
トルベツコイ ニコライ
1890-1938。言語学者。革命後に亡命。プラハで教えたことはないが、プラハ学派の中心人物。音韻論を確立した。
トレチャコフ パーヴェル
1832-98。実業家。と言うより、美術蒐集家として有名。若くよりロシア絵画の蒐集に熱をあげ、それにより «移動展派» を中心とした画家たちを支援した。さらに私邸を改築して1881年には一般に公開した。これがロシア絵画屈指の美術館であるトレティヤコーフ美術館である。
トロイカ
日本では三頭立て馬車がイメージされるが、三頭立ての橇もトロイカと言う。と言うより、ロシアでは橇の方が一般的。雪深いロシアでは車より橇の方が使いやすい。
 もともと馬車(橇も)は、一頭立てを別とすれば、二頭立て、四頭立て、六頭立てと、偶数から成るのが一般的。このため三頭立てという珍しい馬車(橇)のことを世界的にトロイカとロシア語で呼ぶようになったのだろう。
 なお、ロシア語で «トロイカ» とは «3» のことで、別に三頭立て橇(馬車)に限らない。トランプの3、三つ揃いの服、何かの3人組などもトロイカと呼ぶ。ロシア語で三頭立て馬車(橇)を言う時には «馬のトロイカ» と言う。
 日本では「雪の白樺並木……」が有名だが、あの歌詞は翻訳した劇団カチューシャが勘違いしたもの。実際には、恋人と引き裂かれた御者の嘆きを歌う物悲しい歌である。ちなみにこの歌のトロイカは橇ではなく馬車(郵便馬車)。

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最終更新日 17 02 2013

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