ロシアの教育

識字率

 1897年の国勢調査によれば、ロシア帝国臣民の識字率は21.1%。2002年の国勢調査によれば、ロシア連邦国民の識字率は99.4%。すでに1926年の国勢調査の段階で49歳以下のソ連国民の識字率は56.6%に跳ね上がっており、ソ連時代の教育制度は、さまざまな問題点を抱えていたとはいえ、教育の普及に大きな成果をあげたと言える。

学校制度

 ロシアには «飛び級» の制度はない。

 ソ連時代には、すべての教育機関は公立であった。私立が登場したのはソ連崩壊後。

 ロシアにおける学校制度を簡単に図式化すると、以下のようになる。

年齢学校
-6デーツキイ・サード
6-17シュコーラ
17-21ヴーズ

デーツキイ・サード

 デーツキイ・サード детский сад (detskiy sad) とは幼稚園・保育園のこと。学校ではないが、ついでに。

 ソ連時代には、企業や工場に付属していた。企業や工場は国営であるから、つまりはデーツキイ・サードも国営であった。ところがソ連崩壊後に企業や工場は民営化され、それに伴いデーツキイ・サードも多くが閉鎖に追い込まれている。ソ連時代に比べて施設数・園児数ともにほぼ半減した。
 現在、該当年齢の人口に占める園児数の割合は、60%程度である。これでも、少子化の影響もあって一時期に比べれば回復している。

 日本以上に働く女性の多いロシアでは、必然的に共働きも多い。また離婚率も高く、母親だけ(あるいは父親だけ)の母子家庭・父子家庭も少なくない。しかし «待機児童» の問題は深刻化してはない。

 なお、デーツキイ・サードの中には、次のシュコーラとあわせて3歳から10歳までの一貫教育を行うものもある。

シュコーラ

 シュコーラ школа (shkola) とは英語のスクールのことだが、ロシア語では初等・中等教育機関である。日本の小学校・中学校・高等学校に相当すると言える。
 かつては就学年齢は7歳。このため終了年齢も18歳だった。
 シュコーラに通う生徒を «シュコーリニク» と呼ぶ。たとえば『カラマーゾフの兄弟』などでは «中学生» と訳されたりしているが、厳密には、«シュコーリニク» というロシア語だけから小学生か中学生か高校生か区別することは不可能である。

 ロシアでは古くから初等・中等教育は11年制であった。これをさらに細かく分割すると、4−5−2制になる。
 最初の4年間(6歳から10歳)は言わば初等教育の時期である。特に田舎などには、この4年間だけのシュコーラも存在する。また上述のように、デーツキイ・サードとこの4年間を組み合わせて一貫教育を行う学校もある。
 次の5年間(10歳から15歳)は言わば中等教育(の基礎)の時期である。この5年間だけのシュコーラも存在するし、最初の4年間とあわせて9年間だけのシュコーラも存在する。またこの時期を終えたら、残る2年間をやらずに専門学校などに進学していく子もいる。
 最後の2年間(15歳から17歳)は言わば中等教育の後半である。この2年間を終えて義務教育が終了する。ただし、上述のように、この2年間はシュコーラをやめて専門学校などで学ぶ者もいる。

 国際的な12年制への移行も長年主張されているが、いまだに国家制度としては実現していない。

 日本と同じく、古いシュコーラは番号で呼ばれている。しかしソ連崩壊後、特に私立を中心に、番号以外の固有名詞などを冠したシュコーラが増加している。

 リツェイおよびギムナージヤと呼ばれる学校もあるが、どちらも言わばシュコーラの亜種である。リツェイはフランス語のリセが由来で、主に工学・技術系を中心とした自然科学教育に特化した学校である。ギムナージヤはラテン語のギムナシウム(ドイツ語のギムナージウム)の訳で、こちらは人文系をメインとしている。多くが10歳から。
 しかしこれらに限らず、特にソ連崩壊後に誕生した私立のシュコーラでは、たとえば英語など、何らかの専門分野に特化しているものが多い。

 なお、ロシアではソ連時代以来 «民族言語» の教育、«民族言語» による教育を重視しており(時期により多少の変遷はあるが)、こんにちでも多くの少数民族言語が独自のシュコーラを有している。

専門学校

 いわゆる専門学校ないし職業学校には、テフニクムと呼ばれるものが多いが、ほかにもウチーリシチェと呼ばれるものもあり、リツェイを名乗るものもある。
 一般に9年制卒業生(15歳)と11年制卒業生(17歳)とを対象としたふたつのコースを設けているが、卒業年齢は18歳のものが多い(19歳のものもある)。
 一般的に、ウチーリシチェと呼ばれるものは修理工、溶接工などの養成を行い、テフニクムではもう少し高度な技術者の養成を行う(このためウチーリシチェを卒業してテフニクムに入学する例も少なくない)。なお、シュコーラの教員(特に低学年向け)の養成を行うテフニクムもある。

ヴーズ

 ヴーズ вуз (vuz) とはロシア語の «高等教育機関» の略。いわゆる大学・大学院である。しかしロシア語では、«高等教育機関» に使われる言葉がウニヴェルシテート(英語のユニヴァーシティ)のほかに、アカデーミヤ(英語のアカデミー)、インスティトゥート(英語のインスティテュート)など複数ある。英語を気取ってコレッジを名乗るものもある。
 言葉のそもそもの意味から言えば、ウニヴェルシテートが総合大学であり、インスティトゥートが単科大学、アカデーミヤは専門学校である。しかし東京外国語大学がユニヴァーシティを名乗っているように、ロシアでもウニヴェルシテートを名乗る単科大学は多い。少なくともわたしには、この3つの区別はつけられない。

 かつてはヴーズは5年制であり、11年制の初等・中等教育とあわせて、ヴーズ卒業時点では16年制となり、国際的な基準とも合致していた。しかし現在、多くのヴーズは4−2制(大学4年、大学院修士課程2年)に移行しており、国際的な基準より1年少ないことになる。

 ヴーズへの進学については、統一国家試験が導入されている。これは中等教育卒業資格試験であると同時に、大学入学試験でもある。科目はロシア語、数学、そして選択科目の3つである。もっとも、モスクワ大学などはこれとは別に独自の入学試験も実施する。

学歴

 2002年の国勢調査によると、中等教育以上の教育を受けた人の割合で見ると、女性の方が男性より高い。高等教育で見てみると、50歳以上では男性の方が、49歳以下では女性の方が高い。つまり、単純に言って、大学生は男より女の方が多いということである。
 これを下記、表にしてみる。

全体男性女性都市部農村部ほか
初等教育未修了0.99 %0.51 %1.39 %0.57 %2.20 %
初等教育のみ20.38 %21.85 %19.14 %16.83 %30.62 %
高等教育19.06 %18.65 %19.40 %22.61 %8.78 %

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最終更新日 10 07 2011

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